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- 第3部 第2章 第1節 中国
第2章 新興国戦略
第1節 中国
〈今後の方針〉
中国はGDP世界第2位の経済大国であり、日本と緊密な経済関係を有する重要な隣国である。日中関係は、2017年に日中国交正常化45周年、2018年に日中平和友好条約締結40周年という節目の年を迎えており、特に2017年11月にベトナム、フィリピンで相次いで行われた日中首脳会談を契機に、日中経済交流の機運が高まってきている。
本年の施政方針演説等において、安倍総理は、早期の日中韓サミット開催による李克強総理の日本への招待、安倍総理自身の訪中、習近平国家主席の日本訪問に言及し、ハイレベルな往来を深めることで、日中関係を新たな段階へと押し上げ行く方針を示している。こうした方針に基づき、今後、政府間、官民による日中経済界交流や民間企業間のビジネス協力の後押し等を通じて、日中経済関係のさらなる強化を目指していく。
〈進捗状況〉
2017年5月14日から15日にかけて、「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムが中国・北京で開催され、松村経済産業副大臣他が参加した。14日午後には、6つのテーマ別分科会(①政策コミュニケーション、②インフラ連結性、③貿易円滑化、④資金融通、⑤民心交流、⑥シンクタンク交流)が同時開催された。
2017年11月にベトナム・ダナンで開かれたAPEC首脳会議においては、安倍総理大臣と習近平国家主席の間で日中首脳会談が行われ、日中双方は以下の点について一致した。
①経済関係の発展が両国の最も重要な基盤の一つであり、金融、食品貿易、環境・省エネ、観光、少子高齢化などの幅広い協力を進めていくこと、及び両国の経済界の交流を後押ししていくこと、
②ルールに基づく自由で開かれたwin-winの関係を築くため協力していくことが重要であり、民間企業間のビジネスを促進し、第三国でも日中のビジネスを展開していくことが、両国のみならず対象国の発展にとっても有益であること、
③「一帯一路」を含め、日中両国が地域や世界の安定と繁栄にどのように貢献していくか共に議論していくこと。
同月、フィリピン・マニラで開かれたASEAN関連首脳会議において、安倍総理大臣は李克強総理とも会談を行い、基本的に同様の内容で一致した。
この首脳会談で安倍総理から言及があった、第43回日中経協合同ミッションが11月20から26日にかけて、実現した。日中経済協会、日本経済団体連合会(経団連)及び日本商工会議所の三団体から構成される代表団(過去最大の約250名)が、北京市及び広東省を訪問した。21日には、李克強総理と非常に良好な雰囲気の中、過去最大となる1時間の会談が行われた。李総理からは、日中関係改善のためには、両国経済界の交流を促進することで、基礎を強固にするという新しい貢献が必要である旨の意向が示された。また訪中団からは、WTOルールの遵守を依頼すると共に、インターネット安全法及び独禁法の運用、資本流出規制、輸出管理法案等に係る懸念と改善を依頼した。
日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)は、経団連が、中国国際経済交流センター(CCIEE)とともに、経済界の交流促進及び共通課題の意見交換の場として、2015年より毎年日中で相互に開催しているもので、2017年12月4日から5日にかけて東京で第3回が開催された。
安倍総理大臣、福田康夫元総理大臣、榊原定征経団連会長、曾培炎CCIEE理事長(元国務院副総理)をはじめ日中両国から約100名が参加し、日中両国の経済情勢や今後の展望のほか、①貿易・投資・金融協力(経済連携を含む)、②成長分野における協力(ヘルスケア、観光、環境)、③インフラ整備(一帯一路を含む)分野について意見交換を実施するとともに、日中経済界の交流を強化し、戦略的互恵関係の継続的な発展に資する取り組みを推進していくことで一致し、共同声明を発表した。
来賓スピーチにおいて安倍総理大臣は、インフラ分野における日中の互恵的な経済関係は二国間貿易にとどまらず、アジアの人々の繁栄にも大きく貢献するものだと指摘し、今回の対話が日中経済界の協力関係において新たなスタートとなることを期待すると述べた。
また、世耕経済産業大臣は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やWTOなどの通商枠組みにおいて、日中両国で協力してグローバルなビジネス環境の改善を実現していくこと及び日中両国が第三国におけるビジネス協力を具体的に進めていくことが重要との考えを示した。
