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補論 企業データベースに基づく試算方法
第Ⅱ部第1章第1節(2)③において、製造企業に関する、国内と海外子会社の売上高比率を確認するにあたり、ビューロー・ヴァン・ダイク社(Bureau van Dijk)のORBISを用いた。この企業データベースは、非上場企業の財務データ収録率が低いものの、主要国の企業が広く収録されており、国際比較を行うことが可能である。しかし、財務データの収録率が低いため、何らかの形で補正する必要がある1。
さらに、ORBIS内では、連結財務データしか掲載されていない企業も多い。そのため、企業売上高を集計する際に、連結グループ内企業の売上高の重複を排除する必要がある。
以下では、財務データの収録率の補正、及び、連結財務データの重複の排除を含め、本項で行った試算の方法を説明する。
1 なお、日本の海外子会社の売上高を収録する統計としては、経済産業省の「海外事業活動基本調査」(以後、「海事」)がある。同調査は、時系列で我が国企業の海外現地法人の動向を確認することができる点が特徴であるが、2017年調査における回答率は74%であった。また、調査に対し回答があった企業の中でも、売上高の数値が不明であるケースがあることから、海事で捉えられた海外売上高は、単純に考えれば、実際の海外現地法人売上げ高合計より小さい数値となる。
1.対象企業の抽出
国内製造企業については、当該国に立地する、2015年以降の財務データがある企業のみとした。
次に、それらの直接の海外関係企業(出資比率25%以上)を抽出した(使用する財務データは2015年以降2017年までの直近数値とした)。
2.連結財務データの重複排除を通じた、企業売上高の集計
国内企業と海外企業に分けた上で、ORBIS内で定義される「支配企業」の系列(出資比率25%以上の関係を有する企業系列のうち、最終親会社につながる唯一の系列)の中で、直接の出資関係が全て50%以上である系列については、連結関係にあると仮定し、最終出資先の企業の売上高に、出資元ごとの出資比率を乗じた金額(A)を算出した。
そして、同時に抽出された企業群(国内であれば、製造企業であり、かつ財務データ2015年以降がある企業)の中に、同系列の出資元企業がある場合には、Aを、出資元の売上高から差し引いた。
3.国内企業売上高からの連結海外子会社の売上高排除
2.で算出した国内売上高には、海外にいる連結対象企業の売上高が含まれるが、国内売上高を算出することが目的であるため、これを排除する必要がある。2.と同様に、系列ごとに出資比率50%以上の場合には連結関係にあると仮定し、海外企業の売上高を、国内企業の売上高から差引き、これを、国内売上高とした。
4.最終親会社による区別
2.により算出した海外出資先(出資比率25%以上)の売上高と、3.により算出した国内製造企業の売上高により、海外売上高と国内売上高の比較を行った。
なお、国際比較を行う際には、全て、最終親会社も当該国であることを条件とした。すなわち、「日本」の集計対象企業については、日本に立地し、最終親会社も日本に所在する場合とした(最終親会社の所在国が不明である場合も対象とした)。
5.海外事業活動基本調査による補正
日本企業については、ORBISによる集計に加えて、「海事」を用いて、財務情報収録企業数が少ない地域2に関する調整を通じた推計も行った。
具体的には、米国、中国、東アジア、東南アジア、中央アメリカについては、ORBISでなく「海事」による売上高を使用した(前掲第Ⅱ-1-1-2-27図の「日本②」、「日本推計③」、「日本推計④」)。
そのうち、「日本推計③」は、「ORBIS」の方が「海事」よりも、売上高の数値を有する企業数が多い地域(英国、ドイツ、フランス、その他欧州、ロシア、南アジア、オセアニア、南アメリカ)における、「ORBIS」と「海事」による売上高の平均変動比率(※)で補正した。これらの地域においては、「ORBIS」の売上高の増加分(対「海事」)が、企業数の増加分(対「海事」)を上回っているためである(先に行った連結調整が不十分であることが影響している可能性がある)。
(※) 「日本②」に、変動比率(a÷b)を乗じた。aは「ORBIS」売上高÷「海事」売上高。bは「ORBIS」企業数÷「海事」企業数。
次に、「日本推計④」では、売上高の増加に加えて、「海事」で把握している企業数が、他の地域と同様にさらに増加するとの前提で補正を行った。つまり、「日本推計③」の結果にbを乗じたため、全体としては、日本②にaを乗じた形となる。
2 一部の主要国・地域(英国、ドイツ、フランス、ロシア、中国、香港、米国)については国単位で集計し、その他は基本的にISOの地域区分を使用した(ただし、北ヨーロッパ、東ヨーロッパ、西ヨーロッパは欧州に、また、北アフリカ、南アフリカ、東アフリカ、西アフリカはアフリカにまとめた)。