経済産業省
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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第2章 ものづくり人材の確保と育成
第1節 労働生産性の向上に向けた人材育成の取組と課題

4.第1節のまとめ

これまで、人材育成の成果に着目して、労働生産性との関係や、人材育成の取組、人材育成の課題を確認してきた。人材育成の成果として、以下の3点が挙げられる。1点目は、人材育成の成果があがっている企業の方が、3年前と比べ「生産性が向上した」、他社と比べて「生産性が高い」とする割合が高いことである。2点目は、人材育成の具体的な成果として、労働者個人における理解・知識の深まりや作業スピードの向上といった「技術・技能の向上」などの直接的な成果だけではなく、チークワークの改善などの「組織力の向上」につながる間接的な成果もみられることである。3点目は、人材育成の成果があがっている企業においては、成果があがっていない企業に比べて人材の定着が進み、その結果、人材育成の成果があがっている企業の特徴として、ものづくり人材としての熟練技能の蓄積がうかがえることである。

また、人材育成の成果があがっていると回答した企業で、どのような人材育成が行われているかをみると、人材育成の方針から、中長期的な視野で計画的、段階的に人材育成を進めていることがうかがえる。人材育成を促進させるために実施している取組においては、研修などのOFF-JTの実施、資格や技能検定などの取得の奨励、技能伝承のための仕組みの整備をより多く行っている。自己啓発の支援では、受講料などの金銭的支援、資格等を取得した際の手当や一時金の支給などが多い一方で、労働者が多く問題として挙げている時間の確保に係る支援は少なくなっており、今後、時間面での支援への取組が期待される。

さらに、労働生産性の向上分の配分については、人材育成の成果があがっている企業の方が、採用・人材育成の強化や賃金等処遇の改善といった人材への投資により配分する傾向がみられる。人材育成の成果が労働生産性の向上へとつながり、その向上分の配分がさらなる人材への投資へと向かう好循環の形成がうかがえる。

人材育成における課題については、「若年ものづくり人材を十分に確保できない」が人材育成の成果の有無に関わらず共通の課題である。人材育成の成果があがっていない企業においては、成果があがっている企業に比べて、より広範に課題を抱えており、自社のみで効果的な人材育成を実施するには多くの隘路が存在するとみられる。

一方、IT人材については、人材育成の成果の有無に関わらず、不足しているとする企業の割合が高い。人材育成の成果があがっている企業においては、「自社の既存の人材をIT人材に育成する」ことで対応する企業が多く、IT人材の育成のように変化の激しい分野で必要な人材を育成するには、社外機関を活用する傾向がみられる。

今後も企業のニーズを踏まえた在職者訓練の機会の提供や助成金支給等を通じて、企業の人材育成に向けた支援を行っていくとともに、ものづくり分野への若年者の関心を高め、技能尊重気運を醸成していくことが必要である。

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