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- 第1部 第1章 第2節 資源価格の動向と見通し
第2節 資源価格の動向と見通し
資源と一口に言っても様々だが、本節では貿易収支、消費者物価指数等一国の経済に特に重大な影響を与える原油価格について取り上げる。2016年の原油価格に影響を与えた原油供給国の動き等の背景と今後2017年原油価格見通しについて述べる。
1.背景(原油供給国の動き)
2014年の原油価格の低迷の影響で、原油輸出に依存していた国家の財政状況が懸念されていた。その様な中、2016年11月30日のOPEC定例総会で8年ぶりに原油減産が正式に決定され、産油量を日量3250万バレル10に減らすことに合意した。OPEC加盟14か国の2016年10月の生産量(計3364万バレル)を基準にすると日量120万バレルの減産で、対象期間は2017年1月から6か月とした11。減産を主導してきたサウジアラビアと、増産意欲の強いイランの対立は、最終局面でサウジ側が歩み寄り減産合意に達した12(第Ⅰ-2-1-1表)。OPEC非加盟国も日量60万バレルの減産を行う方向でその中でもロシアは生産量を日量30万バレル削減することに合意した。
第Ⅰ-1-2-1-1表 主要OPECメンバー国の生産量水準割当(減産量)(tb/d)
このような原油減産合意を受け、IMFや世界銀行は2017年の平均原油価格は1バレル当たり50~51ドルと、2016年の40~43ドルより上昇すると予測している。
10 2016年9月のOPEC臨時総会で合意した3250~3300万バレルの下限レベルである。
11 なお,この総会で減産合意に参加しなかったインドネシアは,メンバーシップ停止となった。
12 イランはかねて経済制裁前の日量400(397.5)万バレルへの回復を主張し、今回の合意では現在の生産量のほぼ現状維持の、約380(379.7)万バレルの生産量を割り当てた。なお、イランは今年5月以降日量380万バレル超を生産し、制裁前の水準(400万バレル)に回復後、生産の固定化を予定していた。
2.今後の見通し
原油先物(WTI)価格は2016年2月に一時30ドルを割った後は上昇に転じ、12月のOPECと非加盟国の減産合意後は50ドル前後で推移しており、2017年4月現在まで大きな変動はない(第Ⅰ-1-2-2-1図)。
第Ⅰ-1-2-2-1図 2016年~2017年上期の原油価格推移
今後、原油在庫の変動幅にもよるが、夏季の石油需要等で消費が増加する見込みである。
2017年の動向については、多くの識者が需給の均衡が進み、価格も徐々に上昇基調になると見ており、40ドルを割る下落を想定する識者は少ない。一方、高水準の石油在庫(第Ⅰ-1-2-2-2図)や米国掘削リグ稼働数の継続的増加による将来のシェール生産増(第Ⅰ-1-2-2-3図)等から、世界的な原油供給過剰の恐れがなくなったとは言えない。1バレル50ドル台以上であればシェール生産が今後も増える可能性が大きい。増加基調を維持する稼働リグ数の推移はパイプライン状態の油田が完成すれば原油生産の更なる押し上げにつながっていく。また、OPECと非加盟国の減産合意の動向が鍵になるとみられる。OPECと非加盟国の産油量調整の協調を今後も中東の盟主であるサウジアラビアなどがまとめられるかが鍵になるとみられる。
第Ⅰ-1-2-2-2図 EIA原油在庫数推移
第Ⅰ-1-2-2-3図 米国原油リグ数の増加