第2節 ASEAN・大洋州
〈今後の方針〉
ASEANは、安価な人件費を優位性にした生産拠点、急増する中間層・富裕層が牽引する消費市場といった特徴がある。最近はこれらに加え、ASEAN各国から革新的なスタートアップが生まれ、域内のイノベーションを牽引する動きも見られる。こういったASEANのダイナミズムを取り込み、ASEANのパートナーとして互恵的な関係構築を目指す。
〈進捗状況〉
2017年9月、日ASEAN経済大臣会合がフィリピン・マニラにて開催され、設立50周年を迎えるASEANの更なる経済統合の深化、及び各国の複雑化・多様化する課題の解決に向け、今後の日ASEAN協力として、日本から、(1)日ASEANのイノベーション連携の推進、(2)ASEANの中小企業の包摂的成長への支援、(3)RCEPに関する貿易促進型ルールの導入支援、という三本柱による「包摂的でイノベーション志向の成長に向けた日ASEAN協力」を提案した。また、ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)よりASEANに対し、日系在ASEAN企業約7000社の意見を集約した「要望と提案」の説明が行われた。加えて、日ASEANのイノベーションに関するビジネス間連携を進めるための枠組みである「日ASEANイノベーションネットワーク」における取組みとして、EC利用実態調査及びASEANビジネス・アドバイザリー・カウンシル(ASEAN-BAC)との共同によるイノベーションWG設置について、日ASEAN経済協議会(AJBC)から報告された。
第Ⅲ-2-2-1図 日ASEAN経済大臣会合
2017年11月には、同じくフィリピン・マニラにおいて日ASEAN非公式経済大臣会合が開催され、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定にサービス貿易・投資に係る規程を追加する改正議定書について、閣僚レベルの交渉が終結した。また、同会合では、日本が作成に協力したASEANの中小企業海外展開事例集が配布され、引き続き中小企業分野における日ASEAN協力を進めていくことを確認した。
経済産業省は、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)への支援を通じて、ASEAN及び東アジアの経済統合を支援している。2017年には、ERIAはASEAN経済大臣会合からの依頼を受けASEAN域内の貿易円滑化政策を評価するASTFI(ASEAN Seamless Trade Facilitation Indicators)の作成を進めたほか、OECDと共同で、ASEANの中小企業政策指標の見直しを行った。また、ASEANが設立50周年を迎えたことを記念し、議長国のフィリピン政府と共同で、ASEANのこれまでの50年の歩みを振り返る記念出版物を発行した。ERIAは、RCEP交渉においても、豪州政府と共同で首席交渉官会合メンバーと東アジアの著名な経済学者のダイアログを主催し、首席交渉官会議議長にサポーティングスタッフを派遣するなど、様々な支援を行っており、さらに個別FTAについても、ASEANからの依頼に基づき、ASEAN側の代表機関として、ASEANとカナダのFTAのフィージビリティスタディをカナダ政府と共同で実施するなど、各種のサポートを行っている。今後も、非関税措置データベースの拡充等を通じ、ASEAN及び東アジアのさらなる経済統合の深化に貢献することが期待されている。
タイとは、2017年6月、世耕経済産業大臣とウッタマ工業大臣が、ソムキット副首相の立会いのもと、「東部経済回廊及び産業構造高度化に向けた協力に関する覚書」に署名した。本覚書は、経済産業省とタイ工業省との間で、東部経済回廊(EEC)を中心としたタイ産業の高度化に向けた協力を表明するものとなっている。
2017年9月には、約600名の日本企業ミッションとともに世耕経済産業大臣がタイを訪問し、タイの産業高度化等についてプラユット首相やソムキット副首相、ウッタマ工業大臣との会談を実施し、また、タイの産業高度化をテーマとしたシンポジウム(ジェトロ・タイ政府共催)に出席した際には「Connected Industries」のコンセプトによる産業高度化について講演を実施した。
フィリピンとは、2017年9月、世耕経済産業大臣よりロペス貿易産業大臣に、雇用を創出し、貧困を削減するためのフィリピンの産業発展の方向性について提言をまとめた「フィリピン産業ビジョン策定に向けた日本提案」を手交。同年10月の日比首脳会談における共同声明にも本提案を含む産業協力が位置づけられた。
ベトナムとは、2017年6月、第2回日越産業・貿易・エネルギー協力委員会を開催した。双方は同委員会の下に、自動車作業部会を設置し、ベトナムの自動車及び自動車部品産業の発展のため、アクションプランの策定、裾野産業の人材育成協力に合意した。また、2017年9月には同委員会の合意を基礎に、更に協力を推進していくための「戦略協力パッケージ」に署名した。さらに、2017年11月にこの「戦略協力パッケージ」の一つの成果である「エネルギー分野の協力覚書」に署名し、エネルギー分野の協力について協議する場とすることを目的に同委員会の下に日越エネルギーワーキンググループを設置することで合意した。
ミャンマーとは、外資を中心とした産業集積の形成に寄与する工業団地プロジェクト「ティラワ経済特別区(SEZ)」の開発に官民一体で取り組んでおり、2018年半ばにはZone B(次期開発区域)第一期の開業を予定している。
オーストラリアとは、2018年1月のターンブル首相訪日時に、日豪間における経済面での戦略的な課題に関する対話を深めるため、経済産業大臣と貿易・観光・投資大臣との間での閣僚対話を設立するとともに、イノベーション分野における協力を引き続き実施することで合意した。