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第2節 欧州

欧州連合(EU)は、27か国が加盟、人口約5億人、GDPは世界全体の2割近くを占める政治・経済統合体である。EUは、域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場であり、単一通貨のユーロには、19か国が参加している。

2019年5月の欧州議会選挙を経て、2019年12月に、ドイツ出身のフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が、ベルギー出身のミシェル欧州理事会議長がそれぞれ就任し、欧州連合の新体制が発足した。欧州連合の執行機関である欧州委員会は、気候変動政策、デジタル政策への取り組みを強調している。気候変動政策については、排出量取引制度の一層の活用などを通じ、中期及び長期の排出量目標も更に野心的なものへと改める方針である。また、グリーンな経済活動を特定、分類(タクソノミー)し、当該分類に準拠した形での金融機関による融資行動や、企業による経済活動の実施割合の開示を義務づける動きもある。デジタル政策については、デジタル経済の機会の活用とデジタル化にともなうリスクのバランスを取りながら政策を進めるべく、「デジタル時代のヨーロッパ戦略(A Europe fit for the digital age)」を発表した。戦略には、AI、IoT、5Gの促進と標準・規制枠組み、デジタル変革とサイバーの促進、教育とスキルを通じた市民のエンパワーメントが含まれている。

EUと日本は主要な戦略的パートナーである。2019年1月には、日EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠組み(十分性認定)が、2019年2月には日EU経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)が発効した。2019年9月27日には、安倍総理がブリュッセルにおいて開催された「欧州連結性フォーラム」に出席し、「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」と題する文書に署名、日EU協力の一層の深化について確認をした。2020年1月には、米国も交え、第7回三極貿易大臣会合を開催し、産業補助金や強制技術移転などに関する共同声明を発表した。

2020年1月31日、英国はEUを離脱した。英国のEU離脱については、2016年6月の英国の国民投票の結果を受け、翌2017年6月より英EU交渉が開始された。2018年11月に「離脱協定」等が英EU間で合意されるも、英国議会にて否決されたことを受け、メイ首相にかわり新たに就任したジョンソン首相の下、10月に英国はEUと改めて「離脱協定」及び「将来関係に関する政治宣言」について合意に至った。2019年12月に行われた英国議会総選挙の後、英EU双方の議会で離脱協定が承認され、英国のEU離脱に至った。現在発効している離脱協定によれば、2020年末までの「移行期間」中は、英国には引き続きEU法が適用される他、EUが第三国と締結した国際条約に拘束されるが、他方で、EU以外の第三国と、移行期間終了後に発効させる自由貿易協定の交渉・署名・批准が可能である。なお、移行期間は2020年6月末までに1年または2年の延長を決定できるが、英国国内法では延期申請を禁じる規定が存在する。現在、英国とEUとの間で将来の貿易関係にかかわる交渉が行われているが、移行期間終了時に貿易協定が発効され、日系企業の経済活動や世界経済への英国のEU離脱による影響が最小限となることを期待する。

EU離脱後の英国については、日英首脳間で一致しているとおり、日EU・EPAを踏まえ、EU離脱後の英国との新たな経済的パートナーシップの構築に速やかに取り組んでいく。また、経済関係だけでなく、安全保障・防衛、文化等、あらゆる分野における日英関係の強化に引き続き努めていく。

フランスとは、2019年6月26日の日仏首脳会談において、インド太平洋における協力や二国間産業協力、環境分野等での協力について盛り込んだ「『特別なパートナーシップ』の下で両国間に新たな地平を開く日仏協力のロードマップ(2019~2023年)」を発出した。また、エネルギー転換のためのイノベーションに関する協力を含む日仏政府間の協力文書の交換式を執り行った。

EU加盟国のみならず、EUに加盟していない欧州各国とも連携を強めていく必要がある。西バルカン地域(セルビア、コソボ、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、アルバニア)については、2018年1月、南東欧を歴訪した安倍総理より、EU加盟を目指す西バルカン地域各国の経済社会改革を支援し、同地域の各国間の協力を促進させることを目的に「西バルカン協力イニシアティブ」が表明され、西バルカン地域全体への協力を更に推進していく旨言及があった。「西バルカン協力イニシアティブ」の下、具体的施策が進められており、例えば、日本企業の進出サポートを目的に、2019年6月、JETROによるビジネスミッションが北マケドニアに派遣された。

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