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- 第2部 第3章 第1節 我が国の対外貿易投資動向
第3章 我が国の対外経済関係の現状と課題
第1節 我が国の対外貿易投資動向
1.財貿易の動向
(1)財貿易動向の概観
2018年の我が国の財貿易は、輸出入ともに拡大したものの、輸入額の伸び(+9.7%)が輸出額の伸び(+4.1%)を上回り、2015年以来、3年ぶりの貿易赤字となった。輸出額は81兆4,788億円、輸入額は82兆7,033億円、貿易収支は1兆2,246億円の輸入超過であった(第Ⅱ-3-1-1図)。
第Ⅱ-3-1-1図 我が国の貿易収支の推移(年別)
我が国の品目別の輸出割合については、輸出全体の23%を自動車や自動車部品等の輸送用機器が占め、一般機械が20%、電気機器が17%と次ぐ。(第Ⅱ-3-1-2図)。
第Ⅱ-3-1-2図 我が国の対世界輸出の商品別割合(額)
推移に関しては、2018年を通じて4.1%増加したものの、月別の推移に着目すると前半については前年同月比でプラスであったもの、9月、12月については前年同月比でマイナスとなり、年後半にかけて我が国の輸出が減速したことが分かる。品目別の輸出推移に着目すると、年後半の落ち込みが、特に一般機械及び電気機器の輸出減少によるものだと分かる(第Ⅱ-3-1-3図)。
第Ⅱ-3-1-3図 我が国の品目別輸出(主要製品分解)
一般機械と電気機器の輸出について、国・地域別でみると、年初から、韓国、台湾への輸出に関しては減少していた(第Ⅱ-3-1-4図)、(第Ⅱ-3-1-5図)。このような落ち込みの背景の一つとして、「半導体サイクル」と呼ばれる半導体市場の景気循環が下降局面にあり、世界的な半導体関連製品等の需要が落ち込んだことが考えられる(第Ⅱ-3-1-6図)。
第Ⅱ-3-1-4図 我が国の対世界一般機械輸出の対前年同月比
第Ⅱ-3-1-5図 我が国の対世界電気機器輸出の対前年同月比
第Ⅱ-3-1-6図 半導体サイクル
2018年の前半は、引き続き好調であった対中輸出によって、対世界では輸出が増加していた。一方で、2018年11月からは、中国経済の減速によって、対中輸出についても落ち込み、一般機械・電気機器の双方において、2018年11月から2019年1月にかけて、対前年同期比のマイナス幅が拡大していった。
我が国貿易統計の輸入額の推移について、価格要因と数量要因に分解すると、2018年は、数量要因については前年同月を下回った月も多く、年を通じて0.6%の増加にとどまったものの、価格要因については、一貫して増加し続けた(第Ⅱ-3-1-7図)。
第Ⅱ-3-1-7図 我が国輸入額の対前年同月比要因分解
品目別の輸入割合については、鉱物性燃料が最も多く、輸入全体のおよそ4分の1を占め、電気機械(15%)、化学製品(10%)と一般機械(10%)が次ぐ(第Ⅱ-3-1-8図)。また、各品目の月別推移(前年同月比)については、2017年に引き続き、鉱物性燃料が年を通じて輸入の増加に最も寄与し続けたことが分かる(第Ⅱ-3-1-9図)。
第Ⅱ-3-1-8図 我が国の対世界輸入の品目別割合(額)
第Ⅱ-3-1-9図 我が国の品目別輸入(前年同月比)
日本の輸入の増加の主因となった鉱物性燃料について品目別に、価格要因・数量要因に分解すると、2018年は、原油及び粗油、液化天然ガスの双方について、輸入量については減少した一方で、価格が上昇した。その結果、鉱物性燃料全体としては、輸入額が減少した2015年~16年から一転し、2017年から2年連続で、20%以上輸入額が増加した(第Ⅱ-3-1-10図)。
第Ⅱ-3-1-10図 鉱物性燃料の輸入額前年比推移と、その要因分解
資源価格の代表的指標であるWTI原油先物価格の同時期の値をみると、第Ⅰ部第2章第2節で見たように2018年10月には2016年年初から2倍程度の額になっており、世界的な資源価格の上昇が、日本の輸入額の増加に寄与したと思われる。
(2)国・地域別貿易動向
日本の国・地域別の輸出額については、対中輸出について、2018年は過去最高の15兆8,977億円であり、米国向けが15兆4,702億円で続いた(第Ⅱ-3-1-11図)。
