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6月の鉱工業生産は、前月比2.3%上昇に「回復」で、稼働率も3か月ぶりに前月比プラス。輸出向け出荷も前月比3.6%上昇となり、国内向け出荷とともに6月の出荷に対し押し上げ要因となった。
2016年8月17日

1.生産、稼働率

平成28年6月(確報)の鉱工業生産は、指数値で96.7、前月比2.3%上昇(5月確報94.7、前月比マイナス2.3%)、前年同月比はマイナス1.5%低下でした。

この結果、平成28年第2四半期は指数値96.3、前期比0.2%上昇となり、2期連続の鉱工業生産前期比低下という自体は避けられました。

6月の鉱工業生産の業種別の動きをみると、全16業種のうち14業種が生産上昇となっており、特に、化学工業、輸送機械工業が生産全体を押し上げていました。低下業種は、石油・石炭製品工業と情報通信機械工業の2業種でした。

化学工業については、5月が前月比マイナス6.1%低下でしたので、定期修理明け、化粧品類の秋物新製品の生産増などの要因もありますが反動増という面が大きいと思われます。他方、輸送機械工業は2か月連続の生産上昇であり、特に普通乗用車の生産が回復しており、2、4月の部品生産の一時的な停止からの「回復」、そこからの「ばん回」が生じているようです。

また、6月の製造工業稼働率は、指数値で95.6、前月比1.5%上昇で3か月ぶりの前月比上昇です。鉱工業生産が大きく上昇しているので、それに見合う形で稼働率指数も上昇しています。機械工業の稼働率は、前年水準を下回る状態が続いていますが、設備削減の進んでいる非機械工業では、6月稼働率が前月比でも前年同月比もプラスとなり、安定的な推移となっています。

6月の鉱工業生産を振り返ると、2か月ぶりの前月比上昇で、5月の低下を完全に払拭するまでは行きませんでしたが、第2四半期を前期比プラスにする位には、生産が回復しました。前年同月比のマイナスが3か月続いていますし、6月の指数値も平成27年平均に比べるとまだまだ低い水準ではありますが、輸送機械工業のばん回生産が始まりつつあり、資本財生産も均してみれば上向き方向になっているなど、方向感としては良い部分も出てきていました。

2.出荷(輸出向け、国内向け)

平成28年6月(確報)の鉱工業出荷は、指数値で95.1、前月比1.7%上昇(5月確報93.5、前月比マイナス2.6%)、前年同月比マイナス1.7%低下でした。この結果、平成28年第2四半期の鉱工業出荷は指数値94.9、前期比0.2%上昇と2期ぶりの前期比上昇となりました。

6月の国内向け出荷は前月比1.4%上昇、輸出向け出荷も前月比3.6%上昇と、ともに2か月ぶりの上昇です。国内/輸出向け出荷のウェイト(構成比)を加味して、どちらが出荷全体の上昇に影響(寄与)したかを計算すれば、やはり国内向け出荷の上昇によって、6月の鉱工業出荷は前月比上昇となりました。

とはいえ、輸出向け出荷の前月比上昇幅は、今年1月の大きな5%を超える上昇幅に次ぐ大きさでした。しかし、5月の前月比低下幅が大きく、第2四半期としては前期比マイナスとなりました。

第2四半期の国内向け出荷は、2期ぶりに前期比0.5%上昇でした。今年の第1四半期は、国内向け出荷の大幅低下で出荷全体が押し下げられましたが、第2四半期は、国内向け出荷が出荷全体を引っ張った形になります。

国内向け出荷の財別分類をみると、6月の資本財の国内向け出荷は前月比0.3%上昇と2か月連続前月比上昇ということもあり、他の財分類に比べると小幅な伸びとなっています。上昇への寄与レベルでは、最終需要財が生産財を上回っていますが、生産財も2か月ぶりに前月比1.3%上昇となっています。

また、輸出向け出荷の財別分類をみると、やはり生産財の寄与が圧倒的に大きくなっています。勿論、輸出向け出荷も前月比プラスですので、最終需要財も前月比プラスではありますが、資本財の輸出向け出荷は、2か月連続の前月比マイナスでした。ただ、この低下には船舶の輸出低下が響いており、輸送機械を除いた設備系の資本財の輸出向け出荷は前月比0.9%上昇で、2か月ぶりの上昇となっていました。

さらに、輸出向け出荷の仕向け先別の動きをみると、米国向け出荷が前月比10.4%上昇となり、5月の大幅な低下を回復しています。中国向け出荷も前月比2.9%上昇と、2か月ぶりに上昇となっています。ウェイトの大きい中国向けでは、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業が前月比上昇寄与の大きい業種でした。米国向けでは、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、電気機械工業が寄与の大きい業種でした。

