経済産業省
文字サイズ変更

第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
第1節 我が国製造業の足下の状況

6.国内外における製造業のデジタル化に向けた取組

(2)民間推進団体を中心とした取組

国内の民間推進機関における取組も、年を重ねるごとに活性化してきている。とりわけ、ロボット革命イニシアティブ協議会(Robot Revolution Initiative、以下RRIと呼称)、Industrial Value Chain Initiative(以下IVIと呼称)、IoT推進ラボといった推進団体が、各自の取組を深化させるとともに、相互連携を通して日本全体の大きなうねりとして盛り上げていく活動が大きく進展してきた。

コラム:ロボット革命イニシアティブ協議会の取組の進捗

ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)のWG1(IoTによる製造ビジネス変革ワーキンググループ)において、製造業のデジタル化の際に必要となってくる国際標準化や産業セキュリティなどの横断的分野の課題に係る取組が加速している。

横断的分野の取組に関しては、2016年4月の日独共同声明をきっかけに連携を開始した日独の民間推進団体間での連携を加速的に進めており、国際標準化や産業セキュリティなどの分野において、専門家間の議論を中心に議論を深化させることで、ISO/IECなどの国際標準化機関での議論を主導していくことを図っている。また、中小製造業支援については、2016年及び2017年に、「スマートものづくり応援ツール」の募集を実施。中堅・中小製造業がより簡単に、低コストで使える簡易なツールや一連の仕組みとしてのレシピを募集し、中小製造企業の経営者の目線で審査委員会を実施した上で同協議会HPにおいて公表した(図)。今後は、積極的なPRによる周知とともに、スマートものづくり応援隊などの各種施策との連携などを検討していくこととしている。

また、国際連携については、上述の日独連携だけではなく、2017年11月、経済産業省との共催にて「国際シンポジウム」を開催した。午前の部においては、Connected Industriesをテーマとして、経済産業省から 西銘恒三郎副大臣のほか、世界経済フォーラム、ロボット革命イニシアティブ協議会、ドイツ経済エネルギー省、中国情報通信研究院、Industrial Internet Consortiumからハイレベルの登壇者を招き、Connected Industries他各国のIoTに対する取組や課題認識を共有した。また、午後の部は、IoTの将来像、国際標準化、産業セキュリティをテーマとし、ドイツ、米国、チェコ、スウェーデン、日本から専門家に登壇いただきパネルディスカッションを実施した。また、日独連携に続き、2017年度にはチェコ産業連盟、Industrial Internet Consortium(IIC)、さらには仏のAlliance Industrie du Futur(未来の産業同盟)とそれぞれ連携協定を結んだ。これらに基づき各国推進団体との交流の機会を増やし、情報・意見交換の促進を目指す。

さらに、工業会や各推進団体間の連携については、製造業2030シンポジウム(日本電機工業会)、CEATEC2017(電子情報技術産業協会など)、システム化シンポジウム(横幹連合)などでパネル討論の実施や共同展示などによって連携を実施した。さらには、推進団体間連携として、SCF・計測展2017において中堅・中小製造業のIoT導入ユースケース紹介をIVIと共同で実施し、連携してワークショップを開催した。これからも、組織の枠を超えた有機的な連携の広がりが期待される。

図「スマートものづくり応援ツール」募集のイメージ

資料:ロボット革命イニシアティブ協議会作成

コラム:Industrial Value Chain Initiativeの取組の進捗

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は、日本機械学会生産システム部門の研究分科会が母体となって2015年6月に設立された団体であり、2018年3月現在で製造業を中心に250社以上の会員を持つ。主な活動として以下の4つを中心に活動を加速化している。

①業務シナリオの作成と実証実験

異なる企業のメンバーが10名から15名でワーキンググループ(WG)を作り、メンバーの共通の悩み事からスタートするボトムアップな議論の中で設定したテーマに対応した業務シナリオとその解決へ向けた実証実験を実施している。こうした取組は、日ごろは競合相手でもある企業の担当者が、同じテーブルにつき、自前主義を超えて、企業間で協調すべき内容を見出すための方法として効果を上げている。WGは1年ごとのサイクルで活動しており、毎年20以上のWGが活動している。2017年度は22のWGが実証実験を実施しその成果を報告した(http://wm.iv-i.org/public/Scenarios/)。

②IVI地域セミナーの開催

地域経済を支える中小製造業が、IoTを積極的に活用することでその生産性を大幅にアップするために、IVI地域セミナーを実施している。2017年度は、富山、福井、加賀、さいたま、静岡、鳥取、広島、大分の計8か所で開催し、中小企業125社、159名が参加した。2日間のセミナーでは、グループ単位で共通する課題を議論し、IoTを活用した業務シナリオをまとめる。

セミナーに参加した中小企業の担当者は、その結果を会社に持ち帰り展開すると共に、何社かはIVIや地域の支援機関からの継続的なサポートを受けながら実証実験までを行っている。加えて、IVIは、すべての参加企業の中から特に優秀な企業の表彰も行っている。2017年度は、IVI地域アワードとして、(株)リッチェル(富山県)他が最優秀賞、(株)タアフ(富山県)他、(株)東京チタニウム(埼玉県)、そして(株)田中製作所(鳥取県)が優秀賞を受賞した。

