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- 第Ⅲ部 第2章 第8節 中東
第8節 中東
我が国は原油輸入の約9割、天然ガス輸入の約2割を中東地域に依存しており、同地域はエネルギーの安定供給確保のために欠かせない地域である。中東諸国では、原油そのものだけでなく、より付加価値の高い石油製品を今後需要の急増が見込まれるアジアに販売することで収益を確保しようとする動きや、エネルギー産業に依存しない経済体制の構築に取り組む動きが顕著に見られる。産業多角化や貿易・投資環境改善への支援を通じ、同地域との経済関係の強化・市場の拡大と、同地域の安定確保を目指す。
サウジアラビア王国については、2017年3月に日サ両国首脳間で合意した「日・サウジ・ビジョン2030」のもと、二国間協力を推進している。同ビジョンのもとでの協力プロジェクトの進捗をレビューするため、2019年4月には事務レベル作業部会である「日・サウジ・ビジョン2030」サブグループ会合を開催した。同サブグループ会合の開催を踏まえ、2019年6月、約2年ぶりとなる第3回「日・サウジ・ビジョン2030」閣僚会合及び同ビジネスフォーラムを開催した。日本側は世耕経済産業大臣、山田外務大臣政務官、サウジ側はアル=トワイジリ経済企画大臣、アル=ファーレフ エネルギー・産業・鉱物資源大臣、アル=オマール サウジアラビア総合投資院総裁が出席し、2年間の協力の進捗と今後の進め方を議論し、協力の成果をまとめた「日・サウジ・ビジョン2030 2.0」に合意した。さらに同年10月の即位の礼の機会を捉え、第4回閣僚会合及びビジネスフォーラムを開催した(第Ⅲ-2-8-1図)。前回会合から4ヶ月という短期間であったが、協力の進展をまとめた「日・サウジ・ビジョン2030 2.0改訂版」に合意。改めてサウジの経済改革への支持を表明するとともに、プロジェクトの具体化の加速化、エンターテイメントや観光等サウジの社会改革を捉えた協力を充実させることで一致した。
第Ⅲ-2-8-1図 2019年10月第4回日・サウジ・ビジョン2030閣僚会合の様子
また、2020年1月、安倍総理大臣はサウジアラビアを訪問した。サルマン国王との首脳会談(於:リヤド)では「日・サウジ・ビジョン2030」を通じた協力を加速化させ、改革を全面的に支援する旨述べ、両首脳は引き続き協力を進展させていくことを確認した。また、ムハンマド皇太子との会談(於:ウラー)では、同皇太子から「日・サウジ・ビジョン2030」については日本との協力は重要である旨発言があったほか、日本への石油の安定供給についてのコミットメントが示された。
イラン・イスラム共和国については、2019年6月に安倍総理大臣が現職総理として約40年ぶりにイランを訪れ、ハネメイ最高指導者及びローハニ大統領と会談を実施した(第Ⅲ-2-8-2図)。安倍総理とローハニ大統領とは、同年9月の国連総会の場でも首脳会談を実施したほか、同年12月のローハニ大統領訪日時にも首脳会談を実施するなど、日イラン外交関係樹立90周年を迎えたこの年、首脳間で緊密に意思疎通を行った。また、同年10月にはJETROがテヘラン国際産業見本市にJETRO広報ブースを出展し、20社・団体がカタログ出展を行い、来場者やイラン企業に対してPRした。
第Ⅲ-2-8-2図 2019年6月イランでの少人数会合の様子
アラブ首長国連邦(以下、UAE)については、2019年11月、梶山経済産業大臣が日本と産油国との女性交流事業(FCW:Friendship Committee for Women Carrer Development)に参加するため訪日中のマイサ国務大臣と会談。同大臣が進める女性活躍・女性交流分野も含めた両国間での協力を確認した。同月、松本経済産業副大臣がアブダビ国際石油展示会議(ADIPEC)に参加するためUAEを訪問した。マズルーイ・エネルギー産業大臣、ジャーベルUAE国務大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO、ハルドゥーン・アブダビ執行関係庁長官など政府要人と会談を行った。2020年1月には安倍総理大臣がUAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子との会談を実施。日・UAE「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」の下、エネルギーや経済を始め、広範な分野における両国の戦略的パートナーシップを一層強化することで一致したほか、日本への石油の安定供給についてのコミットメントが示された。なお、同会談に際し、同じくUAEを訪問中の牧原経済産業副大臣とジャーベルUAE国務大臣との間で、貸与タンクの130万klまでの増量を含めた、日本とアブダビ首長国との間の「共同石油備蓄事業に係る合意文書」の署名と交換が行われた。また、牧原副大臣は、ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(WFES)に参加したほか、ジャーベルUAE国務大臣に加え、マズルーイ・エネルギー産業大臣とも会談を行い、二国間関係の強化等について、意見交換を行った。