やはり、中国向け、米国向けともに設備系の業種の出荷が好調ですが、中国向けでは電子部品・デバイス工業が回復しており、米国向けでは輸送機械工業の堅調さが目立ちます。

6月の鉱工業出荷は、2か月ぶりに前月比上昇となりました。寄与という面では、国内向け出荷の方が大きいのですが、輸出向け出荷の上昇幅の大きさが目を引き、5月とは正反対の結果でした。輸出向け出荷では、米国向け、中国向けといった、上位仕向け先への輸出が大きく上昇しており、5月の大幅低下からの回復の原動力となっていました。

また、資本財の国内向け出荷は2か月連続の前月比上昇であり、輸送機械を除く資本財の輸出向け出荷も、中国向け、米国向けを中心に前月比上昇となっており、先月からの国内向けの資本財出荷とともに、6月は資本財の輸出向け出荷も堅調な動きとなりました。

3.在庫、在庫率、在庫循環

平成28年6月(確報)の在庫指数は113.9、前月比横ばいで、在庫率指数は117.8、前月比マイナス1.5%低下でした。出荷も上昇し在庫率は低下しましたが、生産が堅調だったこともあり、在庫水準は下がりませんでした。主に、2か月連続上昇の鉄鋼業や、「ばん回」生産に入っている輸送機械工業では在庫が上昇したものの、出荷の伸びの大きかった「はん用・生産用・業務用機械工業」などの在庫低下によって、全体としては前月比横ばいとなっています。

今年第2四半期の在庫、在庫率は、在庫指数が前期末比マイナス1.3%低下、前年同期末比横ばいと、あまり水準が高くならないようにコントロールされているようですが、在庫率は前期比0.2%上昇(5期連続)、前年同期比2.4%上昇(9期連続)と、出荷のレベルが今一つのため在庫率水準が下がらない状態が続いています。

四半期ごとの生産と在庫の前年同期比で見る「在庫循環図」においても、今年の第1四半期に一時的に「逆走」し、「(意図せざる)在庫積み上がり局面」に移行しかかりましたが、6月末の段階では、在庫調整が進捗し、在庫調整局面の「半ば」にまで局面が進んでいます。このまま、一気に在庫調整が進むことを期待したいところです。

4.生産能力と資本財出荷

平成28年6月の生産能力指数は、5月に続いて、前月比横ばいとなりました。前年水準との比較でも昨年8月以降11か月連続で、前年同月比マイナスとなっており、低下基調が続いています。

指数値94.6も、現在の基準の指数では平成20年1月以降の最低値で、ほぼ30年ぶりの低水準となっています。

6月の生産能力指数を機械工業と非機械工業(製造工業から機械工業を除いた分類)の動きでみると、非機械工業では、93か月連続で前年水準を下回る状態が続いており、余剰設備の削減が続いています。ただ、5月、6月と前月比では横ばいが続いており、例えば、化学工業では、構造改善のゴールが見えてきたのか、久方ぶりに4月に生産能力が前月比で増加したのち、6月にも生産能力を増加させているように、「底」が見えてきているのかもしれません。

他方、機械工業では、一昨年後半から昨年前半にかけて生産能力を増加させている時期もありましたが、今年に入ってからは1月から6か月連続で前年水準割れとなっており、低下基調に変わっています。

過去の生産能力指数と稼働率指数の散布図(循環図)を見ると、生産能力指数が継続的な上昇局面に転換したのは、稼働率指数が110前後になったタイミングでしたが6月の稼働率指数は95.6と、前月比上昇とはいえ、転換点の稼働率指数にはまだまだ及ばない状況でした。

生産能力の上昇の方向感は見えませんが、輸送機械を除いた設備系の資本財の国内向け出荷は、今年の3月以降4か月連続で前月比上昇が続いており、堅調な推移です。指数値も112.0と、今年1月に次ぐ高いレベルであり、この4四半期の指数値の最高値が111.5であることと比較すると、この6月の輸送機械を除く資本財の国内向け出荷の水準は近時の水準としては多少高めとなっています。

7月実施の製造工業予想調査の結果では、輸送機械を除く資本財の生産見込みについては2か月連続の増産見込みとなっており、特に8月は前年水準を上回る生産計画となっていることなどを踏まえると、資本財出荷の勢いには期待して良いのではないかと思います。

ただ、これらの資本財も、そのほとんどが更新投資向けと思われ、なかなか生産能力指数の上昇には結実していかないのかもしれません。

5.個人サービスと消費財出荷

平成28年6月の第3次産業活動指数は、指数値103.9、前月比0.8%上昇と2か月ぶりに上昇となっています。このうち、対事業所サービスは前月比0.3%上昇、対個人サービスは前月比0.9%上昇と、対個人サービスの勢いがあるように見えます。

