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- 第Ⅲ部 第2章 第3節 中国
第3節 中国
中国はGDP世界第2位の経済大国であり、日本と緊密な経済関係を有する重要な隣国である。日中関係は、2017年に日中国交正常化45周年、2018年に日中平和友好条約締結40周年という節目の年を迎え、同年には両国総理の相互往来が行われるなど日中関係は完全に正常な軌道に戻っている。また、2019年6月にはG20大阪サミットにおいて日中首脳会談が開催され、2020年春の桜の咲く頃に習近平国家主席の国賓訪日で一致をした。しかし、2020年1月に中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大すると、3月に日中双方は、現下最大の課題である新型コロナウイルスの感染拡大防止を最優先する必要があり、また、習近平・国家主席の国賓訪日を十分成果が上がるものとするためには、両者でしっかりと準備を行う必要があるとの認識で一致し、国賓訪日は双方の都合のよい時期に行うことで改めて調整していくこととなった。
2020年の施政方針演説等において、安倍総理は、首脳間の往来に加え、あらゆる分野での交流を深め、広げることで、新時代の成熟した日中関係を構築していく方針を示している。こうした方針に基づき、今後、政府間、官民による日中経済交流や民間企業間のビジネス協力の後押し等を通じて、日中経済関係のさらなる強化を目指していく。
2019年4月14日には第5回日中ハイレベル経済対話が北京にて開催された。日本側からは河野外務大臣、世耕経済産業大臣他、中国側からは王毅国務委員兼外交部長、鍾山商務部長他が出席し、マクロ経済政策、二国間経済協力及び交流、日中第三国市場協力、イノベーション協力、地域・世界経済及び地球規模課題への対応等について議論した。
経済産業省の関係では、以下の点において主な成果があった。
①国際ルール・慣行に則った貿易・投資の推進やビジネス環境改善の重要性につき議論を行う中で、強制技術移転、知的財産権保護、データの取扱い、産業補助金等の構造的な問題について日本側の問題意識を伝達。
②第三国市場協力に関し、「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」及び「日中第三国市場協力フォーラム」等の機会を活用し、国際スタンダードに合致し、第三国の利益となる企業間の協力の具体化を引き続き進めていくことを確認。
③第1回日中イノベーション協力対話の開催を歓迎し、マーケット創造につながる標準の整備、スマートシティ・スーパーシティに係る国際連携の在り方や、イノベーション協力の環境整備として重要な知的財産分野での具体的な進展や課題等につき議論を継続していくことを確認。
なお、同4月15日には世耕経済産業大臣と鍾山商務部長との会談において、6月のG20貿易・デジタル経済大臣会合に向けてWTO改革などについて議論し、中国と連携しながら議長国としてリードしていくことについて一致した。また、第三国市場協力について、国際スタンダードに則った具体的案件の創出に向けて日中で連携していくことやRCEPの年内妥結に向けた交渉加速化について確認した。
2019年6月10日には、東京にて世耕経済産業大臣と苗圩工業信息化部長との間で第1回目となる日中産業大臣対話が開催され、以下のやりとりが行われた。
①「第2回自動運転に関する日中官民合同セミナー」を本年秋頃北京において開催することで合意するとともに、国際標準化組織(ISO)の枠組みの下で、自動運転の安全評価の標準化について協力していくことで一致。
②「第3回日中スマート製造セミナー」を年内に開催することに合意。
③産業保安のスマート化(高度化)分野での協力を今後進めていくことで一致。
④超ハイビジョンテレビ分野における政府間交流及び企業間協力の継続について一致。
⑤鉄鋼、半導体、データの取扱い等のビジネス環境改善につき意見交換を実施。
2019年6月27日には大阪で開かれたG20サミットにおいて、安倍総理と習近平国家主席の間で日中首脳会談が行われた。安倍総理から習近平主席に改めて訪日を招請し、原則として2020年春に国賓としての訪日を実現することで一致した。その上で、日中双方は経済分野において、国際スタンダードの下、「競争から協調へ」との精神に則って、第三国市場、イノベーション及び知的財産保護、食品・農産品を含む貿易・投資、金融・証券、医療・介護、省エネ・環境、観光交流等潜在力のある分野における互恵的な実務協力を強化するとともに自由で公正な貿易体制の発展で一致した。さらに、日中経済関係の更なる深化及び中国経済の持続的発展の観点から、知的財産保護の強化、強制技術移転や市場歪曲的な産業補助金等の是正を始めとする、中国市場の開放や公平、公正なビジネス環境の構築のための実効的措置を中国側に要請した。
