経済産業省
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第2節 我が国の貿易構造の変化

1.主要品目別貿易収支から見た貿易構造の変化

 ここでは主要品目別の貿易収支を2005年、2010年、2013年で比較することにより貿易構造の変化を見ていく。

 2013年の主要品目別の貿易収支は、2005年と比べて多くの品目で悪化しており、特に鉱物性燃料で約11.8兆円赤字幅が増加し、電気機器で約5.4兆円黒字幅が減少している。一方で自動車や鉄鋼などでは黒字幅が増加している。また、2010年と比べると、自動車と鉄鋼を除いて悪化しているが、鉱物性燃料(約9.6兆円赤字幅拡大)、電気機器(約2.8兆円黒字幅縮小)のほか、一般機械でも約1.1兆円黒字幅が減少している(第Ⅰ-2-2-1図、第Ⅰ-2-2-2図)。

第Ⅰ-2-2-1図 主要品目別貿易収支の比較(2005、2010、2013年)

第Ⅰ-2-2-2図 2010年から2013年にかけての貿易収支の増減幅

 電気機器及び一般機械について更に細かく見ると、電気機器で大きく黒字幅が減少した背景には、2005年に約0.1兆円の黒字であった通信機(携帯電話等)で2010年には約-0.6兆円と赤字に転じ、2013年には約-2.2兆円まで赤字が増加したこと、また、2005年に約1.6兆円の黒字であった音響・映像機器(含部品)(テレビ等)で2013年には約-0.1兆円の赤字となっていること、さらに、半導体等電子部品(太陽電池等)の黒字幅が2005年の約2.1兆円から2013年には約1.1兆円まで減少していることがあげられる(第Ⅰ-2-2-3図)。

第Ⅰ-2-2-3図 電気機器の主要品目別貿易収支の比較(2005、2010、2013年)

 一般機械の黒字幅の減少については、2010年には約1.5兆円であった半導体製造装置の黒字幅が2013年には約1.1兆円に減少したことや、電算機類(含周辺機器)(パソコン等)の赤字幅が2010年の約-1.1兆円から2013年には約-1.6兆円に増加したこと等が影響している(第Ⅰ-2-2-4図)。

第Ⅰ-2-2-4図 一般機械の主要品目別貿易収支の比較(2010、2013年)

2.主要輸出品目の輸出競争力から見た貿易構造の変化

 ここでは日本の主要輸出品目に関して、貿易特化係数、輸出額伸び率(対前年比)、輸出額の推移を各国と比較することにより、輸出競争力及び貿易構造の変化について見ていく。貿易特化係数16は各産業がどれだけ輸出に特化(輸出超過)しているかを示しており、「1」は完全輸出特化、「0」は輸出入均衡、「-1」は完全輸入特化となる。輸出への特化度合いにより輸出競争力を計測している。

 日本の2013年の輸出額上位5品目はHSコード2桁ベースで見ていくと、自動車、一般機械、電気機器、精密機器、鉄鋼となっており、これらで日本の全輸出額の6割以上を占めている(第Ⅰ-2-2-5表)。これら5品目に関して、貿易特化係数、輸出額伸び率(対前年比)、輸出額が、2000年、2005年、2010年、2013年とどのように推移してきたのか、ドイツ、韓国、中国と比較しつつ見ていく。

第Ⅰ-2-2-5表 日本の輸出額上位5品目(HSコード2桁ベース、2013年)

16 貿易特化係数=貿易黒字額/貿易総額=(輸出-輸入)/(輸出+輸入)

(1)自動車

 自動車に関して、乗用車(HS8703)と自動車部品(HS8708)について見ていく。

 まず乗用車について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、日本の貿易特化係数は高い水準で安定しており、2013年時点で4か国の中で最も高くなっている。また、輸出額伸び率(前年比)はドイツとおおむね同様の動きとなっている。韓国は、2013年時点の輸出額は2000年に比べ約4倍に増加しているが、日本やドイツに比べ額は小さく、貿易特化係数は低下してきている。中国は、貿易特化係数は2013年時点で-0.82と4か国の中で唯一マイナスとなっており、輸出額も2013年時点で4か国の中で最も少ない(第Ⅰ-2-2-6図)。

第Ⅰ-2-2-6図 日本、ドイツ、韓国の乗用車(HS8703)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

 次に自動車部品について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、日本の貿易特化係数は高い水準で安定しており、輸出額はドイツに次ぐ大きさとなっている。中国と韓国は輸出額及び貿易特化係数が大きく上昇している。特に韓国の貿易特化係数の伸びが大きく、2000年には日本、ドイツよりも低かったが、2013年時点では日本を抜いて4か国の中で最も高くなっている。(第Ⅰ-2-2-7図)。

