CONTENTS
1.損害指標について2.損害指標に係る当室へのご質問・相談事例
3.AD発動の効果がみられた生の声
4.FAQ
- 相談窓口(アンチダンピング申請のご相談はこちら)
6月号のニュースレターに引続き、アンチダンピング(AD)の申請書作成に向けた具体的な解説を行います。
さて、前回は申請要件についての解説でしたが、本号では海外からのダンピング輸入による国内産業への損害調査で検討すべき3つの事項のうち、損害指標について解説していきます。
あわせて、損害指標に係る当室へのご質問・相談事例をもとにAD申請に向けたFAQ、及びAD発動の効果がみられた生の声をご紹介します。
<国内産業への損害で検討すべき3事項>
国内産業への損害調査で検討すべき事項は以下の3つです。
① 数量効果:
ダンピング輸入の絶対的な増加、国内需要量に対する本邦における生産量又は消費量との関係での相対的な増加の有無を検討
② 価格効果:
輸入品による国産品価格の下回り(Price undercutting)又は価格の押し下げ(Price depression)若しくは価格上昇の抑制(Price suppression)が生じているかを検討
③ 損害15指標:
販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益、操業度における現実及び潜在的な低下、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力若しくは投資に及ぼす現実及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因、ダンピングの価格差等を総合的に検討
これらの事項を基に、ダンピング輸入以外の要因による国内産業に対する損害を分離・峻別しつつ、ダンピング輸入と国内産業に対する損害の因果関係を証明していくこととなります。また、国内産業への損害調査には、最低でも直近3年間分のデータが必要です。これからお示しする申請書への記載例では会計年度ベースで調査をしていますが、暦年ベースで調査をすることも可能です。
国内産業への損害調査で検討すべき事項は以下の3つです。
① 数量効果:
ダンピング輸入の絶対的な増加、国内需要量に対する本邦における生産量又は消費量との関係での相対的な増加の有無を検討
② 価格効果:
輸入品による国産品価格の下回り(Price undercutting)又は価格の押し下げ(Price depression)若しくは価格上昇の抑制(Price suppression)が生じているかを検討
③ 損害15指標:
販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益、操業度における現実及び潜在的な低下、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力若しくは投資に及ぼす現実及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因、ダンピングの価格差等を総合的に検討
これらの事項を基に、ダンピング輸入以外の要因による国内産業に対する損害を分離・峻別しつつ、ダンピング輸入と国内産業に対する損害の因果関係を証明していくこととなります。また、国内産業への損害調査には、最低でも直近3年間分のデータが必要です。これからお示しする申請書への記載例では会計年度ベースで調査をしていますが、暦年ベースで調査をすることも可能です。
また、損害指標のほか6月号でご説明した申請要件等を含め、皆様に調査開始に至る際の重要なポイントを知っていただく趣旨で作成しました「自己診断ツール」で、調査開始に至る可能性を診断できますので、是非ご活用ください。
1.損害指標について
損害指標では、販売、利潤、生産高、市場占拠率、生産性、投資収益、操業度における現実及び潜在的な低下、キャッシュフロー、在庫、雇用、賃金、成長、資金調達能力若しくは投資に及ぼす現実及び潜在的な悪影響、国内価格に影響を及ぼす要因、ダンピングの価格差等を総合的に検討します。申請書において上記損害指標の状況を把握する必要があります。以下に例を提示致しますので参考にしてください。
●損害指標例一覧及びポイント
※輸出に関する影響は損害指標のデータから除外する必要がございます。
※輸出に関する影響は損害指標のデータから除外する必要がございます。
●関係法令等
政令第7条第1項第5号
ガイドライン6.(2)四②ハ
●損害指標の記載に向けた詳細解説
調査当局が調査を開始するにあたり十分な証拠があると決定するためには、不当廉売された貨物の輸入による本邦の産業への損害等に係るデータが必要です。
また、データの推定又は調整を行った場合にはその旨及び方法を明記します。記載例表中の項目・指標以外に関連するものがある場合にはそれも含めます。
複数の本邦の生産者が存在する場合には、全ての者のデータの合計(平均値が必要な場合は、加重平均する)を記載するよう努めます(記載例1)。
※産業団体や法律事務所等を通して他社の必要データを提出する方法もございます。
ただし、一部のデータしか提出できない場合は、その旨明記します(記載例2)。また、可能な限り提出が不可能である理由を合わせて明記します。