また、RCEP及び日中韓FTAの交渉を通じて自由で公正な貿易体制の発展に貢献していくことを確認するとともに、WTO改革の進展に向けて働きかけを行った。
2019年12月8日には、東京にて第13回日中省エネルギー・環境総合フォーラムが開催され、両国合わせて800名を超える官民関係者が参加した。日本側からは梶山経済産業大臣、小泉環境大臣、宗岡日中経済協会会長他、中国側からは、張勇国家発展改革委員会副主任、李成鋼商務部部長助理他が出席した。午前中に行われた全体会合では梶山経済産業大臣があいさつを行い、地球規模課題である水素の利活用拡大や海洋プラスチックごみ対策等に関する協力の推進について述べた。午後には6つの分科会が開かれ、日中双方の実務者レベルの意見交換を行った。また、今回のフォーラムでは新規26件の日中間の協力プロジェクトについて合意文書が交換され、第1回からの累計は388件に達した。
2019年12月22日には、北京にて日中韓経済貿易大臣会合が開催され、日本からは梶山経済産業大臣、中国からは鍾山商務部部長、韓国からは成允模産業通商資源部長官が出席し、RCEP、日中韓FTA、三国間協力(デジタル経済等)などについて議論を行い、共同声明を採択した。RCEPについては、インドの重要課題の解決のために16カ国で取り組むことが重要である旨を梶山大臣から強調し、今年11月のRCEP首脳会合における共同声明に基づき、より一層の努力をすることで一致した。日中韓FTAについては、そのようなRCEPを土台にしながら独自の価値を有する、包括的で、質の高い互恵的な協定を実現するために協力していくことを確認した。さらに、デジタル経済に関する国際ルール作りを加速すべく、WTOにおける電子商取引交渉などにおいて三カ国で協力していくことを確認した。また、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を考慮し、国際法を重んじた、地域のコネクティビィ協力の重要性を確認した。
なお、同日、鍾山商務部長と会談し、上記のテーマに加え、習近平国家主席の訪日に向けて第三国市場協力、鉄鋼分野における対話の強化をはじめとした具体的な協力を進めていくことや、中国におけるビジネス環境の改善等について議論を行った。
2019年12月24日には、第8回日中韓サミットが成都で開催され、この機会を活かして、安倍総理は習近平国家主席と首脳会談を行い、両国首脳は、2020年春の習近平国家主席の国賓訪日を円滑かつ有意義なものとすべく、引き続き協力していくことで一致した。また、経済関係では日中双方は、両国間の経済・実務協力等様々な分野の協力を更に強化していくことで一致した。安倍総理からは、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃やコメの輸出拡大や牛肉の輸出再開の実現について働きかけを行い、米中両国政府による「第一段階の合意」にかかる発表については前向きな動きとして評価しつつ、米中双方の対話を通じた建設的な問題解決の重要性について指摘した。
さらに、安倍総理は李克強国務院総理とも首脳会談を実施し、経済・実務協力において、日中双方の関心や方向性が一致している分野について協力を一層進めることで一致した。安倍総理より、法制度の運用改善、更なる市場開放、日中金融協力の強化等を通じ、ビジネス環境の改善に力強く取り組むことを期待する旨を伝えると同時に、李総理からは、市場開放の推進を通じ、日中間の経済関係を更に強化していきたい旨発言があった。その他、日中双方は、第三国市場協力について、引き続き具体的な案件の形成について議論していくことを確認した。安倍総理から、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性といった国際スタンダードに合致することの重要性を強調しつつ、その観点から、G20大阪サミットにおける「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の承認は大きな進展である旨述べた。また、イノベーション協力、知的財産権保護についても意見交換を行い、安倍総理から、イノベーション促進のためには、データの取扱いを含む知的財産保護などの環境整備が極めて重要である旨を述べた。さらには、RCEPの早期妥結、その上で、日中韓FTAの交渉推進に共に取り組んでいくことを確認し、RCEPについては、安倍総理から、インドを含めた16か国での署名の重要性を強調した。