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- 第3部 第2章 第2節 欧州
第2節 欧州
1.EUを巡る動き
欧州連合(EU)は、28か国が加盟、人口約5億人、GDPは世界全体の2割以上を占める政治・経済統合体である。EUは、域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場であり、単一通貨のユーロには、19か国が参加している。我が国とEUは、民主主義や人権、法の支配といった基本的価値観を共有する戦略的パートナーである。
2019年1月には、日 EU 間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠組みが、2019年2月には日EU経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)が発効し日EU関係は新しい時代に入った。国際条裡において緊密に連携していくべく、今後更に日EU経済関係の深化させていくことが重要。
・日EU経済連携協定(EPA)
2013年3月に行われた日EU首脳電話会談において、日EU・EPAの交渉開始に合意。交渉において、日本側はEU側の鉱工業品等の高関税の撤廃(例:乗用車10%、電子機器最大14%)や日本企業が欧州で直面する規制上の問題の改善等を要望。他方、EU側は、農産品等の市場アクセスの改善、非関税措置(自動車、化学品、電子機器、食品安全、加工食品、医療機器、医薬品等の分野)への対応、地理的表示(GI)の保護、政府調達、持続可能な開発等を要望。2017年4月までに計18回の交渉会合が開催された後、同年7月に大枠合意、同年12月には、安倍内閣総理大臣とユンカー欧州委員会委員長が電話会談を実施し、交渉妥結に達したことを確認した。2018年7月に署名がされた後、2019年2月1日に発効。日EU・EPAは、日EU双方の経済界からの期待に応えるものであり、日EUが貿易自由化の旗手として世界に範を示すもの。世界のGDPの約3割、世界貿易の約4割を占める日EUによる世界で最大級規模の自由な先進経済圏が新たに誕生。我が国にとっての経済効果は、実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ、雇用を約0.5%(約29万人)増加させる見込み。
2.英国のEU離脱を巡る動き
2017年3月29日、英国政府はリスボン条約第50条に基づきEUに対して正式に離脱の意思を通告。6月19日には、英EU間の交渉開始。2018年11月14日には、「離脱協定」及び「将来関係に関する政治宣言」の概要が英国閣議で承認され、25日には、欧州理事会で承認された。しかし、英国議会下院において2019年1月15日には、離脱協定案等についてで否決され、3月12日にも再度否決された。一方で、「合意なき離脱」に反対する動議及び離脱期限延期に関する動議は可決された。3月21日の、欧州理事会では、離脱協定が英国議会で承認された場合には5月22日まで、承認されない場合には、4月12日まで離脱期限を延期することが承認されたものの、3月29日までに承認の見込みは立たず、離脱期限は4月12日まで延長された。
こうした不透明な状況を受け、離脱による影響を最小化すべく日本政府として以下のとおり対応。
①政府から英EU双方への働きかけ
日系企業の現状・ニーズを踏まえ、移行期間の設置による法的安定性・予見可能性の確保等、企業の要望について、英・EU双方に対する働きかけを継続。
②海外政府・産業界の対応等についての情報収集
ジェトロ等とも連携しつつ、交渉の見通しやクリフエッジシナリオへの対応も含め情報収集を継続。
③相談窓口等を通じた情報提供
ジェトロ等に設置した相談窓口やウェブページ、セミナー開催等を通じた、企業への情報提供を継続。
④コンティンジェンシープランの構築
「合意なき離脱」(No-deal)の可能性も踏まえ、事業者によるコンティンジェンシープランの検討を慫慂。
⑤将来の日英経済的パートナーシップに係る検討
日EU・EPAを踏まえた将来の日英経済的パートナーシップに向けて検討。
3.日EU及び日欧二国間を巡る動き
(A)日EU関係
・第25回日EU定期首脳協議(2018年7月17日)
両首脳は、5年以上に及ぶ交渉を経て、日EU・EPA及びSPAに署名。安倍総理は、両協定の署名は、日EU関係をより高い次元に引上げる価値のある画期的なものであるとの認識を示した上で、EPAへの署名は、保護主義的な動きが世界で広がる中、日本とEUが自由貿易の旗手として、世界をリードしていくとの揺るぎない政治的意思を世界に鮮明に示すものであり、EPAを礎に、今後も日EUが自由貿易の旗手として、WTOを中心とする多角的自由貿易体制を堅持、発展させていきたい旨発言。これに対し、トゥスク議長から、欧州と日本は地理的には遠く離れているが、日EUが政治的にも経済的にも、これ程までに近づいたことはない旨応答。また、ユンカー委員長から、日EU・EPAは、公平性と価値を核とした協定であり、世界に対して範を示すものである旨発言。安倍総理より、日EU当局間で相互に認定をすることで一致し、日EU間の相互の円滑な個人データ移転の枠組みを実現するために2018年秋までに双方の必要な手続を完了することにコミットしたことを歓迎。これに対し、ユンカー委員長は、データフローの重要性を指摘しつつ、関係者の努力に敬意を表明。
・日EUハイレベル対話(2018年10月22日)
世耕経済産業大臣、河野外務大臣、カタイネン欧州委員会副委員長の間で第1回ハイレベル産業・貿易・経済対話を開催。①国際貿易、②エネルギー・環境、③投資、④デジタル経済の4つをテーマに、早期発効が期待される日EU・EPAを基盤に、更なる協力関係を深めるべく「ビヨンドEPA」に焦点をあてた未来志向の議論を実施。
