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- 第3部 第2章 第4節 ASEAN・大洋州
第4節 ASEAN・大洋州
ASEAN地域の経済には、安価な人件費等を背景に日系企業が構築してきた生産ネットワーク、急増する中間層・富裕層が牽引する消費市場といった特徴がある。最近はこれらに加え、ASEAN各国から革新的なスタートアップが生まれ、域内のイノベーションを牽引する動きも見られる。日本は、こういったASEANのダイナミズムを取り込み、ASEANのパートナーとして互恵的な関係構築を目指す。
2018年8月、日ASEAN経済大臣会合がシンガポールにて開催され、日本から、デジタル経済と第4次産業革命の到来を日本・ASEAN双方の発展の好機とするための協力として、(1)コネクティッド・インダストリーズの展開をはじめとする産業高度化、(2)スタートアップへの支援、中小企業のデジタル化対応の促進に向けた知見共有、(3)知的財産やサービス貿易、電子商取引といった分野におけるルールの導入・実施の支援を3本柱とする「日ASEAN第四次産業革命イニシアティブ」を提案した。また、ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)よりASEANに対し、日系在ASEAN企業約7,000社の意見を集約した「10の提案」の説明が行われた。加えて、日ASEANのイノベーションに関するビジネス間連携を進めるための枠組みである「日ASEANイノベーションネットワーク」における取組みとして、イノベーション対話、マッチングイベントの開催、及び、ASEANビジネス・アドバイザリー・カウンシル(ASEAN-BAC)との共同によるイノベーションWGの活動について、日ASEAN経済協議会(AJBC)から報告された。
また同日開催された日メコン経済大臣会合では、2019年の日メコン経済大臣会合に向けて、「産業の連結性」、「ハードの連結性」、「ソフトの連結性」の三つの柱からなるメコン産業開発ビジョン2.0を策定することが閣僚間で合意された。
第Ⅲ-2-4-1図 ASEAN関連経済大臣会合
さらに、同年10月には東京で日メコン首脳会談を開催し、AI分野を含む産業人材育成支援やメコン産業開発ビジョン2.0の策定等を盛り込んだ、「日メコン協力のための東京戦略2018」を採択した。今後、本戦略をもとに、メコン地域の経済発展を支援していく。
経済産業省は、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を通じて、ASEAN及び東アジアの経済統合を支援している。2018年には、ERIAは2019年議長国のタイ政府からの要請を受け、「ASEAN Vision 2040」を策定したほか、日本政府からの要請に基づき、日尼国交60周年を記念研究として、国際連合開発計画(UNDP)と共同で「共通の未来:2つの海洋民主国家の共同事業(プロジェクト2045)」を実施している。また、ERIAはOECDと共同で、ASEANの中小企業政策指標の改訂となる「ASEAN中小企業政策指標2018」を作成したほか、国連貿易開発会議(UNCTAD)と共に「非関税措置データベース」の拡充を進める等、国際機関との協力体制のもと研究成果のアウトリーチに努めている。2018年、ERIAは設立10周年を迎え、8月のASEAN経済大臣会合の場においては、15か国の大臣が集い、設立10周年を祝するセレモニーが開催される等、ASEAN及び東アジア地域の経済発展を支えるにあたり不可欠な知的インフラという立場を確立している。今後も、非関税措置データベースの拡充等を通じ、ASEAN及び東アジアのさらなる経済統合の深化に貢献することが期待されている。
タイとは、2018年7月、世耕経済産業大臣とウッタマ工業大臣の間で人材育成や中小企業の成長促進等、「コネクティッド・インダストリーズ」のコンセプトを活用したタイ産業構造高度化に向けた今後の協力分野を確認する「枠組文書(Framework Document)」が交換された。引き続き、人材育成等の分野を含むタイの産業高度化に係わる協力を推進していく。
ベトナムとは、2018年10月、世耕経済産業大臣及びアイン商工大臣を共同議長として、第3回「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」を開催した。同委員会において、自動車や裾野産業、食品産業等の産業における協力、アジア太平洋地域における経済統合の推進や経済連携協定の実施等に関する協力、また電力や天然ガス等の資源・エネルギー分野における協力について議論が行われ、各分野において、引き続き、日ベトナム間の緊密な協力を進めることを確認した。両大臣は、同委員会において確認された協力事項をとりまとめた会議録に署名した。今後、本会議録に基づく協力を推進していく。
ミャンマーとは、2018年10月、日メコン首脳会議出席のためにアウン・サン・スー・チー国家最高顧問が訪日された機会に合わせて、ジェトロが「ミャンマー・投資カンファレンス」を実施した。また、「ティラワ経済特別区(SEZ)」の開発に官民一体で取り組み、2019年2月現在で103社と契約締結済みとなっている。2018年7月にはZone-B(次期開発区域)第1期が開業され、2019年半ばには第2期の開業を予定している。
マレーシアとは、2018年11月、世耕経済産業大臣とレズアン起業家育成大臣との間で、日マレーシア・ハラル協力に関する覚書が署名された。
オーストラリアとは、2018年7月、世耕経済産業大臣及びチオボー貿易・観光・投資大臣を共同議長として第1回経済閣僚対話を開催した。インド太平洋地域における自由で開かれた貿易、ルールに基づいた多角的貿易体制、公平な競争条件の確保等に向け、APEC、WTOやG20などを通じて協力することが確認された。また、2018年11月に豪州にて首脳会談が行われ、WTO電子商取引イニシアティブの重要性等や、2019年内のRCEPの交渉妥結目標と、日本が議長国を務める2019年のG20の成功に向けた緊密な協力が再確認された。併せて、インフラに関するファイナンス及び投資についての協力を進展させるため、日豪米の政府関係機関による覚書が署名された。