全てのデータは原則として直近3年間について示します (通常は会計年度)。提出が求められている指標等について、当該データが提出できない場合にはその旨及び理由を明記します。
また、データの推定又は調整を行った場合にはその旨及び方法を明記します。記載例表中の項目・指標以外に関連するものがある場合にはそれも含めます。
複数の本邦の生産者が存在する場合には、全ての者のデータの合計(平均値が必要な場合は、加重平均する)を記載するよう努めます(記載例1)。
※産業団体や法律事務所等を通して他社の必要データを提出する方法もございます。
ただし、一部のデータしか提出できない場合は、その旨明記します(記載例2)。また、可能な限り提出が不可能である理由を合わせて明記します。
全てのデータは原則として直近3年間について示します (通常は会計年度)。提出が求められている指標等について、当該データが提出できない場合にはその旨及び理由を明記します。
●損害指標の記載例(当室HPコンテンツ「申請の手引き」より抜粋)
2.損害指標に係る当室へのご質問・相談事例
AD申請資格に係る当室へのご質問・相談事例をもとに、AD申請に向けたFAQをご紹介します。
3.AD発動の効果がみられた生の声
本号では、平成14年(2002年)6月に課税決定となった大韓民国及び台湾産のポリエステル短繊維のAD調査事例について、日本化学繊維協会業務調査グループ主幹の鍵山様より、アンチダンピング措置制度の活用により当該産業の構造改善が進んだ事例について寄稿いただきました。安値輸入品でお困りの際はお気軽に当室までご相談ください。
<大韓民国および台湾産ポリエステル短繊維の調査経緯>
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/trade-remedy/investigation/tsugite/index.html
日本の化繊業界の各社は、2001年、大韓民国および台湾産のポリエステル短繊維の不当廉売関税の課税申請を行い、2002年6月に不当廉売関税を課すことが日本政府により決定、その後、2007年に延長され、2012年6月に10年間の課税期間が終了しました。
賦課当初は、短期的には、両国からの輸入が落ち着く効果がありました。しかし、2000年代中盤以降、中国の急速な拡大によって、特に汎用品分野では、厳しい国際競争に晒される状況となりました。
こうしたことから、ポリエステル短繊維企業各社は、措置期間の輸入水準が落ち着いている間、汎用品からの撤退/付加価値品へのシフト、新しい用途開拓などを積極的に進めた結果、衣料、詰め綿などの伝統的用途の比率が大きく減少、自動車等の産業資材、医療・衛材、水処理等の環境関連製品に用いられる不織布向けが大半を占めるまでになりました。その結果、賦課期間の10年で収益も改善しました。
現在、国内生産は、グローバル調達も進み減少していますが、国内市場規模はここ数年ほぼ横ばいを維持しています。一方で、世界需要をみますと、日本が得意とする高付加価値分野では、先進国だけでなく新興国でも、リサイクルなどの環境問題、安心・安全や商品への信頼性から消費者の機能性を求めるニーズがますます高まっています。昨今は、医療・衛材用途においても信頼できる素材の需要が高まっています。ポリエステル繊維は、こうした需要に応える主要な素材として重要な地位を占めています。
約20年前という昔の経験ですが、当時、不当な安値輸入に対抗する手段として本制度を活用し、事業継続をあきらめずにいたことが、短期的な効果もさることながら、中長期的に業界の構造改革が進んだという点で、この制度は評価できると感じております。
賦課当初は、短期的には、両国からの輸入が落ち着く効果がありました。しかし、2000年代中盤以降、中国の急速な拡大によって、特に汎用品分野では、厳しい国際競争に晒される状況となりました。
こうしたことから、ポリエステル短繊維企業各社は、措置期間の輸入水準が落ち着いている間、汎用品からの撤退/付加価値品へのシフト、新しい用途開拓などを積極的に進めた結果、衣料、詰め綿などの伝統的用途の比率が大きく減少、自動車等の産業資材、医療・衛材、水処理等の環境関連製品に用いられる不織布向けが大半を占めるまでになりました。その結果、賦課期間の10年で収益も改善しました。
現在、国内生産は、グローバル調達も進み減少していますが、国内市場規模はここ数年ほぼ横ばいを維持しています。一方で、世界需要をみますと、日本が得意とする高付加価値分野では、先進国だけでなく新興国でも、リサイクルなどの環境問題、安心・安全や商品への信頼性から消費者の機能性を求めるニーズがますます高まっています。昨今は、医療・衛材用途においても信頼できる素材の需要が高まっています。ポリエステル繊維は、こうした需要に応える主要な素材として重要な地位を占めています。
約20年前という昔の経験ですが、当時、不当な安値輸入に対抗する手段として本制度を活用し、事業継続をあきらめずにいたことが、短期的な効果もさることながら、中長期的に業界の構造改革が進んだという点で、この制度は評価できると感じております。
4.FAQ
以下のURLから、アンチダンピング申請等について、皆様からよく寄せられるご質問及び回答情報をご参照いただけます。ご活用いただけますと幸いです。
最終更新日:2022年9月12日