経済産業省
文字サイズ変更

商業統計

トピックス

1.組替後の流通段階別取扱額の変化
- 更に進んだ流通経路の短縮化がみられる各種商品卸売業 -
 流通段階別の販売額は、個々の商店が流通段階のいずれかに格付けられて集計された値であり、複数の流通経路を持つ商店であってもその中のいずれか一つの流通経路、流通段階に格付けされている。ここでは個々の商店の取扱額を流通経路ごとに、流通段階毎に分割して集計(組替後)、現行の集計結果と比べその違いをみてみることとする。
 卸売業全体の流通段階別構成比をみると、「第1次卸」は現行の42.0%から組替後は40.6%へ、「第2次卸」は同22.5%から同26.0%へ、「その他の卸」は同35.6%から同33.4%へとなっている。また、現行で「第2次卸」の取扱額が大幅に減少した各種商品卸売業の構成比をみると、「第1次卸」は現行の84.3%から組替後は73.6%、「第2次卸」は同7.0%から同19.7%、「その他の卸」は同8.6%から同6.7%となっている。これは現行方式では、他の流通経路の販売額もすべて格付けされた流通経路に計上されており、個々の流通経路毎に分割されることにより、組替後の値の割合は現行と比べて大きくなったり、小さくなったりする。卸売業のなかでも変動の大きい各種商品卸売業をみると、「第1次卸」のうち「直取引卸」に格付けられた商店であっても、他の流通経路での取引も行っている商店が多い。
 次に、流通経路別に分割、集計した値で、6年、9年の構成比をみると、卸売業、各種商品小売業とも「第2次卸」が縮小し、「第1次卸」が拡大している。なかでも各種商品卸売業では「第2次卸」の割合が43.1%から19.7%と▲23.4ポイントの大幅な低下となっており、これは「第2次卸」のなかで最も多段階である「中間卸」が大幅にその割合を縮小させたことによる。また、「第1次卸」においても「生産業者から仕入れ産業用使用者へ販売」する「直取引卸」の割合が大幅に高まっている。このように大型総合商社の含まれる各種商品卸売業においては急激に流通経路の短縮化が進展しているといえる。
第10図 販売先別年間販売額の構成比
第10図 販売先別年間販売額の構成比
(現行)
(現行)
2.W/W比率でみた流通経路の短縮化
- 進む流通経路の短縮化 -
 平成9年の卸売業(法人)は商店数、年間販売額、従業者数とも前回(6年)に引き続き減少となった。これは、国際化の進展、社会や消費者の多様なニーズに適応するための流通の効率化が進められているなど流通産業全体における流通構造の変化や、また、バブル崩壊後の長引く景気低迷の影響などによると考えられる。
  卸売業販売先別年間販売額は、卸売業向け、小売業者向け、産業用使用者向け、国外(直接輸出)向けに分けられる。これらの構成比をみると、卸売業者向けの割合が最も多く9年では33.5%を占めている。産業用使用者向けは6年には小売業者向けの割合を下回ったものの、9年では29.6%と再び小売業者向けの割合を上回っている。小売業者向けは6年には販売額の3割近くまで拡大したものの、9年はやや縮小し、その割合は25.6%となっている。また、国外(輸出)向けも5.8%と構成比が拡大している。
  このように、年間販売額は多段階の卸売業者向けが縮小傾向にあるのに対し、産業使用者向け、小売業者向けなどは総じて拡大の傾向がみられる。
第11図 卸売業の販売先別年間販売額の推移(構成比)
第11図 卸売業の販売先別年間販売額の推移(構成比)
 次に、卸売業者と卸売業者以外への流通関係をW/W比率でみてみる。W/W比率とは、卸売業全体の販売額から「本支店間移動」を除いた値を「小売業者向け、産業用使用者向け、国外向け及び消費者向けの合計値」、いわゆる卸売業者向け以外の販売額で除した値であり、この値が1に近いほど卸売業者間の取引回数が少ないといえる。
 卸売商店全体のW/W比率は総じて低下傾向がみられ、なかでも平成9年の1.54倍は昭和43年の本統計編開始以降最も低い水準となっている。
  以下、財別、業種別にW/W比率をみていく。
第12図 卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
第12図 卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
  1. (1) 生産財卸売業
     生産財卸売業のW/W比率は、石油ショック以降の昭和51年、54年は1.9倍台の高い水準にあったが、60年は1.6倍台まで低下となった。63年、平成3年と上昇し、6年、9年は低下している。9年は「国外向け」が増加、「小売業者向け」、「産業用使用者向け」が減少となったが、「卸売業者向け」以外の構成比が拡大したことからW/W比率は1.63倍と6年の1.70から▲0.07ポイントの低下となった。