③未来プロジェクト

未来プロジェクトは、データ駆動型の新しい経済への変革が進む3年後、5年後の未来について、会員企業より25社の中堅・若手メンバー30名が議論し、10億円の投資で1000億円の経済効果が期待できるまったく新しいものづくり関連サービス事業のアイデアを形にする取組である。以下の4つのプロジェクトが、事業計画書、開発仕様書を作成した。この成果をもとに、参加企業を追加募集し、テストベットを構築するとともに、事業化へ向けたさらなる一歩を進めようとしている。

(1) ゆるやかなエッジOS・・・工場内のエッジ領域にあるデータをエッジの外側で利用するための仕組み。工場内のディープデータを秘匿しつつ、用途を限定して外部で利活用できるようにする。

(2) ものづくりデータバンク・・・デジタル化されたノウハウデータを預かり、それを必要とする第三者に提供し、得られた収益を共有する仕組み。自社で不要となったノウハウを有効活用する。

(3) コンビニ型ファクトリー・・・消費者に最も近いところで「あったらいいな」を実現する。製造装置をモジュール化し、Webと連動することで消費者参加のマスカスタマイゼーションを可能とする。

(4) SMU連携ステーション・・・スマートなものづくりの現場(SMU)の連携のために、ブロックチェーン技術によるモノとデータの紐づけを行い、高度な物流管理、受発注管理、そして決済管理を行う。

④IVIプラットフォーム

ドイツのインダストリー4.0が提案しているアーキテクチャであるRAMI4.0に対応した日本的なモデルとして、2016年12月にIVIから提案されたIVRA(Industrial Value Chain Reference Architecture)は、その後ISOやIEC、およびIEEEの標準化の草案として組み込まれた。また、2017年度は、その概念をさらに具体的なシステムの実装モデルに展開したIVRA-Nextを発表した。製造業とIT企業とがWin-Winの関係の中でエコシステムを構成するための仕組みを具体化し、製造業側のニーズを起点としつつ、IVIプラットフォームおよびそれを構成するIVIコンポーネントの要件を設定した。

また、個々の企業の競争力を認め合う“ゆるやかな標準”というコンセプトのもとで、IVIプラットフォームを支える辞書の整備も進めている。設立以降3年間の業務シナリオWGの活動から抽出された膨大な事例の中から、3,000以上の用語がデータベースとしてすでに登録されている。こうした実際のリアルな用語をまとめ、あらたな業務シナリオの中で再利用していくことで協調領域を整備し、その上で、各企業がもつ現場のノウハウや強みを生かしたIT化、プラットフォーム化を実現しようとしている。

コラム:IoT推進ラボの取組の進捗

IoTコンソーシアムの下、先進的なIoTプロジェクト創出を目指して設立された「IoT推進ラボ」では、設立された2015年以降、様々な活動を実施している。

その活動の中心となるのが、「IoT Lab Selection(先進的IoTプロジェクト選考会議)」である。これまで通算5回開催し、49のファイナリストを選出しており、ファイナリストに対しては、プロジェクトの実施及び社会実装に向けた資金面や規制面での支援を行うこととしている。第4回IoT Lab Selectionでは、課題設定型のコンテストとして「ものづくり~Connected Industries~」をテーマにプロジェクトを募集し、AIを使ったIRカットフィルタ検査工程の自動化を目指す(株)タナカ技研がファイナリストとして選出された。また、第5回IoT Lab Selectionで準グランプリに輝いた(株)光コムは、ノーベル物理学賞を受賞した光コム研究の産業応用に取り組む東工大発のベンチャー企業である。光コムレーザを活用した形状測定システムと機械学習を基盤に、製造現場におけるスマートファクトリーの実現を目指している。

また、分野別のマッチングとしてIoT Lab Connection(ソリューションマッチング)も実施している。これまで、3,000件を超えるマッチングを実施しており、製造業とITベンチャー企業など、多くの異業種連携が生まれている。例えば、「RFID持出返却システム」などのIoTソリューションを提供する(株)宮川製作所と、IoTやRFID機器と連携可能なワークフローアプリを提供するセールスワン(株)が協業し、両社の特徴を活かし、工具類やプロパンガス機器などの機材にRFタグを取りつけ、持ち出しや返却などを管理するシステムを構築している。

さらに、IoT推進ラボの取組を全国に広めるために、地域におけるIoTプロジェクト創出のための取組を「地方版IoT推進ラボ」として選定し、地域での取組を通じたIoTビジネスの創出を支援している。2018年3月現在、74地域を選定しており、全国的な取組へと発展している。とりわけ、静岡県IoT推進ラボにおいては、ものづくり現場の困りごとの解決策をデザインするIoT実践セミナーを開催。このセミナーで出た具体的なデザインを、ものづくり現場で実証実験を行い、困りごとを一つ一つ解決・見える化する取組が行われている。

図(株)宮川製作所とセールスワン(株)の協業による工具類などの持出しや返却管理のイメージ

資料:(株)宮川製作所・セールスワン(株)より提供

<<前ページへ | 目次 | 次ページへ>>

経済産業省 〒100-8901東京都千代田区霞が関1-3-1代表電話03-3501-1511
CopyrightMinistryofEconomy,TradeandIndustry.AllRightsReserved.