第Ⅱ-3-1-11図 対世界輸出額推移
輸入についても、中国からの輸入が最も多く19兆1,937億円で、対世界輸入に占める割合は23.2%である。ASEANからの輸入が12兆3,991億円で続いた(第Ⅱ-3-1-12図)。なお、中東からの輸入の内訳は、2018年では鉱物性燃料が95.6%を占めている。同地域からの輸入額については資源価格の変動により大幅に上下する。
第Ⅱ-3-1-12図 対世界輸入額推移
①対米貿易
ここで、我が国からの輸出の約4割、輸入の約3割4分を占める米国と中国との貿易状況に関して検討する。
我が国と米国の貿易構造は、日本から完成車等を、米国から液化天然ガス、液化石油ガスなどの鉱物資源や航空機、医薬品等を輸出する最終財貿易を特徴とする水平分業構造となっている。加えて、日系企業現地工場等に向けた自動車部品等の中間財輸出も多い。近年では、我が国から海外への生産移転を背景に、映像機器、パソコンを筆頭に輸出数量が減少している(第Ⅱ-3-1-13図)、(第Ⅱ-3-1-14図)。
第Ⅱ-3-1-13図 貿易構造(2016年/日本から米国への輸出)
第Ⅱ-3-1-14図 貿易構造(2016年/日本の米国からの輸入)
2018年の品目別の対米輸出推移については、好調であった2017年との前年同月比において、各品目において横ばいに推移し、全体としては2.3%増加した(第Ⅱ-3-1-15図)。また、品目別の対米輸入については、原油や石炭の価格高騰を背景に2018年は対前年同月比で10%以上の伸びを記録した月が、5カ月あった(第Ⅱ-3-1-16図)。
第Ⅱ-3-1-15図 対米輸出推移グラフ(品目別寄与度)
第Ⅱ-3-1-16図 対米輸入推移グラフ(品目別寄与度)
②対中貿易
対中国の貿易構造は、我が国から中国に中間財を輸出し、現地で組み立てを行い、我が国や米国等の消費地に輸出するという垂直的な生産分業構造となっている。そのため、中国の対米国や対欧州向け等の輸出が減ると、我が国の中国への中間財輸出も減少する。また昨今は、中国の市場拡大とともに中国内需向けの輸出が拡大しているが、足下では中国の内需減少を受け我が国の対中輸出は減少している。対中輸入は、電気機器と一般機械が大半を占めている。電気機器の中ではスマートフォンやスマートフォン関連部品の額が多く、一般機械としては、パソコンやパソコン周辺部品が多い。中国国内にて、ハイテク機器を安価で製造可能となったためである(第Ⅱ-3-1-17図)、(第Ⅱ-3-1-18図)。
第Ⅱ-3-1-17図 貿易構造(2016年/日本の中国への輸出)
第Ⅱ-3-1-18図 貿易構造(2016年/日本の中国からの輸入)
2017年から月ごとの主要品目別の輸出額の推移を見ると、2018年後半までは、一般機械によって対中向け輸出の拡大が牽引されてきたが、2018年末には、一般機械や電気機器等のほとんどの品目で前年同月比でマイナスとなった(第Ⅱ-3-1-19図)。各品目別の推移に着目すると、年の半ばから金属加工機械や工作機械において、前年同月比でマイナスとなった。これらの減少については、設備更新による一時的な需要が一服したことが考えられる。一方で、11月から12月にかけては、主要品目の多くについて、前年同月比でマイナスとなり、2018年末の中国経済の減速の影響が日本の輸出減少に寄与していると考えられる(第Ⅱ-3-1-20表)。
第Ⅱ-3-1-19図 対中輸出推移グラフ(品目別寄与度)
第Ⅱ-3-1-20表 我が国の対中輸出主要品目額の推移(対前年同月比)
第Ⅱ-3-1-21図 対中輸入推移グラフ(品目別寄与度)
2.経常収支の動向
2018年の我が国の経常収支は19兆2,222億円と、4年ぶりに対前年比で減少(▲13.0%)となった。減少の主な要因は、貿易収支242黒字が前年比4分の1と大幅に減少したことにある。
東日本大震災以前の2010年までは、貿易収支と第一次所得収支の双方で経常黒字となっていた。2011年以降2015年まで貿易収支が赤字に転じ、第一次所得収支による黒字によって、経常黒字が実現されていた。2016年以降も主に第一次所得収支によって経常黒字が実現されている構造となっている(第Ⅱ-3-1-22図)。
