-
政策について
白書・報告書
製造基盤白書(ものづくり白書)
2018年版
モバイル版
第1部第1章第1節
6.国内外における製造業のデジタル化に向けた取組
-
(4)各国との協力
第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望第1節 我が国製造業の足下の状況
6.国内外における製造業のデジタル化に向けた取組
(4)各国との協力
①日独
世界共通でデータが重要な経営資源となる中で、世界でも強みを持つ両国の製造業は、生産現場などのリアルデータを活用した生産性向上やビジネスモデル転換にしのぎを削っている。一方で、両国は、デジタル革新が進む中で、あらゆるものがデータを介してつながることで付加価値を生み出す産業社会の創出に向けて共通基盤を連携整備すべく、協力ニーズがある協調分野を特定し、2016年4月における次官級の共同声明以降、本格的な協力を開始した。
さらに、協力の枠組みを加速していくべく、毎年ドイツのハノーバーで開かれている国際情報通信技術の見本市であるCeBIT2017の場において、閣僚級にて「ハノーバー宣言」を締結・署名を行った。ハノーバー宣言締結以降、各協力項目について協力を一層加速的に実施している。主な協力項目の進捗については以下のとおりである。
(ア) 国際標準化
本分野における日独連携は、主に独インダストリー4.0の推進母体であるプラットフォームインダストリー4.0(PI4.0)とロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)間で専門家による議論が実施されていた。ハノーバー宣言締結以降、RRIと独・PI4.0との間で、日独標準化専門家会合を計8回開催(2016年4月の日独連携開始以降では計14回)。ISO/IECにおける本格的議論へと移行していく際に必要となる議論のフレームワークを策定し、ISO/IECへと提案することを通じて両国でISO/IECなどでの議論を牽引することを企図している。
そのような中、2018年4月にドイツのハノーバーで開かれた世界最大の産業見本市であるハノーバーメッセにおいて、第四次産業革命で人手を介さず機械/システムが連携する将来像(ユースケース)を共同で描いた「日独共同文書」を発表した。この活動を通して、標準化に関する課題洗い出す議論のための基盤づくりを両国で推進している。
(イ) 産業セキュリティ
国際標準化分野と同様に、RRIと独・PI4.0双方の専門家による議論を実施。ハノーバー宣言締結以降、産業セキュリティ専門家会合を7回開催(累計で8回)。日独双方の現状や課題に関する情報交換や、日独標準化専門家会合で作成を進めるユースケースを用いた産業セキュリティ上の課題を洗い出し検討などを推進してきた。
そのような中、2018年5月にベルリンで行われるドイツ主催の産業セキュリティに関する国際ワークショップ(G20フォローアップ会合)において、ものづくりIoTの将来事例を用いて製造分野におけるサプライチェーン全体でのセキュリティ、並びに信頼の確保のための方策について日独で更なる連携強化を図ることを目的とした日独共同文書を発出。
②日仏
2017年1月に、「日仏産業協力委員会(経済産業省と仏・経済財務省企業総局との定期会合、毎年開催)」の中に「Industry of the Furture/IoT WG」を新設して以降、第1回目の課長級WGを2017年12月に実施し、両国の施策紹介など含めた協力関係の進め方を再確認した。また、両国のファンディング機関である日本のNEDO及びフランスのBpifranceによる国際共同開発への助成事業を実施し、IoTに関連した日仏企業間の共同プロジェクトへの支援を実施した。さらに、両国のプラットフォームであるRRI及びAlliance Industrie du Futur(未来の産業同盟)間において、先進事例共有や中小企業支援などの分野で協力を推進することを定めた共同声明を締結した。
③Industrial Internet Consortium (IIC)
Industrial IoTソリューション実現のための連携を推進する民間団体である同組織では、メンバーから提案の優れたテストベッドの認定や重要な標準規格領域に対する規格仕様の定義、規格仕様の標準化団体への提案などを実施している。25事業が認定されているテストベッドのうち、日本からは4事業5社が参加しており。先進事例の創出に取り組んでいる(図116-17)。
図116-17 IICの日本企業(4事業、5社)が参加するテストベッドの概要

