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- 第3部 第2章 第3節 中国
第3節 中国
中国はGDP世界第2位の経済大国であり、日本と緊密な経済関係を有する重要な隣国である。日中関係は、2017年に日中国交正常化45周年、2018年に日中平和友好条約締結40周年という節目の年を迎え、特に2018年5月に開催された日中韓サミット及び日中首脳会談、同年10月に実施された安倍総理の中国訪問等を契機に、日中関係の進展が見られている。
2019年の施政方針演説等において、安倍総理は、首脳間の往来を重ね、政治、経済、文化、スポーツ、青少年交流を始め、あらゆる分野、国民レベルでの交流を深めながら、日中関係を新たな段階へと押し上げて行く方針を示している。こうした方針に基づき、今後、政府間、官民による日中経済交流や民間企業間のビジネス協力の後押し等を通じて、日中経済関係のさらなる強化を目指していく。
2018年4月16日には第4回日中ハイレベル経済対話が東京で開催された。2010年以来約8年ぶりの開催となり、日本側からは河野外務大臣、世耕経済産業大臣他が参加し、中国側からは王毅国務委員兼外交部長、鍾山商務部長他が出席し、マクロ経済政策、日中間の経済分野における協力と交流、第三国における日中協力、東アジアにおける経済連携及び地球規模課題への対応等について議論した。
経済産業省の関係では、以下の点において主な成果があった。
①第三国での日中のビジネス協力について、意思疎通を維持し、官民の関係者による議論の場及び具体的な進め方、協力案件を検討することを確認
②サービス産業協力の枠組みとして、「日中サービス協力メカニズム」の構築、高齢化分野でのシンポジウムの開催を提案し、協力の方向性について確認
③過剰生産能力、補助金の在り方、外資開放、知財権保護、サイバーセキュリティ、輸出管理等を巡る公平な競争条件の確保、公正かつ自由で開かれたビジネス環境の整備の必要性について伝達
なお、4月15日には世耕経済産業大臣が、日中ハイレベル経済対話に合わせて来日した鍾山商務部長及び張勇国家発展改革委員会副主任とそれぞれ会談を行った。
2018年5月9日に第7回日中韓サミットが東京で開催された。この機会を活かして、安倍総理と李克強総理の間で会談が行われた。両首脳は4月に行われた日中ハイレベル経済対話の議論も踏まえ、経済産業省関連では主に以下の点について一致した。
①RCEPや日中韓FTAの交渉についても連携を強化すること
②第三国における日中民間経済協力について、日中ハイレベル経済対話の下、省庁横断・官民合同で議論する新たな「委員会」を設け、具体的な案件を議論していくこと、また、民間企業間の交流の場として「フォーラム」を安倍総理の訪中の際に開催すること
また、安倍総理からは、開放性、透明性、経済性、財政健全性等の国際スタンダードが確保されることを踏まえた上で、個別案件ごとに協力の可能性を検討するとの日本の立場を改めて説明した。
なお、9日午前中に世耕経済産業大臣は、日中韓サミットのために来日した鍾山商務部部長及び何立峰国家発展改革委員会主任と会談を行った。
2018年9月12日にロシア・ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムにおいて、安倍総理と習近平国家主席の間で日中首脳会談が行われ、日中双方は以下の点について一致した。
①2018年が日中平和友好条約署名・締結40周年であると同時に、中国の改革開放40周年であることから、この40年の両国の歩みを振り返り、互いに原点を再確認する好機であること。
②ハイレベル往来等を通じ、現在の関係改善の流れを政治、経済、外交、海洋・安保、文化、国民交流等あらゆる分野における具体的な成果に繋げ、日中関係を前進させていくこと。
③2018年5月の李克強総理訪日の際のやり取りを踏まえ第三国協力を推進することや、イノベーション及び知的財産に関する対話を深めていくこと。
2018年10月25日から27日にかけて、安倍総理が日本の総理大臣として約7年ぶりに中国を訪問した。