第Ⅱ-3-1-22図 我が国の経常収支の推移(年別)
我が国の経常収支の太宗を占める第一次所得収支については、2018年の我が国の第一次所得収支は、20兆8,533億円の黒字であった。現在の我が国の経常収支黒字のほぼすべてが第一次所得収支によるものである(第Ⅱ-3-1-23図)。
第Ⅱ-3-1-23図 我が国の第一次所得収支の推移(年別)
サービス収支については、2018年の我が国のサービス収支は▲8,062億円の赤字であった。
2017年との比較では赤字幅を拡大したものの、2016年以前の水準と比べると大きく縮小している。サービス収支の赤字幅縮小に寄与しているのは、旅行と知的財産権等使用料の2項目である。2018年には、我が国の旅行収支は2兆4,161億円、知的財産権等使用料の収支は、2兆6,220億円と、両項目とも過去最大となった(第Ⅱ-3-1-24図)。知的財産権等使用料は、産業財産権等使用料と著作権等使用料に分かれ、前者には商標権などの使用料、技術情報の使用料が、後者にはソフトウェア、音楽、映像などを複製するための使用料が含まれる。日本の知的財産権等使用料の黒字は、産業財産権等に関連するものによるものであり、著作権等は、赤字が続いていることが分かる(第Ⅱ-3-1-25図)。
第Ⅱ-3-1-24図 我が国のサービス収支の動向
第Ⅱ-3-1-25図 知的財産権等使用料収支内訳の推移
242 国際収支統計上の貿易収支では、輸入に係る輸送料・保険料はサービス収支にカウントされるため、貿易収支内の「輸入」の数値は、貿易統計上での貿易収支の「輸入」より小さい金額となる。
3.金融収支の動向
2018年の我が国の金融収支は、20兆49億円であった。金融収支は、「直接投資」、「証券投資」、「金融派生商品」、「その他投資」、「外貨準備」に分かれる。「直接投資」は、海外での工場建設やM&A(合併・買収)等を指す。
2018年の直接投資(ネット)は、14兆7,198億円で過去3番目の金額であった。証券投資については、9兆9,765億円であった(第Ⅱ-3-1-26図)。
第Ⅱ-3-1-26図 我が国の金融収支の動向
4.投資の動向
我が国の2017年末時点での対外直接投資残高は、174兆6,990億円であり、前年比+10.0%と7年連続での増加となった。UNCTADのデータによると、世界全体の対外直接投資残高の4.9%を占めている。2016年から0.5pt下がったものの、我が国はEUや米国に次ぐ対外直接投資大国である(第Ⅱ-3-1-27図)。
第Ⅱ-3-1-27図 世界の国・地域別直接投資残高の割合(2017年末時点)
また、製造業・非製造業別に残高をみると、2008年に非製造業の残高が製造業を上回り、2017年末時点で製造業が70兆1,469億円、非製造業が98兆5,990億円となっている(第Ⅱ-3-1-28図)。我が国は、米国に対しての投資残高が最も多く、54兆2,595億円で、英国への残高が17兆197億円で続いた。米国向けは、金融・保険業の割合が大きく、金額としては12兆4,517億円であった。英国向けは、他主要国国向けと比較してサービス業の割合が多く、製造業の割合が小さい。一方、中国、ドイツ向けでは、比較的製造業の割合が大きい。フランス向けでは、卸売・小売業の割合が際立って大きい(第Ⅱ-3-1-29図)。
第Ⅱ-3-1-28図 我が国の対外直接投資残高の推移(2017年末時点)
第Ⅱ-3-1-29図 我が国の主要国別対外直接投資残高と業種別割合
我が国の対外直接投資(残高)の多い国、すなわち、日本からの対内直接投資の多い国である米国と英国の対内直接投資をOECD Statisticsで見ると、我が国は、米国にとって2番目の対内直接投資実施国であり、英国にとっては6番目の対内直接投資実施国となっている(第Ⅱ-3-1-30図)、(第Ⅱ-3-1-31図)。
第Ⅱ-3-1-30図 米国への対内直接投資ランキング(2017年末時点、ストック、ネット)
第Ⅱ-3-1-31図 英国への対内直接投資ランキング(2017年末時点、ストック、ネット)