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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発
第1節 Society 5.0の実現に向けた教育・ものづくり人材の育成

3.ものづくりにおける女性の活躍促進

(1)女性研究者への支援 

女性研究者の活躍を促し、その能力を発揮させていくことは、我が国の経済社会の再生・活発化や男女共同参画社会の推進に寄与するものである。しかし、我が国の女性研究者の割合は年々増加傾向にあるものの、2017年3月現在で15.7%であり、先進諸国と比較すると依然として低い水準にある(図313-1、図313-2)。

「第4次男女共同参画基本計画」(2015年12月25日閣議決定)及び「第5期科学技術基本計画」(2016年1月22日閣議決定)においては、研究者の採用に占める女性の割合は、2020年までに自然科学系全体で30%(理学系20%、工学系15%、農学系30%、医学・歯学・薬学系合わせて30%)という成果目標が掲げられている。

図313-1 日本の女性研究者数及び全研究者数に占める割合の推移

資料:総務省「科学技術研究調査」に基づき文部科学省作成

図313-2 女性研究者数の割合の国際比較

資料:「科学技術研究調査報告」(日本:2017年時点)
「OECD “Main Science and Technology Indicators ”」
(英国・フランス:2014年時点、ドイツ・韓国:2015年時点)
「NSF Science and Engineering Indicators 2016」(米国:2013年時点)

文部科学省では、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」により、研究者の研究と出産・育児・介護等との両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダー育成を一体的に推進するなど、女性研究者の活躍促進を通じた研究環境のダイバーシティ実現に関する取組を実施する大学等を重点支援するとともに、「特別研究員(RPD)事業」として出産・育児による研究活動の中断後の復帰を支援する取組を拡充するなど、女性研究者への支援の更なる強化に取り組んでいく。

(2)理系女子支援の取組

内閣府は、ウェブサイト「理工チャレンジ(リコチャレ)~ 女子中高校生・女子学生の理工系分野への選択~ 」において、理工系分野での女性の活躍を推進している大学や企業など「リコチャレ応援団体」の取組やイベント、理工系分野で活躍する女性からのメッセージなどを情報提供している。また、女子生徒等の理工系分野への進路選択を支援するため、2017年7月~8月に、文部科学省・(一社)日本経済団体連合会との共催で、夏休み期間中に各大学・企業等で実施している、主に女子中学生・高校生等を対象とした、理工系の職場見学、仕事体験、施設見学など多彩なイベントを取りまとめた「夏のリコチャレ2017大 ~理工系のお仕事体感しよう!~」を開催した。

また、(国研)科学技術振興機構では、「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施している。これは、科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施等を通して女子中高生の理系分野に対する興味・関心を喚起し、理系進路選択の支援を行うプログラムである。

図313-3 進路選択に影響を与えた人物

資料:経済産業省 2015年度 産業技術調査事業「産業界の人材ニーズに応じた理工系人材育成のための実態調査」

(3)理系女性に求められるスキルの見える化の取組

経済産業省では、2016年度から、理系女性の活躍促進を図ることを目的とし、理系女性が有するスキルと産業界が求めるスキルを比較し、女性自身がどのようなスキルを身につければよいか把握するためのシステムを整備する「理系女性活躍促進支援事業」を実施(図313-4)し、「リケジョナビ」を公開した。また同システムのPRとともに更なる理系女性活躍促進を目的とし、大学・企業の人事担当者・学生を対象とした「理系女性活躍促進シンポジウム」を2017年9月に開催した。

本事業により、有すべきスキルが見える化されることで、理系女性の学業に対するインセンティブが増大し、理系女性の履修行動の変化につながることが期待される。

図313-4 理系女性活躍促進支援事業のイメージ

コラム:「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」の取組

―電気通信大学「工学系進学を目指す“匠ガール”の進路支援」―

電気通信大学では、津田塾大学とNTT先端技術総合研究所との連携のもと、理系進路選択の中でも、女子学生の比率が依然として低い工学分野への進学を支援している。大学の研究を体験する夏合宿、企業・大学で活躍する女性研究者・技術者のリアルな体験談を聞くロールモデル講演会・懇談会、企業の最先端ラボ見学・体験などのイベント等を実施している。日本が世界に誇る技術が生まれる現場に触れ、工学系分野で学ぶことの楽しさや醍醐味を経験することで、工学系進学の魅力を伝えている。

写真:夏合宿「モノづくり研究体験スクール」で大学のラボを体験する様子

コラム:ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブによる大学の取組

-大阪大学-~関西へ拡大する産学官共創による女性研究者の循環型育成クラスター~

クロス・アポイントメントや女性研究者をリーダーとする共同研究等により、女性研究者の知識と発想の幅を広げ、研究力とマネジメント力を強化する仕組みとしての「循環型育成クラスター」を、大阪大学に共同研究講座や共同研究所等を有する企業等と形成し、女性研究者育成型マッチングファンド(産学共同研究型)により持続性を担保して女性研究者育成に取り組んでいる。

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