2017年12月24日には東京で第11回日中省エネルギー・環境総合フォーラムが開催され、日中官民関係者合わせて約860名が参加した。日本側からは、世耕経済産業大臣、平木大作経済産業大臣政務官、中川雅治環境大臣、宗岡正二日中経済協会会長他が出席し、中国側からは、張勇国家発展改革委員会副主任、高燕商務部副部長他が出席した。午前中に行われた全体会議では、世耕経済産業大臣があいさつを行い、前回のフォーラムからの取組状況、2017年11月に行われた日中首脳会談を受けて、日中企業の第三国市場協力を後押ししていくこと等について述べた。午後に6つの分科会が開かれたが、特に第11回では「第三国市場展開分科会」が新設され、これまでの第三国における日中協力案件を紹介の上、更なる協力に向けた、日中両国の政府・民間企業間で数多くの具体的かつ前向きな議論がなされた。また協力プロジェクト文書交換式が行われ、新規23件の日中間の協力プロジェクトについて合意文書の交換があり、第1回からの累計で336件に達した。
2018年4月16日には第4回日中ハイレベル経済対話が東京で開催された。2010年以来約8年ぶりの開催となり、日本側からは河野太郎外務大臣、世耕弘成経済産業大臣他が参加し、中国側からは王毅国務委員兼外交部長、鍾山商務部長他が出席し、マクロ経済政策、日中間の経済分野における協力と交流、第三国における日中協力、東アジアにおける経済連携及び地球規模課題への対応等について議論した。
経済産業省の関係では、以下の点において主な成果があった。
①第三国での日中のビジネス協力について、意思疎通を維持し、官民の関係者による議論の場及び具体的な進め方、協力案件を検討することを確認
②サービス産業協力の枠組みとして、「日中サービス協力メカニズム」の構築、高齢化分野でのシンポジウムの開催を提案し、協力の方向性について確認
③過剰生産能力、補助金の在り方、外資開放、知財権保護、サイバーセキュリティ、輸出管理等を巡る公平な競争条件の確保、公正かつ自由で開かれたビジネス環境の整備の必要性について伝達
なお、4月15日には世耕経済産業大臣が、日中ハイレベル経済対話に合わせて来日した鍾山商務部長及び張勇国家発展改革委員会副主任とそれぞれ会談を行った。
2018年5月9日に第7回日中韓サミットが東京で開催された。この機会を活かして、安倍総理大臣と李克強総理の間で会談が行われた。両首脳は4月に行われた日中ハイレベル経済対話の議論も踏まえ、経済産業省関連では主に以下の点について一致した。
①RCEPや日中韓FTAの交渉についても連携を強化すること
②第三国における日中民間経済協力について、日中ハイレベル経済対話の下、省庁横断・官民合同で議論する新たな「委員会」を設け、具体的な案件を議論していくこと、また、民間企業間の交流の場として「フォーラム」を安倍総理の訪中の際に開催すること
また、安倍総理からは、開放性、透明性、経済性、財政健全性等の国際スタンダードが確保されることを踏まえた上で、個別案件ごとに協力の可能性を検討するとの日本の立場を改めて説明した。
なお、9日午前中に世耕経済産業大臣は、日中韓サミットのために来日した鍾山中華人民共和国商務部部長及び何立峰中華人民共和国国家発展改革委員会主任と会談を行った。
鍾山部長との会談において、サービス産業における日中協力として、「日中サービス貿易協力メカニズム」を構築し、サービス貿易・投資の環境を構築し、サービス分野の投資及び互恵協力を進めていくことに合意した。その後の日中首脳会談において、世耕大臣と鍾山部長との間で「サービス貿易協力強化に関する覚書」に署名した。
何立峰主任との会談において、サービス産業における日中協力として、「日中サービス産業協力メカニズム」を構築し、マクロ的な政策の交流を通じ、高齢化、教育等のサービス産業領域での協力を進めていくことで合意した。その後、日中首脳会談の場で、世耕大臣と何立峰主任との間で「サービス産業協力の発展に関する覚書」に署名した。
また、鍾山部長及び何立峰主任との会談の両方において、第三国市場協力について、第三国での日中ビジネス展開を進めるための官民の関係者による議論の場の具体化に向けた意見交換を行い、その後の日中首脳会談において、世耕大臣及び河野外務大臣と何立峰主任及び鍾山部長との間で「第三国における日中民間経済協力に関する覚書」に署名した(2018年5月9日の日中首脳会談での一致した②の内容)。