第Ⅰ-2-2-7図 日本、ドイツ、韓国の自動車部品(HS8708)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

(2)一般機械

 一般機械について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、中国の伸びが顕著である。中国の貿易特化係数は、2000年には4か国の中で最も低かったが、2013年時点では日本を抜いて4か国の中で最も高くなっている。輸出額についても、2000年には4か国の中で最も少なかったが、2013年時点では2000年比約14倍に増加し、4か国の中で最大となっている。ドイツは貿易特化係数、輸出額とも堅調に伸ばしており、輸出額伸び率(前年比)は振れ幅が最も小さくなっている。日本については、貿易特化係数はやや低下してきているが、相対的に高い水準で安定している。輸出額伸び率(前年比)は韓国同様振れ幅が大きい。(第Ⅰ-2-2-8図)。

第Ⅰ-2-2-8図 日本、ドイツ、韓国の一般機械(HS84)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

(3)電気機器

 電気機器について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、日本の貿易特化係数は2000年には4か国の中で突出して高かったが、2005年、2010年と低下し続け、2013年時点では中国、韓国よりも低い水準となっている。輸出額伸び率(前年比)の振れ幅も大きくなっている。中国、韓国は貿易特化係数、輸出額共に上昇を続けている。中国の貿易特化係数は、2000年、2005年にはマイナスであったが、2013年には日本を抜き、韓国に次ぐ水準となっている。輸出額については、2000年には4か国で最も少なかったが、2013年時点では2000年比約12倍にまで増加し、4か国の中で最大となっている。韓国の貿易特化係数は、2013年時点では4か国の中で突出して高くなっており、輸出額は2013年時点では2000年比約3倍に増加している。ドイツは、輸出額は2013年時点で2000年比約2倍となっているが、貿易特化係数は4か国の中で低水準で推移している(第Ⅰ-2-2-9図)。

第Ⅰ-2-2-9図 日本、ドイツ、韓国の電気機器(HS85)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

(4)精密機器

 精密機器について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、日本は2000年には貿易特化係数、輸出額ともに4か国の中で最も高かったが、その後輸出額は伸び悩み、貿易特化係数も低下した。最も顕著な伸びを示しているのが韓国である。2000年には貿易特化係数、輸出額ともに4か国の中で最も低い水準であったが、2005年には輸出額伸び率(前年比)が100%を超すなど急成長を遂げ、貿易特化係数は2013年時点で4か国中最も高く、輸出額は2000年比約20倍となっている。中国の貿易特化係数は上昇傾向にあるが、2013年時点でマイナス水準となっている。他方、輸出額は、2000年比約12倍となっており、4か国中最大となっている。ドイツの貿易特化係数に大きな変化はないが、輸出額は2013年時点で2000年比約3倍となっている(第Ⅰ-2-2-10図)。

第Ⅰ-2-2-10図 日本、ドイツ、韓国の精密機器(HS90)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

(5)鉄鋼

 最後に鉄鋼について日本、ドイツ、韓国、中国を比較すると、日本の貿易特化係数は4か国の中で最も高い水準で安定しており、輸出額も2013年時点で2000年比約3倍となっている。輸出額伸び率(前年比)が2013年に大きく下落しているが、ドイツ、韓国、中国も同様の動きを見せている。韓国は、2000年、2005年、2010年と貿易特化係数がマイナスであったが、2013年時点ではプラスとなり、輸出額も2013年時点では2000年比約4倍となっている。ドイツは、輸出額が2013年時点では2000年比約3倍となっているが、貿易特化係数は2000年、2005年とプラスであったのが、2013年時点ではマイナスとなっている。中国の貿易特化係数は2000年、2005年とマイナスであったが、2013年時点では日本に次ぐ水準となっている。輸出額も2000年には4か国中最小であったが、2013年時点では2000年比約10.7倍となり、日本に次ぐ大きさとなっている(第Ⅰ-2-2-11図)。

第Ⅰ-2-2-11図 日本、ドイツ、韓国の鉄鋼(HS72)の貿易特化係数・輸出額伸び率(前年比)、輸出額の推移

 以上5品目について見てきたが、日本は、自動車、鉄鋼に関しては、引き続き高い輸出競争力を維持している。他方、電気機器、一般機械、精密機器に関しては、韓国や中国の成長の影響等もあり、輸出競争力について相対的な優位性が低下してきていると見られる。

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