イスラエル国については、2019年11月に「日・イスラエルイノベーションネットワーク(JIIN)」の取り組みの一環として、ジェトロが初めてデジタルヘルス分野に特化した企業ミッションをイスラエルに派遣。医療機器メーカー、保険会社、投資会社等ヘルスケア関連企業13社20名が参加し、医療関係機関・スタートアップに特化した各種視察と、リバースピッチ・マッチングイベントを実施した。
トルコ共和国については、2019年6月にG20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合の場にて、世耕経済産業大臣とペキジャン貿易大臣が会談し、日・トルコ経済連携協定(EPA)に関する議論を行った。2019年7月には安倍総理大臣がG20大阪サミット出席に伴い訪日中のエルドアン大統領とワーキングディナーを行い、日トルコEPAの早期妥結に向け更に交渉を加速すること、経済を含む幅広い分野で日・トルコ関係を更に発展させていくこと等を確認した。また、2019年9月に東京にて「第25回日本トルコ合同経済委員会」が日本経済団体連合会とトルコ海外経済評議会の間で開催され、宮本経済産業大臣政務官、メルジャン駐日トルコ大使が出席。両国経済界の関係者約150名の参加のもと、トルコのビジネス環境等について議論が行われた。
カタール国については、2019年9月に開催されたLNG産消会議への参加のために訪日したアルカービ・エネルギー担当国務大臣と我が国への石油・LNGの安定供給を始めとする経済関係強化に向けた意見交換を実施した。2020年1月には牧原経済産業副大臣がカタールを訪問し、アルカービ・エネルギー担当国務大臣、および、クワーリー商業・工業大臣と会談を実施。会談において、日本企業も参画するカタール国内の具体的なLNGプロジェクトや、インフラプロジェクトなどについて議論し、日本とカタールのエネルギー当局間の交流を深めていくことで一致した。
クウェート国については、2019年4月にアルファディル石油大臣兼電力水大臣が訪日し、世耕経済産業大臣と日クウェート間の経済関係の強化について議論を行った。2020年1月には牧原経済産業副大臣がクウェートを訪問し、アルファディル石油大臣兼電力水大臣と会談を行った。電力水分野では、牧原副大臣より、日本企業のクウェートにおける電力水分野のプロジェクトへの関心を指摘し、両者は今後のクウェートにおける発電と造水の需要の高まりに日本企業が関与していくことの重要性について認識を共有した。石油分野においては、牧原副大臣より、低廉かつ安定的な原油供給を要請するとともに、中下流分野での協力について、具体的プロジェクトの課題への対応を含めて緊密に連携していくことで一致した。
オマーン国については、2019年12月に商社、製造業、食品等の日本企業23社から成るビジネスミッションがオマーンを訪問、アスアド国際関係・協力担当副首相兼国王特別代理(以下「アスアド殿下」)、バドル外務省事務総長を表敬するとともに、ドゥクム経済特区の視察やオマーン政府・関係機関とのビジネスセミナーを行った。また、2020年1月には安倍総理大臣がオマーンを訪問、カブース・オマーン前国王の崩御を受けハイサム新国王を弔問し、懇談したほか、アスアド殿下、ファハド閣僚評議会担当副首相と会談した。ファハド副首相との会談では、安倍総理から、経済や安全保障面を含め幅広い分野における両国間協力の深化を歓迎する旨を述べ、両国は引き続き協力を深化していくことで一致した。
アラブ連盟については、2019年9月にエジプト・アラブ共和国の首都カイロにて開催された日本・アラブ経済フォーラムに磯﨑経済産業副大臣が出席した(第Ⅲ-2-8-3図)。本フォーラムでは、日アラブ間の「経済の好機」として、エネルギー・インフラ、エンターテインメント・スタートアップを中心に、協力の推進について議論した。また、この機会を捉えて、ナスル・エジプト投資国際協力大臣、ナッサール・エジプト貿易産業大臣、および、ハッサンアリ・アラブ連盟事務総長補佐官との会談を行った。
第Ⅲ-2-8-3図 2019年9月エジプト・アラブ共和国での日本・アラブ経済フォーラム開会挨拶の様子