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- 第Ⅲ部 第2章 第6節 中南米
第6節 中南米
1.今後の方針
中南米は日本の産業基盤を支える鉄鉱石、銅、亜鉛、リチウム、アルミニウムをはじめとする鉱物資源の主要供給源として重要な存在であるとともに、大豆、とうもろこし、牛肉、鶏肉をはじめとする食料資源の供給源として日本を含む先進国のみならず新興国からも貿易相手、投資先として注目を集めている地域である。
さらに、中南米は世界のGDPの10%弱と6億人超の人口を擁する巨大な消費市場(輸出先)及び豊富な若年労働力を活かした生産拠点としての性格も有している。また、他の海外市場とは異なる特色として、日本と中南米の経済関係の深化の過程を長年にわたって支えてきた日系社会の存在が挙げられる。
中南米諸国との貿易・投資を我が国の経済発展の実現に着実に繋げていくためには、多国間の貿易・投資ルールや経済連携の枠組み(EPA、投資協定等)及び経済関係の強化を目的とした二国間協議の枠組み等を活用しながら貿易・投資上の法的基盤を整備やビジネス環境整備を着実に推進していくことが重要である。また、中南米では新たな技術やアイディアによって既存産業のアップグレードや社会課題の解決につなげていくスタートアップビジネスが盛んになっていることを踏まえ、この分野を通じた二国間協力の強化についても検討していく。
2.進捗状況
メキシコについては、2019年5月、辻外務大臣政務官及びデ・ラ・モラ経済省貿易担当次官による共同議長の下、両国関係省庁及びメキシコ日本商工会議所が参加し、第11回日墨EPAビジネス環境整備委員会がメキシコシティにおいて開催された。同委員会では両国の貿易・投資上の障壁改善等について協議が行われ、特に2018年12月のメキシコ新政権発足後に生じた問題である、公務員の人件費削減を遠因とする査証発給をはじめとする行政手続の遅れや政府機関と個別企業の対話機会の減少などが新たな課題として取り上げられた。
その後、2020年2月には同次官が訪日し、田中経済産業審議官と二国間経済関係や国際場裏での協力について意見交換を行った。
キューバについては、2018年12月、第3回日本・キューバ官民合同会議がハバナで開催され、経済産業省も参画し、貿易・投資上の課題改善や債務問題の解消を求めるとともに、投資協定の予備協議を開始することで一致した。
ブラジルについては、2019年5月、石川経済産業大臣政務官がブラジリアを訪問し、経済省のトロイジョ次官及びヤナ貿易・国際担当次官代行、外務省のザルアル貿易・経済政策担当副次官代行と、日本が議長国を務めた2019年のG20プロセスにおける日伯両国の協力や貿易投資の拡大をはじめとする二国間協力関係の構築などについて意見交換を行った。
また、同年10月、田中経済産業審議官及びコスタ経済省次官による共同議長の下、第13回日本・ブラジル貿易投資促進・産業協力合同委員会が開催された。本委員会には両国の民間企業も参加し、日本側からはブラジルにおける貿易・投資上の障壁の改善を求めたほか、ブラジル側からは2019年1月に発足した新政権の下で進められている各種構造改革等を通じてビジネス環境の改善に注力していることが紹介された。
ペルーについては、2019年5月、石川経済産業大臣政務官がリマを訪問し、イスデモス・エネルギー鉱山大臣、ウルタド通商観光大臣筆頭顧問と、二国間の貿易投資促進やインフラ分野・鉱業分野での更なる協力関係構築、ビジネス環境整備などについて意見交換を行った。
コロンビアについては、2019年6月、日本経済団体連合会による第10回日コロンビア経済合同委員会がボゴダで開催され、ビジネス環境整備等について議論された。
また、同年9月、滝波経済産業大臣政務官がボゴタを訪問し、バルディビエソ商工観光省副大臣と二国間貿易・投資の促進、ビジネス環境改善に向けた協議メカニズムの立ち上げに合意したほか、ロハス鉱山・エネルギー省副大臣と石炭を含む鉱物資源の協力関係構築について意見交換を行い、金属鉱物資源についてのポテンシャルが有ることを確認した。
チリについては、2019年はAPEC及び気候変動枠組み条約第25回締約国会合(COP25)議長国を務め、同国内で関連会合が開催された。
5月、石川経済産業大臣政務官がサンチアゴを訪問し、APEC貿易担当大臣会合に参加するとともに、エラスリス日智経済委員会チリ国内委員長、アンプエロ外務大臣、プロクリカ鉱業大臣と二国間貿易投資促進や鉱業分野での更なる協力関係構築について意見交換を行った。9月、滝波経済産業大臣政務官がサンチアゴを訪問し、APEC中小企業大臣会合に参加するとともに、フォンテーン経済・振興・観光大臣とビジネス環境整備や中小企業分野を含む二国間経済関係等について意見交換を行った。
一方、10月、ピニェラ大統領は地下鉄運賃値上げを契機とした抗議活動等国内情勢を理由に11月のAPEC閣僚会議・同首脳会議及び12月のCOP25の開催中止を決定した。
南米南部共同市場(メルコスール:アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイから成る関税同盟。)については、2019年8月、日本経済団体連合会から菅内閣官房長官に対して日本・メルコスールEPA交渉の早期開始の要望がなされた。