経済産業省
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第1章 新たなルールベースの国際通商システムの構築に向けて

第1節 G7/G20

1.G7シャルルボワ・サミット(2018年6月)

2018年のG7においては、議長国カナダより「皆が裨益する経済成長」、「経済成長、将来の仕事」、「平和で安全な世界」、「ジェンダー平等及び女性のエンパワーメント」、「気候変動、クリーンエネルギー」、「海洋」といったテーマが示され、2018年6月に開催されたG7シャルルボワ・サミットでは上記テーマを踏まえつつ、貿易についても議論が行われた。首脳コミュニケにおいて、自由、公正、かつ互恵的な貿易及び投資が、成長や雇用創出の主要な原動力であるとの認識の下、G20ハンブルク・サミットの貿易に関する結論、特に、ルールに基づく国際貿易体制の極めて重要な役割を強調し、引き続き保護主義と闘うことに改めてコミットした。また、二国間、地域間及び複数国間の協定の重要性、WTOの近代化、関税障壁、非関税障壁及び補助金の削減に向けて取り組むことも確認された。

また、公平な競争条件を促進するため、市場指向的ではない政策・慣行及び強制技術移転やサイバーによる窃取等の不適切な知的財産の保護への対処、市場歪曲的な産業補助金及び国有企業による貿易歪曲的な行動などに関する国際ルール強化のための本年の交渉開始、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの取組促進、アルミニウムやハイテク分野等での過剰生産能力の回避、及び輸出信用に関する新たな国際指針の2019年のなるべく早期の策定などの重要性についても一致した。

2.G20デジタル経済大臣会合(2018年8月)

G20の枠組みでは2回目の開催となる「G20デジタル経済大臣会合」として、2018年8月にアルゼンチンのサルタで開催。同会合においては、情報の自由な流通、デジタルガバメントの重要性、デジタル新技術の活用、新興・中小企業のデジタル経済への参画等についての議論が行われ、閣僚宣言及び附属文書が採択されたほか、翌年のG20議長国である日本のイニシアティブに対する歓迎の意が示された。更に、デジタル経済の進展における電子商取引の重要性に鑑み、G20デジタル経済タスクフォースがG20貿易・投資作業部会とともに検討を進めることが慫慂された。我が国からは、デジタル経済におけるデータの自由な流通を含めた適切な競争環境の実現の重要性や、デジタルガバメントを起点とした生産性向上の重要性ついて主張した。また、次回議長国として、人工知能やサイバーセキュリティに関する議論を含め、人々の生活を豊かにするためのデジタル経済・社会のあり方について、更に議論を深めていくことを表明した。

3.G20貿易・投資大臣会合(2018年9月)

2018年9月にアルゼンチンのマルデルプラタにおいて開催されたG20貿易・投資大臣会合においては、「現下の国際貿易をめぐる情勢についてのG20間の対話」「農業・食料品グローバル・バリュー・チェーンの貿易・投資側面」「新産業革命の貿易・投資側面」についての議論が行われた。我が国からは、貿易制限措置の応酬は、世界に複雑に張り巡らされたサプライチェーンに影響を及ぼしつつあること、投資活動にも影響が出つつあることについて、懸念を表明するとともに、ルールに基づく自由貿易体制の維持・発展のためには、WTOが現下の課題に効果的に対処できるようWTO改革に早急に取り組むことが不可欠であり、ルール形成機能の向上、監視メカニズムの強化、紛争解決機能等の改善について、G20として政治的に後押しすべきと主張した。議論の結果、現下の貿易情勢に対応するためのWTO改革の必要性とG20における対話の継続への合意を含む、閣僚声明がとりまとめられた。

4.G20ブエノスアイレス・サミット(2018年12月)

2018年12月に開催されたG20ブエノスアイレス・サミットにおいては、「公正で持続可能な開発のためのコンセンサスの構築」という主要テーマのもと、貿易関係の緊迫化や新興国経済の脆弱性等のリスクに直面する中で、いかにG20の結束を維持し、経済成長を強化していくか等,首脳間で率直な意見交換が行われ、成果文書としてブエノスアイレス首脳宣言が採択された。

首脳宣言においては、「ルールに基づく国際秩序」を改善するために協働することへのコミットに加え、多角的貿易体制が果たしてきた貢献を認識するとともに、WTO改革を支持し、2019年のG20大阪サミットにおいて進捗をレビューすることが合意された。

また、鉄鋼の過剰生産能力問題について、グローバル・フォーラム(GFSEC)における提言及びコミットメント(市場歪曲的な支援措置の除去等)の実施を要請することで一致した。

加えて、情報の自由な流通を支持し、人工知能(AI)等に関する作業を継続することに合意するとともに、インフラを投資対象とし、民間資金動員を促進するための「ロードマップ」に沿った、質の高いインフラに関する2019年の進捗への期待も表明された。

5.G20貿易・デジタル経済大臣会合(2019年6月)

日本が議長国となり、2019年6月に茨城県つくば市において開催されたG20貿易・デジタル経済大臣会合は、G20として初めて、貿易大臣とデジタル経済大臣が一堂に会する会合となった。

