-
- 政策について
- 白書・報告書
- 製造基盤白書(ものづくり白書)
- 2018年版
- モバイル版
- 第1部付論I 第7回ものづくり日本大賞

第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第1部付論I 第7回ものづくり日本大賞
ものづくり日本大賞は、我が国の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきた「ものづくり」を着実に継承し、更に発展させていくため、製造・生産現場の中核を担っている中堅人材や、伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、「ものづくり」に携わっている各世代の人材のうち、特に優秀と認められる人材を顕彰する制度である。本賞は、経済産業省、厚生労働省、文部科学省、国土交通省が連携して2005年より隔年開催しており、今回で7回目を迎えた。
2018年1月22日には第7回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞表彰式が行われ、24件71名が表彰を受けた。
ここでは、これら内閣総理大臣賞を受けた受賞者について紹介する。
第7回ものづくり日本大賞

写真:内閣総理大臣賞祝賀会の様子

写真:内閣総理大臣賞祝賀会の様子

写真:ものづくり展の様子
佐藤 道貴氏 他6名
JFEスチール(株)
製鉄業のCO2排出量は製造業・建設業の全排出量の52%を占め、その中で約70%を排出している製銑プロセスに着目。焼結鉱の焼結強度と還元性を向上、製造プロセスを冶金学的に分析し、製銑プロセスにおいて大幅なCO2削減を実現する技術の工業化に成功。
同社所有の全焼結機に導入し、大幅なCO2削減と同時に数百億円規模のコスト削減を達成し、地球温暖化防止、省エネルギーに貢献。

長野 敬氏 他6名
(株)日立製作所 他2団体
(株)日立製作所 他2団体 日本の得意とする、メカトロニクス技術と半導体技術を融合し、センサー素子と制御回路が2.5㎜四方の1チップ上に集積された、世界初の半導体ひずみセンサーを開発した。様々な構造物や機器類の変形を、過酷な環境下でも長期間安定した1μストレインレベル(1kmのものが1mm伸び縮みする現象を計測)の高感度計測(従来製品との比較で感度2万5千倍)が可能になった。

豊田 昌信氏 他6名
ジャパン マリンユナイテッド(株) 他2団体
造船所と製鉄所の高度なコラボレーションにより、以下3つのコンテナ船製造に関する技術が生まれた。①船体の大規模な破壊を防止する、世界初の「構造アレスト」技術、②圧廷条件の最適化、独自の厚板冷却技術による超極厚・超高張力鋼鈑の開発、③時間的、費用的にコスト削減を可能とした超高効率溶接技術。これらの技術革新により、安全性能が高く、環境性能の優れた大型コンテナ船を実現。


野口 仁氏 他6名
富士フイルム(株)
超微粒子バリウムフェライト磁性体の粒子形成技術、それを一次粒子化するナノ分散技術、超薄層磁性層を形成する精密塗布技術、これら3つの技術開発により、世界最大記録容量を持つデータテープを開発。消費電力が少なく低コストで、安全に長期間データを保存でき、IoT時代の増大するデータストレージ需要への対応に大きく貢献。更に、1巻あたり220TBへ高容量化が可能なことを実証しており、将来にわたってビッグデータを保管するという社会的課題に対応。

佐藤 厚氏 他4名
(株)ニッコー 他2団体
鮮度保持に優れたシャーベット状海水氷(シルクアイス)を、船上で海水から製造する製氷機を開発。国内外で40台以上を販売。魚体を傷つけずに均一に冷却することで、海外輸送後も生食が可能な鮮度を実現。水産品の鮮度保持で、レストラン、研究室などでも活用されている。製氷機は、小型漁船に搭載可能なサイズで、海水温や塩分濃度の変化に即座に追従し、最適な温度帯での連続製氷が可能としたところに特徴がある。

小松 道男氏 他1名名
小松技術士事務所 他1団体
射出成形が困難で量産化が果たせなかった、生分解性樹脂・ポリ乳酸の量産加工技術を開発。金型内の温度をセンサーで計測し、結晶化と同時に製品を離型させる技術、超臨界状態で溶解した窒素や二酸化炭素による微細気泡形成や流動性改善技術など、ポリ乳酸製品を耐熱化、断熱性・軽量化、薄肉化する多様な射出成形技術群を開発。
ポリ乳酸を原料とした耐熱性幼児食器及び薄肉成形カップの量産化を実現し、国内外に販路を拡大している。

冨増 佳晴氏 他6名名
大塚オーミ陶業(株)
陶板レリーフの製作において、焼き重ねしても割れることなく、かつ、寸法精度が良く、歪みが生じない高精度な形成技術と、釉薬による焼成時の表面のガラス化を制御、質感豊かに色彩を再現する技術を開発、“複数回の焼き重ねは不可能” という伝統的なヤキモノの固定概念を打破。キトラ古墳等文化財の複製等に応用するなど、半永久的な耐久性を有する新たな記録保存方法(セラミックアーカイブ)として、文化・芸術の伝承及び鑑賞方法の多様化について新たな価値を創出。

