10月の鉱工業生産確報は前月比横ばいで、3か月連続でマイナスなし。電子部品・デバイス工業の生産や稼働率上昇がけん引役。同工業は、11月、12月も増産見込み。10月の出荷は、国内向けが力強い推移で、前月比2.0%上昇と2か月連続上昇。
2016年12月16日
1.生産、生産能力、稼働率
平成28年10月(確報)の鉱工業生産は、指数値で98.4、前月比横ばい(9月確報98.4、前月比0.6%)となりました。今年1月の季節調整済指数値を超え、今年最も高い指数値となった9月の生産指数の水準が維持されています。10月実施の予測調査結果の補正計算ではマイナス0.1%と微減も想定されていましたが、横ばいということで、ほぼ予測調査が示す通りの生産になったものと思われます。
生産増加の勢いはそれ程力強い訳ではありませんが、これで3か月連続で前月比マイナスなしとなります(これは、平成25年9月から翌年1月まで5か月連続上昇以来)。指数値についても、今年第3四半期の生産指数が97.6ですので、9、10月と比較的高い指数レベルが続いていることになります。
10月の鉱工業生産の業種別の動きをみると、全16業種のうち、6業種が生産前月比上昇となっており、電子部品・デバイス工業が前月比4.6%上昇と寄与が大きくなっています。寄与は3分の1近くに落ちますが、金属製品工業も上昇寄与となっています。
10月は10業種が前月比低下となりました。低下業種としては、はん用・生産用・業務用機械工業の前月比マイナス1.6%低下、電気機械工業の前月比マイナス2.9%の低下寄与が大きくなっています。また、輸送機械工業が前月比マイナス0.6%低下と2か月ぶりに前月比低下となりました。乗用車の生産は前月比2.3%上昇とプラスが維持されていますが、航空機用部品や船舶関係、トラックの生産低下によって、輸送機械工業全体としては前月比低下でした。
10月の生産能力指数は、前月比横ばいですが、前年同月比は引き続き15か月連続のマイナスが続いています。生産上昇業種である電子部品・デバイス工業の生産能力は前月比0.6%上昇で、3か月連続前月比上昇です。前年同月比もプラスが続いています。
前月比低下方向には、非鉄金属製品工業、石油・石炭製品工業、鉄鋼業といった素材系の業種が低下寄与を見せていました。
10月の稼働率指数は、指数値98.1、前月比1.4%上昇と2か月ぶりの上昇となりました。生産上昇業種である電子部品・デバイス工業の稼働率が大きく上昇し、全体の稼働率を引き上げています。それに次ぐのは、輸送機械工業やはん用・生産用・業務用機械工業ですが、その寄与度合いは、電子部品・デバイス工業に比べると非常に小さくなっています。
10月の生産、生産能力・稼働率の結果をみると、今年の不調が嘘であるかのように、電子部品・デバイス工業の生産に勢いが見られます。生産水準は、まだ前年並みには戻れていませんが、生産能力を増強しつつも、稼働率が回復していることから、今後の生産増加も期待していきたいと思います(生産予測調査では、11月、12月と増産の見込み)。
2.出荷(国内向け、輸出向け)
平成28年10月(確報)の鉱工業出荷は、指数値で98.3、前月比2.0%上昇(9月確報96.4、前月比1.8%上昇)と2か月連続の前月比上昇でした。この指数値は、今年1月の96.8を大きく上回るレベルで、平成27年10月の98.6に次ぐ高いレベルです。国内向け出荷は前月比3.0%上昇と2か月連続の上昇、輸出向け出荷は前月比マイナス1.6%低下と2か月ぶりの低下でした。
10月の国内向け出荷指数は98.8と、今年の指数値としては、一頭地抜けた高い指数値です。今年の四半期の指数値は、第1四半期に93.7、第2四半期に94.2、第3四半期に95.3と順当に上昇してきましたが、それでも一昨年、平成26年の指数値98.1はともかく、昨年、平成27年の96.2にも及んでいませんでした。しかし、10月は98.8と大きく上昇し、一昨年平均のレベルも超える水準となってきました。
今年10か月間においても、国内向け出荷指数が前月比マイナスとなったのは、2月、5月、8月の3回で、これらには工場事故、自然災害の影響もありました。その3回以外の7回は前月比上昇となっており、今年の国内向け出荷は、年初から上昇基調となっていたと言えるでしょう。
10月の国内向け出荷の業種別の動きをみると、14業種中9業種が前月比上昇でした。上昇寄与が大きかったのは、輸送機械工業(前月比2.9%上昇)、電子部品・デバイス工業(前月比9.3%上昇)鉄鋼業(前月比10.2%上昇)、そしてはん用・生産用・業務用機械工業(前月比4.9%上昇)の4業種です。