    第13図 生産財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
    第13図 生産財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
     業種別にみると、9年にW/W比率が低下しているのは繊維品卸売業、鉱物・金属材料卸売業で、化学製品卸売業、再生資源卸売業は6年にやや低下したものの9年では上昇となっている。
    第14図 生産財卸売業の業種別W/W比率の推移
    第14図 生産財卸売業の業種別W/W比率の推移
  2. (2) 資本財卸売業
     資本財卸売業のW/W比率は、昭和60年まで低下が続き、63年、平成3年と上昇したが、6年は1.39倍へ低下し、9年では1 .42倍に上昇している。
    第15図 資本財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
    第15図 資本財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
     業種別にみると、機械器具卸売業は、W/W比率が高い時点は1.4~1.5倍台であるが、ほとんどの年次で1.3倍台の低い水準で推移しており、その動きは資本財全体の動きと似通っている。また、建築材料卸売業はW/W比率が総じて高いが、昭和51,54年は1.7倍台、57年に1.62倍と低下、以降63年まで上昇傾向にあったが、平成3年、6年と低下している。機械器具卸売業、建築材料卸売業とも9年は、ほとんどの流通経路で増加となったものの、「卸売業者向け」の割合が高まったことからともにW/W比率は上昇となっている。
    第16図 資本財卸売業の業種別W/W比率の推移
    第16図 資本財卸売業の業種別W/W比率の推移
  3. (3) 消費財卸売業
     消費財卸売業のW/W比率は、昭和54年をピークに低下が続き平成6年には1.64倍に低下した。この要因は、「小売業者向け」、「産業用使用者向け」が増加し、その割合が拡大したことによる。9年は「小売業者向け」、「消費者向け」が減少し、割合も縮小したためW/W比率は1.66倍と6年の1.64倍から0.02ポイントの上昇となった。
    第17図 消費財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
    第17図 消費財卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
     業種別にみると、衣服・身の回り品卸売業はほぼ横ばいで推移、家具・建具・じゅう器卸売業は緩やかな上昇傾向で推移しており、この2業種を除けばほとんどの業種が6年まで低下傾向で推移した。9年には食料・飲料卸売業、医薬品・化粧品卸売業のW/W比率は更に低下が進み、他に分類されない卸売業も横ばいとなるなど、流通経路の短縮化がみられる財であり、業種といえる。なお、農畜産物・水産物卸売業は他の業種に比べW/W比率の水準は高いものの、6年まで低下、9年はW/W比率が上昇しているが、これは規制緩和を背景とする米などの流通経路変更に伴う「小売業者向け」が減少し、また、その割合も縮小したためといえる。
    第18図 消費財卸売業の業種別W/W比率の推移
    第18図 消費財卸売業の業種別W/W比率の推移
  4. (4) 各種商品卸売業
     大手総合商社の含まれる各種商品卸売業は、「国外向け」と「産業用使用者向け」の割合が増加しており、なかでも「産業用使用者向け」の割合が大幅に増加、「卸売業者向け」が大幅な減少となったことから、昭和63年以降上昇が続いた。9年のW/W比率は1.46倍と6年の1.94倍から▲0.48ポイントの大幅な低下となっている。
    第19図 各種商品卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
    第19図 各種商品卸売業の販売先別年間販売額とW/W比率の推移
     以上のように、W/W比率は資本財卸売業、消費財卸売業とも9年は上昇となったが、その比率はともに低い水準にあること、また、生産財卸売業にも低下傾向がみられることから、総じてみれば卸売業においては流通経路の短縮化が進んでいる。なお、卸売業全体をみれば、W/W比率は円高不況である60年は各種商品卸売業、資本財卸売業など海外取引卸を中心に低下となったものの、以降バブル景気の3年まで上昇が続くなどW/W比率の動きには景気が影響していると思われる。

ページのトップへ戻る

最終更新日:2007.10.1
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.