北原 成郎氏 他1名名
(株)熊谷組
ネットワーク対応型無人化施工システムは建設機械通信機器をIP化することで柔軟かつ高度なシステム拡張を可能とし、操作室から建設機械群を長距離遠隔操作する技術。これを基幹に総合的なi-Constructionの活用により、全工程で人が立ち入らずに安全に緊急災害対応を行った(国土交通省九州地方整備局阿蘇大橋地区斜面防災対策工事)。

平田 隆祥氏 他1名
(株)大林組
常温環境で硬化し、普通コンクリートの7.5倍以上の圧縮強度を達成、構造物のスリム化に成功。型枠に流し込むだけで部材を製造でき、生産性を向上し、CO2の低減に寄与。耐久性が著しく高く、土木学会から耐久性100年の評価を受け、構造物の長寿命化を実現。

野崎 信雄氏 他1名
鹿島建設(株)
国宝かつ世界遺産である姫路城大天守保存修理を、形状・材料・位置・工法(仕様)不変の理念の基、「永続的な耐久性向上」を目指し実施した。
①瓦葺土を下桟木組併用として瓦の固定度強化、屋根重量低減により耐震性向上、②瓦下漏水部は瓦下を銅版葺きとし腐朽防止、③瓦・漆喰に吸水防止剤を塗布し耐候性向上と汚染低減、④柱梁取合いの耐震補強をフラットバー木楔カシメとして縁切り通気性を確保し木部腐食防止を図った。

淺田 朋憲氏
(株)創建
大工として国の重要文化財や登録有形文化財等の保存・修復工事に携わっている。
伊賀八幡宮(愛知県)修復工事では、本殿他5棟の工事を行い、拝殿鬼板の復元において、左右対称となるよう現存する部分から型板を取り、老朽化した右半分を新たに彫刻し復元するなど、卓越した技能を有する。
平成17年から愛知県の技能検定委員を務めており、現在までに約3,000名の技能審査を行うとともに、大工育成塾の指導棟梁を務めるなど、後進の育成にも取り組んでいる。

伊賀八幡宮 拝殿(国の重要文化財)
北谷 𠮷弘氏
(株)植木組
左官工として国の重要文化財の保存・修復工事に携わっている。
建築時の資料が少ない中、複雑な形状の歴史的建造物を当時の材料・工法で復元。特に野村碧雲荘(京都府)修復工事では壁に鉄粉を入れ、蛍のように見せる「蛍壁」を当時の色で再現するなど、高度な技能を発揮した。
「なにわの名工」と称される大阪府知事表彰を受賞し、大阪府技能検定委員を務めるなど後進の育成にも取り組んでいる。

前原 剛氏
(有)前原瓦店
屋根工事の瓦葺きに携わり、国の重要文化財であった鑁阿寺(栃木県)本堂・経堂の瓦葺き替え工事で職長を務めた。(本堂は後に国宝となる)
葺き替えに当たっては出来る限り古瓦を用いるため、瓦の年代・型による色の違いを活かした配置としたほか、のし瓦の曲線出しなど高度な技能を発揮した。
職業訓練指導員免許を取得し、技能講習会の講師を務め、技能グランプリ出場選手を指導するなど、瓦の美しい仕上がりを活かした瓦葺きの技能の次世代への継承に尽力している。

倉迫 貴裕氏
(株)装匠
江戸時代から続く袋貼の技法につき高い技能を有し、高級壁紙を用いた施工を数多く行っている。金銀箔、織物、和紙壁紙の施工を数多く手掛けている。
また、デジタルプリント絵画、アクリル絵画を壁面に貼る施工を考案するなど、壁装の新たな可能性を探究し、全国各地で壁紙施工の実演を行い、施工技術の高度化と普及に取り組んでいる。

園部 邦彦氏
新潟原動機(株)
世界的に船舶の高速化が進み、大型高速ディーゼルエンジンの需要が高まる中、新たな過給機システムの開発により全負荷域において高い出力性能を備えた、我が国初の純国産大型高速ディーゼルエンジンを開発。
低環境負荷で経済性にも優れ、シンプル構造によりメンテナンスが容易、純国産であることで迅速なアフターサービスを実現。平成28年度末までに167台を納入。
開発により得られた成果は、他の中高速エンジンにも応用・展開されており、我が国造船技術の向上に貢献。

久保田 清氏
(株)オオトリ(室内装飾工)
内装仕上げ全般に精通し、特に表装に関する技能に卓越している。従来の湿式工法から乾式工法へと技能を進化させ、湿式では不可能であった幾多の高品質な要求に応えてきた。
高い指導力を発揮し、氏の所属する事業所における技能士の割合は県内随一である。
また、技能グランプリ全国大会では、金賞受賞者2名を輩出するなど、後進の育成に尽力し、業界の発展に寄与した。