安倍総理の中国訪問にあわせて、「第1回日中第三国市場協力フォーラム」が開催され、日本側から安倍総理、世耕経済産業大臣、河野外務大臣が出席し、中国側からは李克強総理、鍾山商務部長、何立峰国家発展改革委員会主任が出席した。日中の経営トップも含めて約1,500名の参加を得て、活発な議論が行われ、日中の政府関係機関・企業・経済団体の間で52件の協力覚書が署名交換された。またこの機会を活かして安倍総理は李克強総理と首脳会談を行い、経済産業省の関係では、以下の主な成果があった。
①日中双方は、2018年10月に開催された「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」及び今回の「日中第三国市場協力フォーラム」が開催されたことを受け、国際スタンダードに合致し、第三国の利益となる企業間協力を推進することで一致。また、フォーラムにおいて日中民間企業・団体間で52本の協力覚書が締結されたことを歓迎。
②日中双方は、イノベーション及び知的財産分野に関する新たな日中間の対話を創設することで一致、本件に関する覚書の署名を歓迎。
③日中双方は、RCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉加速化を目指すことで一致した。また、WTO改革を進めていくことで一致。
更に安倍総理は習近平国家主席とも首脳会談を実施し、経済分野については以下のやり取りが行われた。
①両首脳は、2018年5月の李克強総理の訪日及び今回の安倍総理の訪中を通じ、第三国民間経済協力、イノベーション及び知的財産に関する新たな日中対話、金融協力の深化等について多くの成果が得られたことを歓迎した。
②日本産食品の輸入規制解除について、安倍総理から早期実現を改めて要請。
なお、10月26日には世耕経済産業大臣が、鍾山商務部長と会談を行った。
2018年11月25日には、北京にて第12回日中省エネルギー・環境総合フォーラムが開催され、両国合わせて800名を超える官民関係者が参加した。日本側からは世耕経済産業大臣、宗岡日中経済協会会長他、中国側からは、何立峰国家発展改革委員会主任、張勇国家発展改革委員会副主任、銭克明商務部副部長他が出席した。午前中に行われた全体会合では世耕経済産業大臣があいさつを行い、地球規模課題である水素エネルギーの活用や海洋プラスチックごみ対策等に関する協力の推進について述べた。午後には5つの分科会が開かれ、日中双方の実務者レベルの意見交換を行った。また、今回のフォーラムでは新規24件の日中間の協力プロジェクトについて合意文書が交換され、第1回からの累計は362件に達した。
なお、同日、世耕経済産業大臣は何立峰国家発展改革委員会主任と会談を行い、エネルギー・環境協力に加えて、経済政策全般、第三国資料での協力プロジェクトの組成等について意見交換を行った。
2018年11月30日にはアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたG20サミットにおいて、安倍総理と習近平国家主席の間で日中首脳会談が行われた。日中双方は、2018年10月の安倍総理訪中の際に、自由で公正な貿易を発展させていくことで一致したことを踏まえ、G20での協力を含め、世界経済について時間を割いて議論を行った。安倍総理からは、日本はWTO体制を一貫して重視しており、自由貿易体制の維持・強化に尽力してきている旨を述べ、日本が主導してきたTPP11が12月30日に発効することは、この観点から大きな成果であることを紹介した。その上で、RCEP交渉について、世界に誇れる質の高い協定の早期妥結を目指して日中で連携していくことの重要性を確認し、日中韓FTAについても、交渉を加速していくことで一致した。
また、両首脳は、米中関係を念頭に、米国との関係について意見交換を行った。安倍総理からは、G20での米中首脳会談では、貿易・投資をめぐる問題を含め、習近平国家主席とトランプ大統領との間で有益な議論が行われること、両国がG20全体の議論に建設的に貢献することを期待している旨を述べた。その上で、安倍総理からは、問題の根本的な解決のためには、産業補助金、知的財産、強制技術移転等について中国が具体的な措置を講じることが重要であることを指摘した。さらに、安倍総理からは、インフラ開発の在り方についても、習近平国家主席が2018年11月のAPECで、高い質で進めていく旨強調していたことを踏まえ、国際スタンダードに沿うことの重要性を改めて指摘し、日中間でも意思疎通を強化していくことで一致した。