輸送機械工業の指数値も104.5と、ここ1、2年の中では、相当高い水準となっています(平成26年の指数値100.4、平成27年の指数値96.7)。電子部品・デバイス工業の指数値も122.1と、130台を超えていた昨年の第3四半期や今年の1月と比べるとまだ水準的には今一つですが、今年の大部分の国内向け出荷指数は110台より下での推移でしたので、やはり高めの指数水準です。鉄鋼業やはん用・生産用・業務用機械工業の指数値も、2番目の指数値に大分差をつけた今年1番の指数値となっています。
低下業種の低下寄与も小さく、10月の鉱工業の国内向け出荷は全体的にかなり良いものとなりました。
国内向け出荷の需要先別用途別分類(財別分類)では、生産財の国内向け出荷は前月比2.8%上昇、最終需要財は前月比3.0%上昇で、寄与的には、最終需要財の寄与が若干高くなっています。
最終需要財の中では、非耐久消費財を除く各財の前月比はプラスでしたが、特に寄与が大きかったのは資本財(前月比3.0%上昇)と耐久消費財(前月比5.7%上昇)でした。資本財では、はん用・生産用・業務用機械工業の水管ボイラやフラットパネル・ディスプレイ製造装置、輸送機械工業の乗用車等の出荷増の影響が、耐久消費財では、輸送機械工業の乗用車、情報通信機械工業のカーナビ、薄型テレビ等の出荷増の影響が大きくなっています。
生産財、資本財、耐久消費財の国内向け出荷指数は、国内向け出荷全体と同様に、今年の最も高い指数値で、一昨年、昨年平均の指数値を超えて来ており、これらの財の国内向け出荷の水準が高くなっています。
前月比低下となった10月の輸出向け出荷指数は97.7でした。今年の四半期の指数値は、第1四半期に97.8、第2四半期に97.1、第3四半期に97.5なので、10月の輸出向け出荷は、今年の水準としては平均的なものなのではないかと思います。今年10か月間においても、輸出向け出荷指数が前月比プラスとなったのは5回、マイナスも5回で、上がれば下がるという状態が続いています。その結果、指数水準もあまり変化のない状態となっているようです。
10月の輸出向け出荷の業種別の動きをみると、14業種中9業種が前月比低下でした。特に、低下寄与が大きかったのは、はん用・生産用・業務用機械工業(前月比マイナス3.1%低下)でした。設備類というよりは、ボイラ部品、プラスチック用金型、軸受といった部品的なものの輸出向け出荷の低下寄与が大きくなっています。この業種以外では、石油・石炭製品工業やプラスチック製品工業の低下寄与が大きかったのですが、その寄与ははん用・生産用・業務用機械工業の半分程度でした。
他方、国内向け出荷が好調だった輸送機械工業と鉄鋼業は、10月の輸出向け出荷も前月比上昇でした。特に、輸送機械工業の輸出向け出荷は、これで3か月連続の上昇であり、好調が持続しています。
輸出向け出荷の需要先別用途別分類(財別分類)では、生産財の輸出向け出荷は前月比マイナス2.4%低下、最終需要財は前月比マイナス0.2%低下で、寄与的には、圧倒的に生産財の低下寄与が大きくなっています。
最終需要財の中では、企業向けの投資財と家計向けの消費財で全く逆の結果となっており、投資財の輸出向け出荷が前月比マイナス5.3%低下、消費財が前月比7.3%上昇でした。また、投資財では資本財の、消費財では耐久消費財の変動寄与が大きくなっています。資本財の輸出向け出荷は、輸送機械工業の船舶輸出の低下による部分が大きく、耐久消費財については、同じく輸送機械工業の乗用車や二輪自動車の輸出上昇による部分が大きくなっています。
年初には指数値で104を超えていた資本財の輸出向け出荷指数は、この10月には94.2と今年7月以来の低水準となりました。他方、耐久消費財の輸出向け出荷指数は、10月に今年で一番高い指数値となりました。輸出向け出荷における主役が、資本財から耐久消費財に交代していくことを示唆する、各指数の推移となっています。
10月の鉱工業出荷には、今年で一番の勢いがあったということが言えるでしょう。主役は、国内向け出荷でした。業種的には、国内向けも輸出向けも輸送機械工業の寄与が大きくなっています(鉱工業出荷全体では、鉄鋼業の出荷上昇寄与が最も大きかった)。
輸出向け出荷に若干かげりが出てきていますが資本財の出荷はまだ堅調な推移ですし、国内向け/輸出向け出荷ともに、耐久消費財の出荷の回復が目立っています(ともに2か月連続の前月比上昇)。
- 能力・稼働率指数、鉱工業指数確報 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/b2010_201610kj.html
- 出荷内訳表(国内/輸出向け出荷) 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result/b2010_201610j.html
- 鉱工業活動 図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-201610k.html
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