しかし、対個人サービスは、4か月ぶりの前月比上昇ですが、四半期でみると、サービス全体や対事業所サービスは、今年の第2四半期に前期比プラスとなっていますが、対個人サービスは、前期比マイナス0.8%低下となっており、対個人サービスの不調さが見えてきます。投資向けサービスが、この第2四半期に前期比5.2%上昇と急上昇していることと好対照となっています。

特に、小売業は今年の2四半期は連続して前期比低下であり、昨年第4四半期も横ばいですので、3四半期間前期比プラスがない状態で、個人の財需要の勢いが弱いことは明らかです(同時に、サービス需要も今一つでしたが、6月には娯楽業では少し上向きの方向が出てきていました)。

6月の消費財の国内向け出荷をみると、耐久消費財は前月比2.3%上昇、非耐久消費財は前月比1.2%上昇と、一見すると好調に見えます。確かに、化粧品や食料品・たばこ工業(出荷前期比2.1%上昇、2期ぶり)の出荷が好調なこともあり、非耐久消費財の国内向け出荷は前期比0.9%上昇と2期ぶりに前期比上昇でした。

しかし、乗用車や家電製品などの耐久消費財の国内向け出荷は前期比0.9%低下と2期連続の低下となっており、耐久消費財の不調が目立つ結果となっています。

特に、耐久消費財の6月の指数値は78.6と、80台を割り込んでおり、つまり、基準時点である平成22年(2010年)の出荷水準の8割を下回っているということです。国内向け出荷全体の指数値は94.5と、基準時点の9割以上の水準を維持しており、輸送機械を除く資本財では国内向け出荷指数が112.0と、基準時点から1割増しの出荷となっていることと比べて、耐久消費財の国内向け出荷の水準が、特に低いことが分かります。

6月の結果だけをみると、耐久消費財の国内向け出荷が前月比プラスとなっているのですが、四半期単位の少し長いスパンでみると、これまでのところ、水準だけではなくて方向感も今一つであることが分かります。個人サービスの娯楽業において少し上向きの動きが出ているように、耐久消費財の6月のプラスが、是非とも回復への第一歩となってくれることを期待したいところです。

6.7月以降の生産見込み

7月に実施した製造工業予測調査の結果では、7月の前月比見込みは2.4%上昇(補正なし)、8月の前月比予測2.3%上昇(補正なし)という結果になっています。7月の前月比見込みに含まれる傾向的な誤差を補正すると、前月比0.9%程度となります。今年の7月の生産計画は、先月段階の計画値から上方修正されています。生産計画が上方修正されるのは2年5か月ぶりのことで、7月の生産計画は、「強気」のものとなっていると言って良いと思います。

7月の生産上昇見込みには、化学工業が大きく寄与していますが、8月は減産の見込みとなっており、7月、8月トータルで見ると、情報通信機械工業、「はん用・生産用・業務用機械工業」、電子部品・デバイス工業といった機械工業が、8月に生産を大きく増やすことで、大きな伸びを見せるという計画になっています。

輸送機械工業では、乗用車の生産が本格的に回復することによって、7月の前月比2.2%上昇を見込んでいますが、8月は前月比マイナス2.9%低下と若干生産を下げる計画となっています。ただ、この8月の生産計画水準でも昨年8月の生産実績から、1割以上も多い生産量となっていますので、水準が低いということではありません。

また、需要先用途別の分類(財別分類)では、資本財、建設財、生産財といった企業が需要先となる財の生産計画は、向こう2か月前月比上昇という計画です。

家計が需要先となる消費財については、耐久消費財、非耐久消費財ともに、7月上昇、8月低下という見込みになっており、特に非耐久消費財は8月の前月比マイナス14.3%低下と大幅な生産低下見込みです。非耐久消費財の8月の生産計画量は、昨年10月以来10か月ぶりに前年実績を割り込むものとなっています。耐久消費財の8月の生産計画は前月比水準を大きく上回るもの(今年の1月実績並みの生産計画)ではありますが、昨年の8月の耐久消費財生産が、昨年の最低レベルであったことに鑑みると、それ程の高レベルの生産水準とも言えません。

国内製造工業の生産の先行きにおいても、資本財好調、消費財不調という構造が続きそうです。

◎能力・稼働率指数 結果概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/b2010_201606kj.html

◎出荷内訳表(国内/輸出向け出荷) 結果概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result/b2010_201606j.html

◎第3次産業活動指数 結果概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/html/b2010_201606j.html

◎鉱工業活動図表集
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-201606k.html

◎サービス産業活動 図表集
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/result/reference/slide/result-sanzi-sanko-201606.html

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