第4節 ローカル企業の生産性向上
1.背景
人口減少・少子高齢化の進展や国際競争の激化、人手不足など、中小企業・小規模事業者・中堅企業を取り巻く事業環境は厳しさを増しており、足下では生産性が低迷し人材確保や事業の持続的発展に懸念が存在している。特に、中小企業の生産性は大企業と比べて、二分の一程度となっており、その格差が拡がっている(第Ⅲ-5-4-1図)。
第Ⅲ-5-4-1図 大企業と中小企業の生産性格差
そこで、必要となるのが中小企業の生産性や収益力を正面から捉えた仕組みである。産業構造も、サービス産業化の波によって、大きく変わっている。サービス産業は、雇用の七割を支え、地方では、飲食業や医療や介護が主要な産業となっている。一般的に、海外と比べても生産性が低い状況にあるため、いかに「稼ぐ力」を高められるかが問題となる。中小企業・小規模事業者等の生産性向上を支援することにより、海外展開も含め、将来の成長・発展のための経営強化(「稼ぐ力」の強化)を図ることが必要であり、経済産業省では、以下に記載する中小企業等経営強化法を軸にローカル企業の生産性向上に取り組んでいる。
2.中小企業等経営強化法の創設
平成28年7月1日に中小企業等経営強化法を施行した。本法では、事業所管大臣は、基本方針に基づき、事業分野ごとに経営力向上の方法等を示した「事業分野別指針」を策定する。中小企業・小規模事業者等は、事業分野別指針に沿って、顧客データの分析を通じた商品・サービスの見直し、ITを活用した財務管理の高度化、人材育成等により経営力を向上して実施する事業計画(「経営力向上計画」)について、国の認定を得ることができる。認定事業者は、固定資産税の軽減措置や低利融資等の金融支援措置を受けることができる。同時に、商工会議所、商工会、地域金融機関といった地域の支援機関が、中小企業・小規模事業者の取組を促すなど支援を行う(第Ⅲ-5-4-2図)。
第Ⅲ-5-4-2図 中小企業等経営強化法のスキーム
平成29年度税制改正では、固定資産税の軽減措置について、これまで対象設備が機械装置に限定されていたが、サービス業を含めて幅広い業種が利用できるよう一定の器具備品、建物附属設備等にも対象を拡大するとともに、法人税においても、即時償却の対象を拡大する「中小企業経営強化税制」を創設した(第Ⅲ-5-4-3図)。これらの施策により、中小企業の生産性向上につながる設備投資を後押ししていく。
第Ⅲ-5-4-3図 中小企業等経営強化法に基づく税制措置の概要