CONTENTS
1.ダンピング輸入と国内産業への損害の因果関係について2.因果関係にかかる当室へのご質問・相談事例
3.当室の輸入・生産動態統計モニタリングシステムの活用方法(動画解説付き!)
4.FAQ
- 相談窓口(アンチダンピング申請のご相談はこちら)
8月号のニュースレターに引続き、アンチダンピング(AD)の申請書作成に向けた具体的な解説を行います。
さて、前回は損害指標についての解説でしたが、本号では海外からのダンピング輸入による国内産業への損害調査で検討すべき3つの事項のうち、損害指標について解説していきます。
あわせて、因果関係に係る当室へのご質問・相談事例をもとにAD申請に向けたFAQをご紹介します。
<国内産業への損害で検討すべき3事項>
国内産業への損害調査で検討すべき事項は以下の3つです。
① 数量効果:
ダンピング輸入の絶対的な増加、国内需要量に対する本邦における生産量又は消費量との関係での相対的な増加の有無を検討
② 価格効果:
輸入品による国産品価格の下回り(Price undercutting)又は価格の押し下げ(Price depression)若しくは価格上昇の抑制(Price suppression)が生じているかを検討
③ 損害15指標:
販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益、操業度における現実及び潜在的な低下、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力若しくは投資に及ぼす現実及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因、ダンピングの価格差等を総合的に検討
これらの事項を基に、ダンピング輸入以外の要因による国内産業に対する損害を分離・峻別しつつ、ダンピング輸入と国内産業に対する損害の因果関係を証明していくこととなります。また、国内産業への損害調査には、最低でも直近3年間分のデータが必要です。これからお示しする申請書への記載例では会計年度ベースで調査をしていますが、暦年ベースで調査をすることも可能です。
国内産業への損害調査で検討すべき事項は以下の3つです。
① 数量効果:
ダンピング輸入の絶対的な増加、国内需要量に対する本邦における生産量又は消費量との関係での相対的な増加の有無を検討
② 価格効果:
輸入品による国産品価格の下回り(Price undercutting)又は価格の押し下げ(Price depression)若しくは価格上昇の抑制(Price suppression)が生じているかを検討
③ 損害15指標:
販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益、操業度における現実及び潜在的な低下、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力若しくは投資に及ぼす現実及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因、ダンピングの価格差等を総合的に検討
これらの事項を基に、ダンピング輸入以外の要因による国内産業に対する損害を分離・峻別しつつ、ダンピング輸入と国内産業に対する損害の因果関係を証明していくこととなります。また、国内産業への損害調査には、最低でも直近3年間分のデータが必要です。これからお示しする申請書への記載例では会計年度ベースで調査をしていますが、暦年ベースで調査をすることも可能です。
また、因果関係のほか8月号でご説明した申請要件等を含め、皆様に調査開始に至る際の重要なポイントを知っていただく趣旨で作成しました「自己診断ツール」で、調査開始に至る可能性を診断できますので、是非ご活用ください。
1.ダンピング輸入と国内産業への損害の因果関係について
因果関係においては、国内産業の損害が①ダンピング輸入の影響であることだけでなく、②ダンピング輸入以外の要因による影響ではないことについても説明することが必要となります。※因果関係における分析においては、各事案の個別具体的な事実関係を勘案してケース・バイ・ケースで行われるものです。このため、下記の「説明の例」及び「記載例」通りに申請書を作成したとしても、必ずしも調査開始に必要な申請書の要件を満たすとは限らない点、ご留意ください。
①ダンピング輸入の影響
営業現場での声(営業日誌や取引先とのやり取り結果等)を基にした事例を説明します。
- ダンピング品の輸入量の急増及び価格の引き下げにより、国産の貨物の販売量、市場占拠率及び販売価格が下落。
- 現に、使用者から、ダンピングされた安価の貨物の価格を引合いに値下げ要求が行われている。
- これらの事実は、ダンピングと損害に因果関係があることを十分に示している。
- 不当廉売された貨物の輸入の量及び価格、また、それらによる本邦の産業への影響に関する実質的な損害等の事実に加え、申請者は実質的な損害等が不当廉売された貨物の輸入によって引き起こされていること(因果関係があること)を示さなければならない。この因果関係は、通常、安価な輸入の増大と、損害指標に見られる本邦の産業の状態悪化との同時発生を基本として、不当廉売された貨物と本邦の同種の貨物との間の市場における競争・代替関係の存在及び程度によって示される。
【記載例(『不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課することを求める書面の作成の手引き』より一部抜粋)】
- 不当廉売された貨物の輸入量の急増及び価格の引き下げにより、本邦産の同種の貨物の販売量、市場占拠率及び販売価格が下落した。現に、産業上の使用者からは、不当廉売された安価な貨物の価格を引合いに値下げ要求が行われている(別紙〇)。これらの事実は、本件不当廉売と本邦の産業の実質的な損害に因果関係があることを十分に示している。
申請者は、対象貨物の輸入以外の要因が本邦の産業の状態悪化に影響を及ぼしているか否かを検討する必要があります。
そして、そうした要因には、特に、不当廉売価格によることなく販売されている輸入の量及び価格、需要の減少又は消費態様の変化、外国の生産者及び国内生産者の制限的な商慣行並びに外国の生産者と国内生産者との間の競争、技術の進歩並びに本邦の産業の輸出実績及び生産性等が挙げられます。
本稿では、例として、第三国輸入品の影響と自家消費について説明します。
1)第三国輸入品の影響:国内産業への損害は、調査対象国ではない国(第三国)からの輸入によるものではないか?