・日EU首脳会談(2018年12月1日)
安倍総理は、日EU・EPAが欧州議会国際貿易委員会で可決されたことを歓迎。両首脳は、日EU・EPAに関する双方の国内手続を年内に終えることが極めて重要である旨を再確認。安倍総理から、英国のEU離脱プロセスが、日系企業や世界経済への悪影響が最小限となるよう、円滑に進むことを期待する旨発言。両首脳は、世界経済の成長に向けて、WTO改革等について、G20が一致したメッセージを発信するべきであるという認識を共有するとともに安倍総理から、日本が議長国を務めるG20大阪サミットに向けた協力を要請。
(B)日英関係
・日英首脳会談(2019年1月10日)
両首脳は、ルールに基づく国際秩序や自由貿易といった普遍的価値が挑戦を受ける今日、G20等の場で日英が主導的役割を果たす必要があることで一致。両首脳は、本年のG20で、共に自由貿易の推進やイノベーションを通じて世界経済の成長を牽引し、経済成長を目指すと同時に、格差への対処に取り組むこと、更に、気候変動や海洋プラスチックごみ等環境・地球規模課題への貢献について協力すること、併せてWTO改革について、日英両国で協力していくことに合意。安倍総理大臣から、英国のEU離脱に関する最終的な判断は英国民が行うものであると述べた上で、「合意なき離脱」は是非回避してほしいと要望。
(C)日独関係
・日独首脳会談(2019年2月4日)
両首脳は、2018年6月及び10月に続けて、首脳会談を実施。WTO改革を始め、自由で開かれた経済システムの維持・強化のために日独で連携していくこと、G20大阪サミットの成功に向けて協力していくことで一致した。また、両首脳は、「Industry4.0」を掲げるドイツと「Society5.0」を掲げる日本の間で連携を強化し、第四次産業革命、先端技術を活用した豊かな未来社会の創造を日独でリードしていくことで一致し、自動運転やAI、IoT分野で共同研究を強化することを確認した。また、両首脳は、2019年2月1日の日EU・EPAの発効を歓迎し、世界最大の自由な先進経済圏の下、両国の経済関係を一層発展させていくことを確認した。
(D)日仏関係
・日仏首脳会談(2018年10月17日)
両首脳は、日仏友好160年である本年、二国間関係が飛躍的に深化していることを確認しつつ、来年はお互いにG20とG7の議長であり「特別なパートナー」として、緊密に連携していくことで一致した。安倍総理から、明年のG20では、経済成長と格差対応の同時達成、開発・地球規模課題への貢献を通じ議論をリードしたい旨述べた。両首脳は、人工知能等のデジタル分野やスタートアップ政策について、日仏間で戦略的に協力を進めていくことで一致した。両首脳は、保健、教育、海洋ごみを含むSDGs達成や、パリ協定運用開始を視野に、気候変動分野で機運を高めるべく協力していくことで一致した。
(E)その他の二国間関係
・日スペイン首脳会談(2018年10月16日)
両首脳は共同声明を発出し、日・スペイン関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、日本貿易振興機構(JETRO)とスペイン貿易投資庁(ICEX)の協力含め幅広い分野における戦略的な協力を一層推進していくことを確認した。サンチェス首相から、日スペイン、日EU関係の両面について深化させたい旨発言があり、安倍総理から、両国は基本的価値を共有する重要なパートナーであり、スペインはEUにおいて枢要な役割を果たしている旨応答した。
・第12回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合(2018年10月18日~19日)
今次首脳会合はEUがホストし、計3つのセッションで議論が実施された。日本は、北朝鮮問題や海洋安全保障等の喫緊の国際課題について、ASEMから力強いメッセージを発出すべく議論をリードするとともに、アジア及び欧州地域における、自由で公正なルールに基づく経済秩序の強化や、持続可能な連結性の強化に資する「質の高いインフラ」の国際スタンダード化を推進するべく、日本の立場を発信した。
・「V4+日本」首脳会合(2018年10月18日)
安倍総理とV4各国首脳は、5年ぶりの首脳会談開催を歓迎し、普遍的価値を共有するパートナーとして、今後も「V4+日本」枠組みの下での協力を強化していきたいとの意向を表明。また、V4各国首脳は日本の「西バルカン協力イニシアティブ」を評価。今後の展望として、安倍総理より政治対話の継続、観光・人的交流の拡大、防災、環境といった分野での協力の議論を進めていきたい旨発言。これに対し、V4各国首脳より、V4側としても、科学技術、西バルカンにおける経済協力等の分野で協力を拡大させたい旨発言。
・日伊首脳会談(2018年10月19日)
安倍総理から、基本的価値を共有する重要なパートナーである日本とイタリアが、北朝鮮問題や自由貿易の推進等の世界が直面する主要課題を前に、緊密に連携していきたい旨発言し、これに対し、コンテ首相から、長きにわたる友好関係を有する両国関係をこれまで以上に発展させていきたい旨応答した。
・日蘭首脳会談(2019年1月9日)
安倍総理からは、本年のG20では、経済成長と格差への対処の同時達成、環境・地球規模課題への貢献を通じて、緊密に連携していきたい旨発言。両首脳は、気候変動、海洋プラスチックごみ問題への対応や高齢化社会を始めとする社会的課題の解決へのイノベーションの活用につき、両国で協力していくことで一致した。
・日オーストリア首脳会談(2019年2月15日)
両首脳は、2018年10月に続けて首脳会談を実施。自由で開かれた経済システムの維持・強化のために日・オーストリアで連携していくことを確認。安倍総理大臣から、昨年1月に発表した「西バルカン協力イニシアティブ」について説明し、両首脳は、西バルカン地域の欧州統合支援のため協力していくことで一致した。