荒井 寛子氏
シチズン時計マニュファクチャリング(株)
飯田殿岡工場(機械時計組立・調整工/電気時計組立・調整工)
腕時計の組立に永年従事し、高級機械式時計を代表に、高級腕時計の高精度・高性能を実現する。内装(ムーブメント)組立から外装組立の全てを行うことができる技能を有している。
また、時計組立の技能継承にも積極的に取り組んでおり、社内での後進の指導を始めとして、信州・匠の時計修理士資格の講師や、子供の時計組立体験指導を通じて、時計業界の技能の継承、発展に大きく寄与している。

加藤 靜子氏
藤工房和裁学院(和服仕立職)
和服仕立に長年従事し、多数の柄の大島紬の六角形の小片を割り縫いの技法で接ぎ合せた布を柄として、無地の大島紬の布地に嵌め込んで模様とする卓越した技能を有し、難易度の高い曲線や角の接ぎ合わせの出来栄えや柄行が高く評価されている。
また「ものづくりマイスター」として、小中高校生の「ものづくり体験」の講師として積極的に活動している。

川﨑 幸子氏
博多人形工房川﨑(人形製造工)
長きにわたり博多人形の制作に従事し、常に新しい技法を研究。数種類の粘土を混ぜ合わせることにより、独特の質感を生み出すなど優れた彩色技能を有する。
また、日本の古代や万葉の女性を題材に、女性の内面の強さや激しさを表現する独自の作風を確立し、博多人形の普及・発展に貢献している。

岡野 祥磨氏 佐藤 健太氏
トヨタ紡織(株)
第44回技能五輪国際大会(アラブ首長国連邦)のメカトロニクス職種において金メダルを受賞。
本職種は、2人がチームとなって、実際の生産現場を模したモデルを使って競技し、設計、組立て、トラブルシューティング等の正確さや速さなどを競う職種。
※日本は、3大会ぶり4回目の金メダル

清水 義晃氏
(株)協和エクシオ
第44回技能五輪国際大会(アラブ首長国連邦)の情報ネットワーク施工職種において金メダルを受賞。
本職種は、LANケーブルや光ファイバーケーブルの配線の正確さや速さなどを競う職種。
※日本は、競技が新設された第38回大会以降7連覇

麻生 知宏氏 上野 祐平氏 最上 拓氏
(株)デンソー
第44回技能五輪国際大会(アラブ首長国連邦)の製造チームチャレンジにおいて金メダルを受賞。
本職種は、3人がチームとなって、機械による部品加工、電子制御基板の製作、組み付け、プログラミングを行い、製品の完成度などを競う職種。
※日本は、2大会連続3回目の金メダル

髙橋 真也氏
愛媛県県立東予高等学校卒業
現(株)シマブンコーポレーション勤務
ものづくりの全国的な競技大会の旋盤部門において、同一年度に2大会制覇を成し遂げた。大会では100分の1ミリメートルの寸法精度、仕上げ面粗さ、ねじのはめあい、作品の完成度など、精密で高度な技術が求められる。受賞者は高校3年間、機械部の部長としてリーダーシップを発揮するとともに人一倍の努力と練習を積み重ね、旋盤作業における幅広い知識と高度な技術・技能、忍耐力、創造力等を身に付けており、将来のものづくりを担う人材として今後の活躍が大いに期待される。

冨平 準喜氏
東京工業高等専門学校
選手目線の360度映像、VR(バーチャルリアリティ)及びモーションシミュレータを使用して、スポーツ現場の臨場感あふれる体験を実現するスポーツ観戦システムを開発。リアルタイムにアスリートとシンクロすることができるスポーツ観戦システムというアイデアが評価され、全国高等専門学校第27回プログラミングコンテスト(平成28年度)課題部門において、文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞。

吉田 晴美氏
(有)吉田美術
映画における大道具製作者として、高度な技術と豊かな経験に裏打ちされた仕事を手がけ、日本映画の表現技術の根幹を支えてきた。
黒澤明監督をはじめとする多くの映画監督の信頼も厚く、東宝撮影所の撮影現場において多くの大道具製作に携わり、高い評価を得ている。80歳を超える今もなお、多くの後進を育てながら映画製作の第一線で活躍するとともに、映画大道具製作で培った技術を活かし、博物館や文化施設の展示製作にも携わるなど、幅広い活躍を続けている。
平成27年度文化庁映画賞映画功労部門被表彰者。

川嶋 一雄氏
特定非営利活動法人京都文化財建造物研究所
建造物修理技術者として、高度な技術と知識に基づく修理工事を手がけ、多くの国宝・重要文化財の修復に尽力してきた。
昭和24年に京都府教育委員会事務局に採用され、建造物修理の道を歩み始め、数多くの修理工事に従事する中で、技術の錬磨・向上に努め実績を重ねた。特に国宝東福寺三門の解体修理は、大規模かつ困難な工事であり、それまでに培った技術が遺憾なく発揮された。退職後も特定非営利活動法人を立ち上げて、後進の育成に当たるとともに、修理現場の第一線で活躍を続け現在に至る。
平成26年度文化庁長官表彰被表彰者。
