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- 第1部 第2章 第1節 2013年の我が国の貿易動向
第2章 我が国の貿易・投資動向
第1節 2013年の我が国の貿易動向
1.貿易動向の概観
2013年の貿易収支(財務省「貿易統計」)は、-11兆4,684億円と過去最大の赤字となった。2012年に、第二次石油危機に見舞われた1980年以来32年ぶりとなる過去最大の赤字(-6兆9,411億円)となったが、2013年はそれを更に大きく上回る赤字となった(第Ⅰ-2-1-1図)。
第Ⅰ-2-1-1図 貿易額、貿易収支の推移
輸出額は前年比9.5%増の69兆7,742億円と3年ぶりの増加となった。一方で輸入額は火力発電用の化石燃料の輸入額増や好調な内需等を背景に、前年比14.9%増の81兆2,425億円と4年連続で増加し、過去最大の輸入額となった。この輸入額の増加が貿易赤字の大きな要因となっている。
輸出入に関する各指数の足下の推移を見ると、輸出関連の各指数に関しては、2012年末からの円安方向の動きに伴い、輸出価格指数及び輸出額指数は上昇している。他方、輸出数量指数は、円高方向に推移していた2011年、2012年と比べても低調なまま推移しているが、足下ではやや回復傾向にある(第Ⅰ-2-1-2図)。輸入関連の各指数に関しては、2012年末からの円安方向の動きに伴い、輸入価格指数及び輸入額指数は大きく上昇している。他方、輸入数量指数は、2013年に入り2012年と比べるとやや減少傾向となったが、10月以降は増加傾向にある(第Ⅰ-2-1-3図)。
第Ⅰ-2-1-2図 輸出関連各指数の推移
第Ⅰ-2-1-3図 輸入関連各指数の推移
2.相手国・地域別、品目別の貿易動向
国・地域別に見ると、対米国貿易は、自動車や有機化合物等の輸出が増加したことにより、輸出額は12兆9,282億円(前年比15.6%増)と日本の輸出先として最大となった。貿易収支も6兆1,133億円の黒字となり、2年連続で黒字幅が増加した。対中国貿易は、有機化合物等を中心に輸出が3年ぶりに増加し、輸出額は12兆6,252億円(前年比9.7%増)となったものの、通信機等の輸入増加の影響で、輸入額は17兆6,600億円(前年比17.4%増)と過去最大となり、貿易収支も-5兆348億円と昨年に引き続き過去最大の赤字となった。対EU貿易は、自動車等を中心に輸出が増加したものの、医薬品・自動車等の輸入増加の影響で、貿易収支は-6,487億円と2年連続で過去最大の赤字額となった。対ASEAN貿易は、同地域の需要減の影響もあり輸出額の伸びが相対的に低調となり、貿易収支も-6,585億円と赤字となった(第Ⅰ-2-1-4表、第Ⅰ-2-1-5図)。
第Ⅰ-2-1-4表 我が国の貿易額(相手国・地域別)
第Ⅰ-2-1-5図 貿易収支推移(相手国・地域別)
次に主要品目別に見ると、輸出額は、輸送用機器(約1.3兆円増)や化学製品(1.1兆円増)を中心に各品目とも前年と比べて増加しており、東日本大震災前の2010年と比べても、電気機器以外は増加している。しかし、世界経済危機の影響を大きく受ける前の2008年の水準を上回っているのは化学製品のみである(第Ⅰ-2-1-6図)。輸入額は、鉱物性燃料(約3.3兆円増)を中心に各品目とも前年と比べ増加しており、震災前の2010年と比べても、鉱物性燃料(約10.0兆円増)や電気機器(約2.2兆円増)を中心に各品目とも増加している。輸送用機器、電気機器、食料品は、2008年の水準を上回っている(第Ⅰ-2-1-7図)。
第Ⅰ-2-1-6図 主要品目別輸出額推移
第Ⅰ-2-1-7図 主要品目別輸入額推移
最後に貿易相手国・地域別の輸出額・輸入額の品目別増減寄与度(対前年比)を見ると、輸出に関しては、主に米国向けの輸送用機器(対前年比寄与度1.40%)や一般機械(同0.41%)、中国向けの化学製品(同0.71%)の増加が輸出額増加にプラスに寄与している一方で、ASEAN向けの一般機械(同-0.19%)や輸送用機器(同0.00%)等の減少及び伸び悩みが輸出額増加を鈍化させている(第Ⅰ-2-1-8表)。輸入に関しては、主に中東からの鉱物性燃料(同2.87%)、中国からの電気機器(同1.40%)や一般機械(同0.69%)の増加が輸入額増加に寄与している(第Ⅰ-2-1-9表)。
第Ⅰ-2-1-8表 貿易相手国・地域別の輸出額増減寄与度
第Ⅰ-2-1-9表 貿易相手国・地域別の輸入額増減寄与度
3.価格・数量要因から見た貿易動向
2013年の貿易赤字は2012年に比べ約4.5兆円増加した。この要因を輸出数量、輸出価格、輸入数量、輸入価格に分解すると、輸出価格の上昇は貿易収支改善に寄与した一方で、貿易赤字拡大の最大の要因は輸入価格の上昇(貿易赤字増加に対する寄与分は約-10.3兆円)であり、次いで、輸出数量の減少(同約-1.0兆円)、輸入数量の増加(同約-0.2兆円)となっている(第Ⅰ-2-1-10図)。
第Ⅰ-2-1-10図 貿易収支(前年差)の要因分解
四半期ベースで同様に要因分解すると、第1四半期及び第2四半期においては、輸入価格の上昇と輸出数量の減少が貿易赤字に寄与している。しかし、第3四半期からは、輸出数量は増加に転じ、貿易収支改善に寄与している。第3四半期には輸入価格の上昇が、第4四半期には輸入価格の上昇と輸入数量の増加が貿易赤字に寄与している(第Ⅰ-2-1-11図)。過去に円安方向に推移していた2005年を見てみると、年間を通して輸入価格の上昇及び輸入数量の増加が貿易赤字に寄与していたが、輸出数量の減少は第1四半期及び第2四半期までで、第3四半期からは2013年と同様に増加に転じ、貿易収支改善に寄与している(第Ⅰ-2-1-12図)。
第Ⅰ-2-1-11図 貿易収支(前年同期差)の要因分解(2013年)
第Ⅰ-2-1-12図 貿易収支(前年同期差)の要因分解(2005年)
次に、2013年の貿易赤字拡大の要因となっている、輸出数量減少、輸入数量増加、輸入価格増加についてそれぞれ品目別に寄与度を見ると、まず輸出数量については、一般機械、電気機器の減少が大きな要因となっているが、これらの品目の減少幅は足下で縮小傾向にあり、10月以降は増加に転じている。また、自動車及び輸送用機器も6月までは減少していたが、7月以降持ち直し傾向にある(第Ⅰ-2-1-13図)。輸入数量については、LNGや自動車等の増加が寄与した。原粗油については、年間では減少となったものの足下で大きく増加している(第Ⅰ-2-1-14図)。輸入価格については、ほぼ全ての品目で年間を通して上昇傾向にあるが、特に原粗油、LNG、電気機器の寄与度が大きくなっている(第Ⅰ-2-1-15図)。
第Ⅰ-2-1-13図 輸出数量(前年同月比)の寄与度分解(2013年)
第Ⅰ-2-1-14図 輸入数量(前年同月比)の寄与度分解(2013年)
第Ⅰ-2-1-15図 輸入価格(前年同月比)の寄与度分解(2013年)