耐久消費財、非耐久消費財のみならず、生活必需分野でも数量が押し上げ要因に。個人消費で少し購入量に上向きの動きが出ている。 2018年3月9日
- 飲食料品小売業と燃料小売業では、価格だけでなく数量も押し上げ要因に。
- 機械器具小売業、自動車小売業は、ともに数量要因が押し上げ
- 化粧品・医薬品、織物・衣服・身の回り品の小売業は、ともに数量が押し上げ要因
小売販売額の変動は、価格変動(価格要因)と販売された数量の変動(数量要因)のどちらによるものだったのか、峻別してみることも必要です。今回は、昨年10-12月期の小売販売額の変動要因について、業種ごとにその動向を確認していきたいと思います。
飲食料品小売業と燃料小売業では、価格だけでなく数量も押し上げ要因に。
まずは、これまで主に価格要因で変動することが多かった飲食料品小売業、燃料小売業の動向をみてみます。
平成29年10-12月期の飲食料品小売業は、前年同期比0.3%上昇、燃料小売業は同10.0%上昇と、両業種ともに前年同期比プラスとなっています。
燃料小売業は平成28年まで原油価格の低迷が大きなマイナス要因になっていましたが、平成29年に入ってからは価格要因が大きくプラスに転じ、販売額を伸ばしています。10-12月期も、販売額を押し上げたのは主にこの価格要因ですが、数量要因もプラスに転じました。
飲食料品小売業は、平成28年第4四半期に、天候不順による野菜等の値上がりがあって、価格要因によって大きく上昇しましたが、平成29年に入ってからは、価格要因の上昇寄与が安定していた印象です。この冬も、特に平成29年11月以降に野菜等の値上がりが起きていますが、10-12月でならして、かつ水準が高かった前年同期に比してみれば、大きなプラス要因とはならなかったようです。他方で、数量要因は10四半期、実に2年半ぶりにプラスに転じました。
これら2業種は必需品的性格が強いと考えられ、販売額の変動は主に価格要因により、数量要因では変動しづらい傾向があります。実際、燃料小売業では数量要因の寄与があまり見られません。これに対して、飲食料品小売業では、この2年半、数量要因が明瞭にマイナス方向へと作用しているという違いがありました。
平成26年全国消費実態調査をみると、若年単身世帯では飲食費支出のうち、外食の比率が最も高いというデータもあります。飲食料品小売業で、2年半に渡って数量要因がマイナスに寄与してきたのは、価格上昇による買い控えとともに、外食比率が高まり、食材を買う行動自体が縮小傾向にあるという要因の影響も考えられます。
だとすると、平成29年10-12月期に僅かに数量要因がプラスに転じたことは、価格が前年同期との比較で安定していることに加え、食材購買行動の縮小傾向が収束する兆しなのかもしれません。

機械器具小売業、自動車小売業は、ともに数量要因が押し上げ
次に、耐久消費財の購入に関連する機械器具小売業、自動車小売業の動向をみてみます。
平成29年10-12月期の機械器具小売業は、前年同期比5.6%上昇、自動車小売業は同5.2%上昇と、両業種ともに数量要因が販売額の押し上げにつながっています。
ただし、家電製品を含む機械器具小売業では、価格要因がマイナス方向に作用していますが、自動車小売業は、価格要因がプラス方向に作用している点が、業種間の違いとして指摘できます。
自動車小売業の過去の動きを見ても、平成26年4月の消費税率引上げ分で価格が前年同期比で上昇した時期を除き、価格要因は目立つ寄与を見せていませんでしたが、平成29年4-6月期以降、価格要因がわずかではありますが、上昇寄与するようになっています。
いずれにせよ、耐久消費財の分野では、平成28年後半からその販売額を数量要因が押し上げているようです。

化粧品・医薬品、織物・衣服・身の回り品の小売業は、ともに数量が押し上げ要因
最後に、非耐久消費財のうち、身の回りの装飾などに関連する化粧品・医薬品小売業、織物・衣服・身の回り品小売業の動向をみてみます。
平成29年10-12月期の化粧品・医薬品小売業は、前年同期比2.6%上昇、織物・衣服・身の回り品小売業は同3.8%上昇と、両業種ともに数量要因が販売額を押し上げました。一方で、価格要因はマイナス寄与ですが、ほぼ無視できるレベルの寄与となっています。
平成29年の第1四半期まで、織物・衣服・身の回り品小売業は、約3年間にわたって価格要因がプラス要因で、数量要因はどちらかと言えばマイナス要因でしたが、平成29年の第2四半期以降、数量要因が大きくプラス方向に作用している点は要注目です。

ここまでみてきたように、耐久消費財、非耐久消費財の販売において、数量要因が前年同期比の上昇を生み出していたことが分かりました。しかも、相対的に数量要因が大きく寄与しているという状況ではなく、上昇寄与のほぼ全てが数量要因となっています。
また、これまで2年半に渡って数量要因がマイナスに寄与してきた飲食料品小売業についても、プラスに寄与するようになったことから、平成29年10-12月期の小売販売をみると、個人消費において、購入量が少し増加する動きが出ている、とまとめても良いのではないかと思います。
- ミニ経済分析「平成29年10-12月期小売販売を振り返る」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20180309minikeizai.html
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