貿易分野では、貿易摩擦が激化し、世界貿易を取り巻く情勢が極めて厳しくなる中、貿易摩擦の問題に取り組む必要性をG20全体で確認した。

また、三極貿易大臣会合で議論してきた通報制度改革や通常委員会の活性化といったWTO改革の具体的内容をG20として初めて位置づけるとともに、WTOの紛争解決制度についての行動の必要性にも初めて合意した。

加えて、三極貿易大臣会合で議論してきた産業補助金ルール強化の必要性についてG20で初めて言及すると共に、日本がリードしているWTO電子商取引の有志国によるルール作りについて、G20として初めて盛り込んだ。

また、貿易摩擦の緩和のための措置がWTO整合的であるべきこと及び大半のメンバーが鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの延長に賛成したことが議長声明で明記された。

デジタル分野では、「データ・フリーフロー・ウィズ・トラスト」というコンセプトにG20全体で合意した。データの国際的な流通が経済成長につながること、人々や企業間の信頼がデータの流通を加速すること、信頼につながる各国の法的枠組みは相互に接続可能なものであるべきことを確認した。さらに、政策や規制そのものをデジタル化し、機動的で柔軟なものとしていく必要があること、またステークホルダーが参加して政策をつくること、すなわちガバナンス・イノベーションが必要であることについて確認した。

6.G20大阪サミット(2019年6月)

2019年6月にG20大阪・サミットが開催された。日本が初めて議長国を務めたG20サミットでは,G20メンバー国に加えて,8つの招待国,9つの国際機関の代表が参加し,国内で開催した史上最大規模の首脳会議となった。主要国のリーダーたちが一堂に会する中,今般のサミットでは,互いの共通点を見出し,主要な世界経済の課題に団結して取り組んでいく姿を打ち出した。また,グローバル化による変化への不安や不満の声があがる中で,議長国としてリーダーシップを発揮し,自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処,環境・地球規模課題への貢献等,多くの分野でG20としての力強い意志を「大阪首脳宣言」を通じて世界に発信した。 「大阪首脳宣言」において、貿易分野では、つくばで開かれたG20貿易・デジタル経済大臣会合の閣僚声明を首脳として歓迎し、自由、公正、無差別な貿易及び投資環境を実現し、開かれた市場を維持するため努力をすることで一致した。また、WTO改革については、閣僚会合での合意も踏まえ、WTO第12回閣僚会合(MC12)に向けた取組を含め、必要なWTO改革を支持していくことを確認し、WTOの紛争解決制度の機能に関し、行動が必要であることに合意した。鉄鋼グローバル・フォーラムについては、担当閣僚に対し、フォーラムの取組を更に進めるための方策を探求し、今秋までにコンセンサスに至るよう求めることで一致した。

また、デジタル分野については、プライバシーやデータ保護、知財、セキュリティといった課題に引き続き対処することにより更にデータの自由な流通を促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化。このようなデータ・フリーフロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)によりデジタル経済の好機を活用するとともに、電子商取引に関する共同声明イニシアティブに基づき進行中の議論に留意することで一致した。

デジタル経済に関しては、大阪サミットの機会に首脳特別イベントを主催し、27か国の首脳の参加の下、データ流通、電子商取引に関する国際的なルール作りを行う「大阪トラック」の立ち上げを宣言した「デジタル経済に関する大阪宣言」を発出し、WTOでの有志国による電子商取引に関するルール作りについて、MC12までに実質的な進捗を達成するために更に努力することを表明した。

参考 G20首脳宣言 抜粋(仮訳)

強固な世界経済の成長の醸成
貿易と投資

8.我々は、G20 茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明を歓迎する。我々は、自由、公正、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の開かれた市場を維持するよう努力する。国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び開発の重要なエンジンである。我々は、世界貿易機関(WTO)の機能を改善するため、必要な WTO 改革への支持を再確認する。我々は、第12回 WTO 閣僚会議に向けた取組を含め、他の WTO 加盟国と建設的に取り組んでいく。我々は、WTO 加盟国によって交渉されたルールに整合的な紛争解決制度の機能に関して、行動が必要であることに合意する。さらに、我々は、WTO 協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。我々は、ビジネスを可能とする環境を醸成するため、公平な競争条件を確保するよう取り組む。

過剰生産能力

9.我々は、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)におけるこれまでの進展に留意しつつ、GFSEC メンバーの関係閣僚に対し、2019年の秋までに、フォーラムの取組を更に進めるための方法について、探究し、コンセンサスに至るよう求める。

11.データ、情報、アイデア及び知識の越境流通は、生産性の向上,イノベーションの増大及びより良い持続的開発をもたらす一方で,プライバシー,データ保護,知的財産権及びセキュリティに関する課題を提起する。これらの課題に引き続き対処することにより,我々は,データの自由な流通を更に促進し,消費者及びビジネスの信頼を強化することができる。この点において,国内的及び国際的な法的枠組みの双方が尊重されるべきことが必要である。このようなデータフリーフローウィズトラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は,デジタル経済の機会を活かすものである。 我々は,異なる枠組みの相互運用性を促進するために協力し,開発に果たすデータの役割を確認する。我々はまた,貿易とデジタル経済の接点の重要性を再確認し,電子商取引に関する共同声明イニシアティブの下で進行中の議論に留意し,WTO における電子商取引に関する作業計画の重要性を再確認する。

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