経済産業省
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第4節 ASEAN・大洋州

ASEAN諸国は、製造業を始めとする産業発展や経済統合の進展を通じて経済成長を実現する一方、近年では、その経済成長に伴う様々な社会課題に直面している。こうした状況の中、デジタル技術等を活用することで、社会課題等を解決するビジネスが急速に拡大しており、日本としても、こうしたASEANのダイナミズムの取り込みが重要となっている。デジタル経済の進展や米中貿易摩擦の激化などの地域の環境変化を踏まえ、新たな日ASEANの産業協力を展開する必要性が高まっている。

2019年9月、日ASEAN経済大臣会合がタイにて開催され、昨年同会合で日本から提唱した「日ASEAN第四次産業革命イニシアティブ」に基づき、この具体化を加速する政府間対話の枠組みとして、「日ASEAN第四次産業革命ダイアログ」の創設に合意した。双方が対等な立場で、デジタルイノベーションを社会全体に実装させていくための環境を一緒になって創り上げていく方針を共有した上で、同ダイアログを今後の日ASEAN協力の基軸としていくことを確認した。また、同会合においては、ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)より、①貿易円滑化、②労務環境・産業人材育成、③適切なデータ管理体制構築に関して、現地産業界からの声をASEAN側に報告するとともに、「日ASEANイノベーションネットワーク(AJIN)」のもとで実施された第四次産業革命やスマートシティ等におけるデジタル技術の活用に向けたネットワーキング、新ビジネスの創出、調査等の活動が報告された。さらに、AMEICC(日ASEAN経済産業協力委員会)より、①新産業創出、②産業人材育成、③中小企業支援、④メコン地域開発に関する活動が報告された(第Ⅲ-2-4-1図)。

第Ⅲ-2-4-1図 ASEAN関連経済大臣会合

また9月10日に開催された日メコン経済大臣会合では、2018年の日メコン経済大臣会合で策定に合意した、「コネクティビティ」、「SDGs」、「デジタルイノベーション」を三つの柱とする「メコン産業開発ビジョン2.0」を採択。経済統合の深化やデジタル経済化の進展といった周辺環境の変化に対応しつつ、メコン地域が更に魅力を高めることを後押しすべく、今後具体的な「ワーク・プログラム」を検討していく。同年11月にはバンコクで日メコン首脳会議を開催し、昨年の同会合において採択した「日メコン協力のための東京戦略2018」に沿った協力のレビュー、メコン産業開発ビジョン2.0の採択を歓迎する意も含めた共同声明を発表。引き続き、本戦略をもとに、メコン地域の経済発展を支援していく。

経済産業省は、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を通じて、ASEAN及び東アジアの経済統合を支援している。2019年には、ERIAは2019年ASEAN議長国のタイ政府からの要請を受け、「ASEAN Vision 2040」を公表した。これは、ASEANの20年後を見据え、デジタル化等の社会情勢の変化を踏まえつつ、ASEANがその中心性を維持しながら経済共同体を発展させるための方策を、貿易、技術、人材、規制など様々な観点から提示したものである。さらに、新たな課題への対応も進めており、2018年のASEAN+3サミットの合意に基づき、ERIAは翌年10月1日に、海洋プラスチックごみに関するナレッジセンター(Regional Knowledge Centre for Marine Plastic Debris)を設立した。また、ERIAは国連貿易開発会議(UNCTAD)と共同で「非関税措置データベース」を更新し、2019年9月のASEAN経済大臣会合の場で手交する等、国際機関との協力体制の構築に努めている。これらの取組を通じ、ASEAN及び東アジア地域の経済発展を支えるにあたり不可欠な知的インフラという立場を確立しているERIAが、ASEAN及び東アジアのさらなる経済統合の深化に貢献することが期待されている。

タイとは、2018年に世耕経済産業大臣とウッタマ工業大臣間で交換した、タイの産業構造高度化に関する「枠組文書(Framework Document)」に基づき、日タイ政府及び民間企業や大学と連携した産業人材育成や、スタートアップ等日タイ企業間連携促進として、大使館主導でオープンイノベーションコロンブスを推進するなど、協力を深化。2019年11月には、牧原経済産業副大臣とソムキット副首相の立ち合いの下、日タイ企業間で6件のオープンイノベーションに係る協力覚書を交換した。

ベトナムとは、2019年7月、G20大阪サミットに出席するために訪日したフック首相との間で日越首脳会談を実施し、また同首相の参加の下「JETRO投資カンファレンス」が開催された。2020年1月には国会議員(日越友好議員連盟)、経済界、行政等の代表者1000名以上で編成された「日本ベトナム文化経済観光交流団(団長は二階俊博 自由民主党幹事長)」が中部ダナンを訪問した。これらの機会では、両国の経済発展に向けた緊密な協力について首脳レベルで再確認されたほか、民間プロジェクトを含め協力文書が多数交換され、二国間経済関係の更なる深化に貢献した。今後も、両国の経済大臣間の対話の枠組みである「日越産業・貿易・エネルギー協力委員会」の開催等を通じて、引き続き協力を進めていく。

ミャンマーとは、2019年10月、即位礼正殿の儀へ参列するためアウン・サン・スー・チー国家最高顧問が訪日された機会に合わせ、JETROが第2回「ミャンマー投資カンファレンス」を開催した。また、ティラワ経済特別区(SEZ)の開発に官民一体で取り組んでおり、契約企業は100社を超えているほか、SEZ内に設置したワンストップ・サービス・センター(OSSC)では、事業立ち上げから開始後に必要な行政手続のほぼ全て(投資ライセンス、環境・建設の許認可、税務、通関、査証、労務など)をOSSC内一カ所で実施できるため、入居企業からも高い評価を得ている。

インドネシアとは、2019年6月、世耕経済産業大臣はアイルランガ工業大臣との間で日尼EPA見直しにおける産業協力に関して、協力の目的や範囲等を定める、「日尼産業協力枠組み文書(Framework Document on New M IDEC)」に署名した。

オーストラリアとは、2020年1月、梶山経済産業大臣とバーミンガム貿易・観光・投資大臣との間で、第2回「経済閣僚対話」をメルボルンにて開催した。ルールに基づいた多角的貿易体制の推進や、インフラ協力等のインド太平洋地域における課題等、二国間経済関係にとどまらない戦略的な議論を実施した。さらにキャナバン資源・北部豪州大臣(当時)の参加の下、初めてエネルギー・資源を議題に取り上げ、水素やカーボンリサイクル、重要鉱物を始め、幅広い分野について意見交換を行った。また閣僚対話後に、梶山大臣とキャナバン大臣との間で、クリーンで持続可能なエネルギー源としての水素の普及に向けた更なる協力のため、「水素及び燃料電池分野の協力に関する共同声明」に署名した。

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