CONTENTS
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2.日本のアンチダンピング調査事例
①大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に対する不当廉売関税の課税に関する調査を開始
②大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールAに対するに対する不当廉売関税の課税に関する調査を開始
③大韓民国産炭酸二カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長に関する調査を開始
3.各国の貿易政策の状況
①韓国がアンチダンピング措置の回避に関する特別調査の結果を公表
②中国が貿易救済措置の迂回防止調査規則(意見募集用の草案)について意見を募集
③中国が米国産のカットオフ波長シフトシングルモード光ファイバーに対する迂回防止調査の結果を発表
④マレーシアにおいて、迂回防止に関する条項の導入を含む、相殺及びアンチダンピング関税法の改正案が下院を通過
1.諸外国における貿易救済措置の発動状況
2025年7月~8月の諸外国における貿易救済措置の発動状況をお伝えします。実施状況詳細
アンチダンピング(AD)
2025年7月~8月は、以下の調査が開始されました。
補助金相殺関税(CVD)
2025年7月~8月は、以下の調査が開始されました。
2.日本のアンチダンピング調査事例
①大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に対する不当廉売関税の課税に関する調査を開始
経済産業省及び財務省は、令和7年4月28日に国内の数社から財務大臣に提出された、大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に対する不当廉売関税の課税申請について、関係法令に基づき検討を行った結果、不当廉売関税の課税の要否に関する調査を行う必要があると認められたことから、両省合同の調査を開始することといたしました。
調査は原則として1年以内に終了することとされており、今後、利害関係者からの証 拠の提出等の機会を設けるとともに、大韓民国及び中華人民共和国の企業や本邦の企業に対する実態調査による客観的な証拠の収集を行います。
これらの結果を踏まえ、WTO協定及び関係国内法令に基づき、不当廉売された貨物の輸入及び当該輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実の有無について認定を行った上で、不当廉売関税の課税の要否を政府として判断することとなります。
- 大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鋼帯及び鋼板に関する調査の詳細はこちら
②大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールAに対するに対する不
当廉売関税の課税に関する調査を開始
経済産業省及び財務省は、令和7年6月2日に国内の数社から財務大臣に提出された、大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールAに対する不当廉売関税の課税申請について、関係法令に基づき検討を行った結果、不当廉売関税の課税の要否に関する調査を行う必要があると認められたことから、両省合同の調査を開始することといたしました。
調査は原則として1年以内に終了することとされており、今後、利害関係者からの証 拠の提出等の機会を設けるとともに、大韓民国並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域の企業や本邦の企業に対する実態調査による客観的な証拠の収集を行います。
これらの結果を踏まえ、WTO協定及び関係国内法令に基づき、不当廉売された貨物の輸入及び当該輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実の有無について認定を行った上で、不当廉売関税の課税の要否を政府として判断することとなります。
- 大韓民国産並びに台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域産ビスフェノールAに関する調査の詳細はこちら
③大韓民国産炭酸二カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長に関する調査を開始
経済産業省及び財務省は、令和7年6月19日にAGC 株式会社から財務大臣に提出された、大韓民国産炭酸二カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長申請について、関係法令に基づき検討を行った結果、不当廉売関税の課税期間の延長の要否に関する調査を行う必要があると認められたことから、両省合同の調査を開始することといたしました。
