海外事業活動基本調査


現地法人の経常利益は2年連続減益

 98年度の現地法人の経常利益は1兆7601億円(前年度比12.4%減)で2年連続の減少となった。このうち、製造業は7875億円(同30.0%減)で、94年度の水準に戻している。一方、非製造業は9726億円(同9.9%増)で、9年振りに製造業を上まわっている(第2-(3)-1-1図)。

現地法人経常利益額推移

 売上高経常利益率(注)の推移を国内法人と比べると、93年度までは国内法人の利益率の1/2以下の水準であったが、94年度以降は国内法人と同程度で推移し、98年度は1.6%となっている(第2-(3)-1-2図)。このうち、製造業は94、95年度と国内法人の利益率を上回ったが、96年度以降は国内法人を下回り、98年度には1%台の水準となっている(第2-(3)-1-3図)。

経常利益率推移(全産業)

経常利益率推移(製造業)

 海外経常利益比率(注)は、8.3%(前年度比1.1ポイント上昇)となった。このうち、製造業は94年度以降、8%前後で推移し、98年度は8.7%(同0.5ポイント上昇)となっている。非製造業は、国内法人の経常利益が減少し、現地法人が増加したため8.0%(同1.7ポイント上昇)となっている(第2-(3)-1-4~6図)。

経常利益・海外経常利益比率推移(全産業)

経常利益・海外経常利益比率推移(製造業)

経常利益・海外経常利益比率推移(非製造業)

(注)
・売上高経常利益率=経常利益/売上高×100
 (経常利益、売上高の両方に回答がある企業で計算)
・海外経常利益比率=現地法人経常利益/国内法人経常利益×100

アジアの収益が微増

 製造業現地法人の経常利益を地域別にみると、

  1.  欧米地域の経常利益は、92~93年度以降、増加を続けてきたが、98年度は、北米で3111億円(地域別シェア39.5%)、前年度比30.6%減、ヨーロッパで1314億円(同 16.7%)、同25.0%減となっており、北米で7年振り、ヨーロッパでは6年ぶりの減少となった(第2-(3)-2-1図)。
  2.  アジアは3087億円(同39.2%)、同2.5%増とわずかながら増加し、シェアは北米と同程度となった(第2-(3)-2-1図)。これは、97年に大幅な損失となったタイが98年度には利益を計上したことが主因と考えられる(第2-(3)-2-4図)。
  3.  売上高経常利益率(注)をみると、北米は1.7%(前年度比1.0ポイント低下)、ヨーロッパは1.3%(同1.0ポイント低下)で、アジアは2.4%(同0.4ポイント上昇)となっており、このうち、ASEAN4が1.5%、NIES3が4.4%などとなっている(第2-(3)-2-2図、第2ー(3)-3-1表)。

地域別経常利益額推移(製造業)

売上高経常利益率(製造業)

アジアの国別経常利益(製造業)

 非製造業現地法人の経常利益を地域別にみると、北米は6060億円(地域別シェア62.3%)、同60.2%増と高い伸びを示した。一方、ヨーロッパは1371億円(同14.1%)、同33.7%減、アジアは901億円(同9.3%)、同34.4%減となっている(第2-(3)-2-3図)。

現地法人経常利益額推移(非製造業)

(注)
・売上高経常利益率=経常利益/売上高×100
 (経常利益、売上高の両方に回答のある企業で計算)

輸送機械と化学が高収益保持

 製造業現地法人の経常利益を業種別にみると、

  1.  輸送機械は2981億円(前年度比14.7%減)で2年連続の減益、化学は2130億円(同17.3%減)で96年度水準に戻したものの、この2業種は依然高い収益を保持している。一方、年々収益を減少させている電気機械は▲1101億円(同217.0%減)と半導体、集積回路などの収益悪化により大幅な損失となった(第2-(3)-3-1図)。
  2.  主要業種の経常利益率(全地域)を国内法人と比較すると、繊維、鉄鋼、精密機械が国内法人を上回っているが、その他の業種では国内法人を下回っている(第2-(3)-3-1表)。
  3.  アジアの経常利益率をみると、精密機械の4.6%をはじめ、輸送機械、一般機械が3%以上の利益率になっており、食料品、化学、非鉄金属を除く業種で、国内法人を上まわっている。これは、NIES3で精密機械、輸送機械、一般機械が高い利益率を示したことなどによる。ASEAN4では食料品、繊維、鉄鋼がプラスに転じたが、化学、非鉄金属、輸送機械は依然マイナスとなっている(第2-(3)-3-1表)。

業種別形状利益額(製造業)

98年度の現地法人の収益状況(製造業)

 非製造業現地法人の経常利益を業種別にみると、

  1.  商業は6683億円(同17.4%増)と5年連続で増加しているが、鉱業は613億円(同52.3%減)、サービス業は1074億円(同12.9%減)と減少しており、建設業では6年連続の損失となっている(第2-(3)-3-2図)。
  2.  主要業種の経常利益率(全地域)を国内法人と比較すると、商業、鉱業では前年に引き続き国内法人を上まわっているが、マイナスとなった建設業は国内法人を大幅に下回っている(第2-(3)-3-2表)。

業種別経常利益(非製造業)

98年度の現地法人の収益状況(非製造業)

高い水準の現地法人自己資本利益率

 現地法人のROEは、全産業で6.1%、地域別にみると北米(7.7%)、アジア(5.2%)、ヨーロッパ(4.8%)と国内法人(▲0.2%)を上回っている(第2-(3)-4-1図)。

地域別ROE比較

地域・業種別ROE

 前年度と比較すると、国内法人が低下(3.2%→▲0.2%)を示す一方、現地法人は増加(全産業、全地域3.97%→6.1%)を示している(第2-(3)-4-3図)(注)。

ROE(製造業)

ROE(全産業)

(注)・ROE = 税引後利益 ÷ 自己資本
 なお、前回調査では、現地法人の自己資本を調査していないため、以下の算式で自己資本を推計した。
自己資本 = 内部留保残高 + 資本金×2
(内部留保残高 = 自己資本-資本金-資本準備金-新株式払込金、かつ資本準備金≦資本金であるため)
 よって、前年度の現地法人の株主資本利益率は実際より低く算出されている可能性がある。
 前回の調査では自己資本を調査項目としていなかった為、上記算出方法による推計値を採用していた。しかし、今回基本調査から自己資本を基本調査の調査項目とした為、97年度は推計自己資本利益率、98年度は実際の自己資本を使った実績自己資本利益率を表示する。
 よって単純比較は難しいので、比較する時は、注意を要する。

最終更新日:2007.10.1