資料:経済産業省作成
また、IICと日本の民間推進団体間における連携については、産業横断的にIoT化を推進する「IoT推進コンソーシアム」が、グッドプラクティスの発掘・共有やテストベッドの協力などに関して、2016年10月に相互連携のためのMOUを締結した。その後、日本の製造バリューチェーンの集まりである「IVI」が、IIoTのアーキテクチャに関する情報の共有などに関して、さらには産学官が連携して製造業のIoT化を推進する「RRI」が、国際標準化や産業セキュリティに関わる連携活動について、それぞれMOUを締結し、連携を加速し始めている。
④日タイ
自動車や電子部品を中心としたASEAN随一の産業集積を誇る同国は、近年人件費の高騰などにより、従来の低労務費を軸としたビジネスシナリオからの脱却が社会課題となっていた。そこで、産業の高度化や高付加価値化による中所得層からの脱却を目指して、「タイランド4.0」というビジョンを2015年に発表しており、近年ターゲットとなる10の重点産業への投資拡大、持続可能な経済成長の実現に向けた取組が本格化している(図116-18)。
図116-18 「タイランド4.0」のイメージ

資料:ジェトロ作成
同国は、製造業における日系企業の存在感が大きく、特に自動車分野において数多くの日系企業が進出しており、日本流のリーンなものづくりに親和性ある地域といえる。そのため、ロボットなどによる自動化支援やIoTなどを活用したソリューション展開などによる産業高度化支援に取り組む日本と、産業の高度化を志向するタイの間では、連携することによるお互いのメリットが一致したこともあり、2017年6月から本格的な協力を開始した。まず、2017年6月にタイのソムキット副首相らが来日した際に、ソムキット副首相の立会いのもと世耕経済産業大臣とウッタマ工業大臣の間で「東部経済回廊(EEC)及びタイ産業構造高度化に関する覚書」に署名した。さらに、2017年9月には、世耕経済産業大臣が訪タイし、ジェトロ・タイ政府共催セミナーにて、Connected Industriesの考え方などをプレゼンし、”タイランド4.0”と“Connected Industries”との政策間連携をキックオフした。
加えて、トップレベルによる連携強化だけではなく、現場レベルでの連携も強化していくべく、「IoTツールを活用した国際遠隔保守」や「生産設備システムインテグレータ人材の育成」「日本品質を担保したシェアリング工場の設置」などの国際実証をタイの地で実施することにより、連携の深化を図り始めている(図116-19)。
図116-19 世耕大臣とウッタマ工業大臣の署名式(2017年6月)

資料:経済産業省撮影
⑤日中
中国製造2025やインターネット+といった国策を背景に急速に製造業のデジタル化に舵を切っている中国との間でも、民間企業間を中心としたスマート製造分野の協力が開始された。2017年12月に、日本の日中経済協会と中国の工業信息化部が共同開催した「日中スマート製造交流セミナー(北京で開催)」では、両国の政府関係者や企業関係者約160名程度が参加し、両国のスマート製造関連政策やケーススタディなどを紹介し合い、交流を深めた(図116-20)。
図116-20 日中スマート製造交流セミナー

資料:経済産業省撮影
⑥世界経済フォーラム World Economic Forum (WEF)
グローバル・シチズンシップの精神に則り、パブリック・プライベート両セクターの協力を通じて、世界情勢の改善に取り組む国際機関である世界経済フォーラム(WEF)は、2017年3月に、技術革新や世界規模の影響力に対する各国・各企業の迅速な対応を促すため、官民連携の世界的な拠点として、サンフランシスコに「第四次産業革命センター」を設立した。本センターには、産業界、学界、市民社会、政府、国際機関など多様な関係者が参画しており、各界有識者で構成されるアドバイザリーボードの初代共同議長に、日本から世耕経産大臣が就任している。同センターにおいては、人工知能、IoT・精密医療などの9ほどの重要テーマについてプロジェクトチームが立ち上がり、マルチ・ステークホルダーで議論・研究、実証実験の実施、政策提言の取りまとめが推進されているところである。
さらに、第四次産業革命へのグローバルな対応を加速するため、姉妹組織を日本、インド、UAEなどに設立することが企画されている。ガバナンス・ギャップの克服、革新的なプロジェクトの推進、グローバルな産学官パートナーシップの構築に向けて、2018年の夏には「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」を東京に立ち上げ、グローバル大でのオープン・イノベーションを支援していくことが、2018年1月に行われたダボス会議において発表された。設立後は、ヘルスケア、モビリティ、イノベーションを推進するための法制度の在り方などについての議論を促進する場として活用され、またサンフランシスコの世界経済フォーラム第四次産業革命センターや世界各地に立ち上げられる予定の姉妹拠点と積極的に連携していくことが重要となる(図116-21)。
図116-21 日本センター立ち上げと日本の政策との関係性

ダボス会議にて日本センター立ち上げを発表

資料:経済産業省作成