第5節 インド
2016年11月、インドのモディ首相は日本を訪問し、安倍総理と会談した。安倍総理は、「「日印新時代」を大きく飛躍させる大変素晴らしい会談になった、「自由で開かれたインド・太平洋戦略」と「アクト・イースト」の連携により、インド太平洋地域の繁栄と安定を主導したい」と述べ、モディ首相からも、「日印のグローバル・パートナーは順調に進展し、その成果がでていることをうれしく思う」と述べるなど、日本とインドとの親善関係を一段と深める首脳会談となった。
当該首脳会談においては、日印原子力協定の署名のほか、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道について、2018年に工事を始め、2023年の開業を目指すことで合意した。また、インドの製造業基盤の底上げを図るための日本式ものづくり学校の設立、「日印投資促進パートナーシップ」の下、5年間でインドに対する3.5兆円の官民投融資を実現するための取組の着実な進展、「日本工業団地(JITs)」向けの特別インセンティブ・パッケージに向けた議論の進展、日印エネルギー対話の際に打ち上げられた「日印エネルギー・パートナーシップ・イニシアティブ」及び仕向地条項の撤廃を含めた透明かつ多様な液化天然ガス(LNG)市場の構築の推進、環境に配慮した高効率エネルギー技術分野での官民協力の進捗、ハイブリット自動車等エコカーの普及に向けた協力、包括的で質の高い互恵的な東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定の妥結に向けた協力を確認した。
首脳会談の翌日、モディ首相は世耕経済産業大臣と会談を実施した。ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道計画における人材育成や技術移転等について引き続き協力することを確認し、10年間で3万人の製造業人材を育成すべく日本式ものづくり学校(JIM)設立に係るMOC(協力覚書)の署名を行なった。また、日本とインドの連携の下、アジアとアフリカの連結性を高める「アジア・アフリカ大動脈構想」の推進についても議論した。
2017年1月、世耕経済産業大臣はインドを訪問し、モディ首相、シタラマン商工大臣、ルパニ・グジャラート州首相等のインド政府要人と会談を実施するとともに、世界のトップビジネスリーダーが集結する投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート2017」に参加した(第Ⅲ-3-5-1図)。この訪問において、5年間で投資金額や進出企業数を倍増させるとした2014年の首脳合意の実現に向け、日本式ものづくり学校(JIM)3万人プロジェクトへの支援要請、ものづくり大使の任命、中小企業の進出を促すためのプラグ&プレイ型の貸工場へのJBICの出資決定及びこれに関連し、ルパニ州首相立ち会いの下、JBIC、豊田通商、豊田通商インディア、GIMD(グジャラート州工業庁)、GIDC(グジャラート州産業開発公社)によるMOU(覚書)締結式の実施を行った。
あわせて、Make in Indiaや高速鉄道など、モディ政権の主要アジェンダに貢献する日本企業25社のトップが同行し、各閣僚と世耕経済産業大臣との会談への同席、別途行われた各閣僚との意見交換会へ参加することで、日本企業のプレゼンスを示しつつ、インドにおけるビジネス環境整備を各要人に働きかけ、課題解決に向け前進させた。さらに、世耕経済産業大臣より、投資規模にかかわらず、中小企業を含む「日本工業団地(JITs)」へ特別インセンティブ・パッケージを付与するよう要請を行った。また、RCEPをASEANが主導し、幅広く質の高い協定にするため、日印で協力を強化していくことや、「アジア・アフリカ大動脈構想」を具体化していくことを提案し、モディ首相から賛同を得た。
第Ⅲ-3-5-1図 バイブラント・グジャラート2017でのモディ首相と世耕経済産業大臣の会談