【説明の例】
- 国産の貨物の価格を引き下げていたのは第三国からの輸入品ではない。
- 第三国からの輸入品の価格を調べたところ、ダンピング品の価格や、国産の貨物(日本国内でダンピングと競合する品)の価格を常に上回っている。
- 購入者は、価格で購入先を決定する。
【説明の例】
- 自家消費についての価格及び売上高の2011年以降の減少は、ダンピング品の価格引き下げによるものである。
- 2011年から2013年の間で自家消費分の生産高に顕著な反動はない。
- 自家消費分の出荷価格は、ダンピング品の影響を受けている商品市場価格を適用。
- 因果関係において、不当廉売された貨物の輸入が損害の唯一の要因であるべきことが求められるものではないが、申請者は、不当廉売された貨物の輸入以外の要因が本邦の産業の状態悪化に影響を及ぼしているか否かを検討しなければならない。そうした要因には、特に、不当廉売価格によることなく販売されている輸入の量及び価格、需要の減少または消費態様の変化、外国の生産者及び国内産業者の制限的な商慣行並びに外国の生産者との間の競争、技術の進捗並びに本邦の産業の輸出実績及び生産性を含む(なお、これら以外にも本邦の産業の状況に影響を与えた特殊な事情あれば、検討を行う。)。
【記載例(『不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課することを求める書面の作成の手引き』より一部抜粋)】
- 本邦の産業の損害の状況に影響を与えうる他の要因として、以下のものが考えられる。しかし、以下に述べる通り、いずれも本邦の産業の状況に影響を与えているものではない。
- 『A国』の輸出者以外にC国、D国等、本邦【B】市場に【B】を輸出している国があるが、それらの国からの輸入量は全体の輸入量の〇%に過ぎないうえ、過去〇年間にわたり極めて限定的な水準に留まっている(別紙〇)。また、それらの国からの輸入価格は、国産品の販売価格を大きく上回っている(別紙〇)。このため、それらの国からの輸入が、本邦【B】市場に損害をもたらすことのできる要因とは認められない。
- 国内産業の経済指標は輸出の影響を排除した後のデータであるので、輸出実績は本邦の産業の状況に影響を与えているものではない。
- 別紙〇に示した通り、①年度から③年度の間で自家消費量に顕著な変動はない。また、自家消費価格は、『A国』産品の国内販売価格の影響を受けている商品市場価格を適用している。したがって、自家消費価格及び自家消費額は①年度以降減少しているものの、当該減少は、不当廉売された『A国』産品の価格引き下げによるものである。
- 需要量の減少が僅かであるにもかかわらず、国産品の販売量は大きく減少。この間、不当廉売された【B】の市場占拠率は大幅に上昇している。仮に国産品の市場占拠率が同一であれば国産品の販売量の減少は○MT 程度にとどまっていたであろう(別添資料○)。不当廉売された【B】は国産品と市場における交換可能性を有していることから、国産品の販売量の減少は、不当廉売された【B】の輸入増加によるものである。
政令第7条第1項第5号
ガイドライン5-2-4 因果関係
2.因果関係に係る当室へのご質問・相談事例
因果関係に係る当室へのご質問・相談事例をもとに、AD申請に向けたFAQをご紹介します。
3.当室の輸入・生産動態統計モニタリングシステムの活用方法
本号では海外からのダンピング輸入による国内産業への損害調査で検討すべき3つの事項のうち、ダンピング輸入と国内産業への損害の因果関係について解説しました。因果関係の検討においては、日ごろから輸入動向や国内需給関連指標をモニタリングすることで、より正確に、かつ効率化します。
今回は、当室の輸入モニタリングシステム及び生産動態統計システムの活用方法を解説します。以下の説明用動画をご覧いただき、ぜひ、モニタリングシステムを活用いただけますと幸いです。
<輸入モニタリングシステム>
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/monitoring/index.html
<生産動態統計モニタリングシステム>
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/supply_demand/index.html
4.FAQ
以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
最終更新日:2022年9月12日