調査は原則として1年以内に終了することとされており、今後、利害関係者からの証拠の提出等の機会を設けるとともに、大韓民国の企業や本邦の企業に対する実態調査による客観的な証拠の収集を行います。
これらの結果を踏まえ、WTO協定及び関係国内法令に基づき、不当廉売された貨物の輸入及び当該輸入の本邦産業に与える実質的な損害等の事実が課税期間満了後に継続し、又は再発するおそれの有無について認定を行った上で、不当廉売関税の課税期間の延長の要否を政府として判断することとなります。
- 大韓民国産炭酸二カリウムに関する調査の詳細はこちら
3.各国の貿易政策の状況
①韓国がアンチダンピング措置の回避に関する特別調査の結果を公表
2025年8月14日、韓国関税庁は、米国の通商政策強化により第三国から韓国への低価格輸出が増加する中、アンチダンピング関税が課されている28品目を対象とした特別調査の結果を公表 1しました。 当該調査では、審査専担班(38人)を組織し、2,500社の輸入者を調査・分析した結果、品目や供給者の偽装、価格約束違反などにより19社、総額428億ウォンの回避行為を摘発したと発表しています。具体的には、鋼板にペンキを塗ってカラー鋼板として虚偽申告する手口や、アンチダンピング関税率が低い供給者名義での虚偽申告、品目による価格約束の差額を悪用した行為など、多様な違反が確認されたとしています。
摘発された企業には追徴課税を実施し、重大な違反については刑事罰も視野に入れて厳格な法的措置を取る方針を取るとともに、今後もアンチダンピング関税措置の回避や迂回行為が疑われる取引について、関係省庁と連携して監視を強化していく予定としています。
イ・ミョング関税庁長は、こうした行為が国家財政や国内産業に深刻な悪影響を及ぼすとして、引き続き不公正貿易の遮断に注力し、産業界や関係機関との協力体制を強化すると述べています。
②中国が貿易救済措置の迂回防止調査規則(意見募集用の草案)について意見を募集
2025年7月30日、中国商務部は、貿易救済調査制度のさらなる整備を目的とし、「貿易救済措置の迂回防止調査規則(意見募集用の草案)」について、社会から広く意見を募集すると公表しています2。当該規則は『中華人民共和国対外貿易法』 『中華人民共和国関税法』および『中華人民共和国反ダンピング条例』『中華人民共和国反補助金条例』などの関連法令に基づき策定されるものであり、貿易救済措置の実効性を維持しつつ、迂回行為への対策を明確化するものとしています。
当該規則の草案において規定されている迂回行為は以下のとおりであり、これらの行為によって貿易救済措置の効果が損なわれることを防止することを目的としています。
- 中国での加工組立
- 第三国(地域)で加工組立した後、中国に輸出
- 第三国(地域)を経由して、中国に輸送
- 低税率の企業を通じて、中国に輸出
- 製品に軽微な変更を加えた後、中国に輸出
- 製品または貿易モデルを変更して中国に輸出するその他の行為
2. https://trb.mofcom.gov.cn/flfg/gnfg/bmgz/art/2025/art_1d093df1ba0a4981b2c57baa8b08c7bd.html
③中国が米国産のカットオフ波長シフトシングルモード光ファイバーに対する迂回防止調査の結果を発表
2025年9月3日、中国商務部は、米国から中国へ輸入される「カットオフ波長シフトシングルモード光ファイバー」(Certain Cut-off Shifted Single-mode Optical Fiber)に対する迂回防止調査の結果を発表3しました。
商務部により公開された決定書4によると、調査当局は、当該迂回防止調査において、申請者と生産者(コーニング社の米国生産者及びその関連会社)からの回答(その他の利害関係者からの回答は無かった)に基づき、現行のアンチダンピング措置の実施後、米国の生産者、輸出者の関連する光ファイバー製品に関する貿易モデルの変化の状況並びに商業的合理性、及びこうした変化が貿易救済措置の効果に与える影響について調査を行ったとしています。
調査当局は入手可能な証拠資料に基づき、迂回調査の対象製品である「カットオフ波長シフトシングルモード光ファイバー」(G.654)と現行のアンチダンピング措置対象の「非分散シフトシングルモード光ファイバー」(ULL G.652)はいずれも超低損失の光ファイバーであり、製造プロセスや原材料に実質的な差はなく、製品特性や主要な技術仕様に高度な類似性があり、実用上の相互代替性は高いと認定しています。
