第5節 サービス経済化の進展
都市化に伴い、都市では産業構造の変化がみられる。
都市では、その発展とともに、そこで暮らす住民に対するさまざまなサービス需要が発生する。その結果、人々の集積である都市は、同時に消費の集積となり、流通業や飲食業等サービス産業の集積・発展が促される傾向にある。
実際、GDPに占めるサービス産業の割合(サービス産業比率)と都市化率の間には、石油輸出国や島しょ国など特殊な環境にある国・地域14を除けば、明確な正の相関が見て取れる(第Ⅰ-2-5-1-1図、第Ⅰ-2-5-1-2図)。
第Ⅰ-2-5-1-1図 都市化とサービス経済化(1)
第Ⅰ-2-5-1-2図 都市化とサービス経済化(2)
なお、インドやフィリピン等一部の国・地域を除くアジア諸国・地域や多くのアフリカ諸国などの都市化率に対するサービス産業比率は、世界の平均的な傾向よりも低いから、今後、これら諸国・地域では都市化に伴うサービス経済化が一層進展すると期待されている。
こうした中、新興諸国・地域では、近年、財輸入だけではなく、サービス輸入も急速に増加している。特に上位中所得国による輸入増加が著しく、2012年には7千億ドルを超え、7年前(2005年)の2倍を超える水準となっている(第Ⅰ-2-5-1-3図)。
第Ⅰ-2-5-1-3図 サービス輸入の推移
例えば、人口1千4百万人(常住人口)を超える世界最大の都市、中国・上海市では、近年、第三次産業の成長が著しい。2000年時点では、第二次産業とほぼ同じ2千億元だった第三次産業のGDPは、その後急速な伸びを続け、2014年には第二次産業の2倍近い1兆5千億元に達し、GDP全体の65%を占めるに至っている(第Ⅰ-2-5-1-4図)。
第Ⅰ-2-5-1-4図 中国・上海市の産業別GDPの推移
こうした上海市の産業構造の変化を反映して、海外から上海市への直接投資も、近年、第3次産業への投資額が圧倒的に大きくなっている(第Ⅰ-2-5-1-5図)。
第Ⅰ-2-5-1-5図 中国・上海市への産業別直接投資額の推移
14 石油輸出国の場合、その多くは、新興諸国・地域に集中しているが、これら国・地域では、石油産業への依存度の高さを反映して、都市化の進展とは関係なく、サービス産業の比率は低い。
他方、島しょ諸国では、代表的なサービス産業の一つである観光産業への依存度が高い国・地域が多いことから、やはり、都市化の進展とサービス産業比率の間には明確な関係はみられない。