また、2015年以降、ULL G.652光ファイバー製品の輸入量が減少する一方で、G.654光ファイバー製品の輸入量が増加しているが、それぞれの製品の用途に関連する顧客や需要は安定的であることから、貿易モデルの変化に関する商業的合理性を欠いているものと認定しました。さらに、申請者におけるULL G.652光ファイバー製品の利益水準は深刻な落ち込みを見せ、単位当たりの粗利益も減少しており、調査対象製品の輸入急増により、現行のアンチダンピング措置の効果が弱まったとしています。
これらの理由から、米国産のG.654光ファイバー製品の輸入は、ULL G.652光ファイバー製品に対するアンチダンピング措置の迂回行為であると決定しています。
当該決定により、2025年9月4日以降、輸入者は、米国産の「カットオフ波長シフトシングルモード光ファイバー」を輸入する場合、アンチダンピング関税を支払う必要が生じています。課税期間は、2028年4月21日まで(当初の製品に対するアンチダンピング措置の適用期間と同じ)となっています。
3. https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/gpmy/art/2025/art_11edc83895d94c81a9ffc7f5ac5a6eef.html
4. https://www.mofcom.gov.cn/cms_files/filemanager/1511035453/attach/20255/7c78e62788f2464aa71921a951fdce6f.pdf?fileName=%E4%B8%AD%E5%8D%8E%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E5%95%86%E5%8A%A1%E9%83%A8%E5%85%B3%E4%BA%8E%E5%AF%B9%E5%8E%9F%E4%BA%A7%E4%BA%8E%E7%BE%8E%E5%9B%BD%E7%9A%84%E8%BF%9B%E5%8F%A3%E7%9B%B8%E5%85%B3%E6%88%AA%E6%AD%A2%E6%B3%A2%E9%95%BF%E4%BD%8D%E7%A7%BB%E5%8D%95%E6%A8%A1%E5%85%89%E7%BA%A4%E5%8F%8D%E8%A7%84%E9%81%BF%E8%B0%83%E6%9F%A5%E7%9A%84%E8%A3%81%E5%AE%9A.pdf
④マレーシアにおいて、迂回防止に関する条項の導入を含む、相殺及びアンチダンピング関税法の改正案が下院を
通過
2025年8月26日、マレーシアの連邦議会下院(デワン・ラヤット)において、輸出者や生産者が第三国を経由するなど製品の流通経路を変更することで関税を回避する「迂回行為」に対する防止条項を導入することを含む、1993年相殺及びアンチダンピング関税法の改正案を賛成多数で可決されました。
複数の報道によると、当該改正案は、貿易環境の変化を背景に、貿易救済措置の回避を狙った迂回行為に対して制裁を行う権限を政府に付与するとともに、迂回行為の調査を行う手続きを定めています。重要な変更点は、「迂回」の定義の導入であり、政府が課す相殺関税またはアンチダンピング関税を回避または弱体化させるための輸出者または生産者による行為として、幅広い回避行為を対象としています。また、政府が迂回防止の調査を実施しなければならない時期、必要な証拠の種類、決定の手順等に関する規定も設けられています。
リュー・チントン投資貿易産業副大臣は、「この改正案はマレーシアの法律を国際貿易慣行及びWTO協定に基づく義務と一致させるものである」と述べています。
4.相談窓口
経済産業省では、皆様からのアンチダンピング調査に関する個別相談を常時承っております。アンチダンピング措置は、海外からの不要な安値輸出を是正するためWTOルールにおいて認められた制度です。公平な国際競争環境が担保された中で、日本企業の皆様が事業活動を展開できるようにするためにも、アンチダンピングを事業戦略の一つとして捉えていただき、積極的に御活用いただきたいと考えております。申請に向けた検討をどのように進めればよいのか、複数の事業者による共同申請はどのようにすればよいのかなど、相談したい事項がございましたら、まずは気兼ねなく経済産業省特殊関税等調査室まで御連絡ください。
また、「日本企業がアンチダンピング調査の調査対象となった場合」の御相談は、経済産業省国際経済紛争対策室まで御連絡ください。
経済産業省 貿易経済安全保障局 貿易管理部 特殊関税等調査室
TEL:03-3501-1511(内線3256)
E-mail:bzl-qqfcbk@meti.go.jp
経済産業省 通商政策局 国際経済部 国際経済紛争対策室
TEL:03-3501-1511(内線 3056)
E-mail:bzl-wto-soudan@meti.go.jp
5.FAQ

最終更新日:2025年9月30日