経済産業省
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第7節 ロシア

〈今後の方針〉

ロシア・CIS地域は、石油・石炭・天然ガスをはじめ、ウラン、レアメタル、レアアース等の鉱物・エネルギー資源が豊富である。一方、旧ソ連時代に建設されたインフラは老朽化が進んでおり、インフラ設備等の新規建設及び更新プロジェクトが多数存在し、これらを促進するため、我が国企業から、投資環境の改善ニーズが高まっている。

大統領や政府高官に権限が集中している国が多いことから、要人往来の機会を捉えたトップセールスが重要。特に、ロシアにおいては、2016年5月の首脳会談以降、8項目の「協力プラン」(下記注)の具体化に向けた動きが加速化している。今後、同プランの具体化を更に加速化させ、日露経済関係の深化を進める。

(注)(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大

2016年5月6日、ロシア連邦ソチで安倍総理大臣がプーチン大統領に8項目の「協力プラン」を提示。同年9月、世耕経済産業大臣がロシア経済分野協力担当大臣に任命され、同11月には「協力プラン」の具体化に関する日露ハイレベル作業部会が設置された。

〈主な進捗〉

2018年4月、世耕ロシア経済分野協力担当大臣がサベッタにある日本企業が建設に携わったヤマルLNGプラントを視察。また、モスクワにて世耕ロシア経済分野協力担当大臣がシュヴァロフ第一副首相及びオレシュキン経済発展大臣と会談を行い、日露当局間で精力的に協議を継続していくことで一致した。

同年5月、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムに、安倍内閣総理と世耕ロシア経済分野協力担当大臣が参加。同フォーラムでは両国首脳、世耕ロシア経済分野協力担当大臣の出席を得て日露ビジネス対話が行われた。また、モスクワにて日露首脳会談を行い、世耕ロシア経済分野協力担当大臣とオレシュキン経済発展大臣にて署名された「8項目の「協力プラン」の具体化に関する作業計画の改訂に関する共同声明」・「労働生産性向上の分野における協力に関する共同行動計画」・「デジタル経済に関する協力に係る共同行動計画」など日露間の協力覚書等67件の文書が署名され、両首脳は、日露経済協力の着実な具体化を歓迎した。また、両首脳は、モスクワのボリショイ劇場にて行われた、史上初の「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」の開催を歓迎した。

同年6月、世耕ロシア経済分野協力担当大臣は、サハ共和国を訪問し、8項目の「協力プラン」の下で進められている温室野菜栽培施設等の日露協力案件の現場を視察した。8項目の「協力プラン」がモスクワ等の大都市だけではなく、ロシアの各地方でも進展し、具体化していることを確認した。

同年9月、ウラジオストクで行われた日露首脳会談では、ハバロフスク空港新ターミナル建設・運営共同事業実施のための署名を含む日露間の協力覚書等51件の文書が署名された。両首脳は、極東地域での日露協力案件の進展を歓迎するとともに8項目の「協力プラン」の具体化を更に進め、日露経済関係を発展させていくことで一致した。

同年11月にシンガポールで行われた日露首脳会談で両首脳は、同年12月に貿易経済日露政府間委員会を東京で開催することを確認するとともに、8項目の「協力プラン」が着実に具体化していることを歓迎した。

同年12月にアルゼンチンで行われた日露首脳会談で両首脳は、2019年1月に安倍総理が訪露することや、2019年も日露経済協力が着実に進展していくように、日露相互間でより緊密に協力していくことを確認した。

同年12月、東京において世耕ロシア経済分野協力担当大臣と河野外務大臣、オレシュキン経済発展大臣が出席し貿易経済に関する日露政府間委員会第14回会合が開催され、日露の貿易・投資が近年順調に拡大していることを歓迎するとともに、今後も日露間の様々な分野で協力を深化させることで一致した。また、世耕ロシア経済分野協力担当大臣とオレシュキン経済発展大臣との会談が行われ、8項目の「協力プラン」の進展を確認するとともに、更なる日露の経済関係の強化や貿易投資の拡大に向け、引き続き協議を加速することで一致した。また、この会談に先立ち、世耕ロシア経済分野協力担当大臣とオレシュキン経済発展大臣の立ち会いの下、日露企業間のハバロフスク空港新ターミナル案件の株主間協定署名が行われた。

2019年1月、世耕ロシア経済分野協力担当大臣は、モスクワを訪問し、オレシュキン経済発展大臣及びマントゥロフ産業商務大臣と会談を行い、日本のノウハウ・経験を生かしたロシア企業の生産性診断および裾野産業の人材育成事業等の協力を含む、8項目の「協力プラン」の成果を確認し、協力を継続していくことに一致した。また、モスクワで行われた日露首脳会談では、日本企業のハバロフスク空港への経営参画等、日露経済協力の進展を歓迎するとともに、日露間の協力覚書等34件の文書が署名された。また、世耕ロシア経済分野協力担当大臣からは、裾野産業の人材育成事業等を始めとする8項目の「協力プラン」の成果を報告した。

8項目の「協力プラン」の個別分野では、「(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大」に関連し、2016年9月、ウラジオストクで行われた東方経済フォーラムの際、経済産業省とロシア連邦経済発展省が締結した、中堅・中小企業分野における協力のためのプラットフォーム創設に関する覚書に基づき、海外展開支援機関や、自治体、金融機関などからなる日本側プラットフォームを設立。プラットフォームメンバーであるJETROにロシア展開の専門家を配置し、戦略策定から販路開拓、パートナー探し、商談同行、契約締結まで一貫して個別企業支援を行う仕組みを整備し、一体的に支援を行い、一部の日本企業においては、実際にロシア企業との取引が成立するなど成果を得ている。また、2018年7月には、産業総合見本市イノプロムに参加し、中堅・中小企業を含む26の企業・団体が参加するジャパン・パビリオンを出展した。

また、「(4)エネルギー」に関連し、世耕経済産業大臣はノヴァク・エネルギー大臣との間で2016年11月、エネルギー・イニシアティブ協議会第一回会合を開催し、炭化水素、原子力、省エネ・再エネの各分野についてワーキング・グループを設置した。2017年1月の第二回会合では、各分野の協力プロジェクトについて、その早期の具体化を目指して協力を進めていくことを確認した。その後、第三回会合を同年4月、第四回会合を同年9月、第五回会合を2018年2月、第六回会合を同年4月に開催し、協力分野の具体化を進めている。

直近では、2018年9月、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とロシア連邦最大の民間天然ガス生産販売会社のノヴァテク社が、北極LNG2を含む上流開発に係る包括的協力を推進するための覚書を締結した。また、日本企業のバルティックLNGプロジェクトへの参画に関する覚書締結の他、資源エネルギー庁とロシアエネルギー省による運輸部門のエネルギー協力について共同声明への署名を行った。同年11月には、NEDOとルスギドロ及びサハ共和国の協力によるサハ共和国における風力発電を含むエネルギーインフラ実証の風車竣工式を実施した。更に、省エネルギーセンターは、ロシア青少年向けの省エネセミナーを同年6月と10月に実施した。これらの事業により、我が国のエネルギー供給源多角化・安定供給確保、日本のエネルギー技術の導入及び両国間の経済関係強化につながることが期待される。

「(5)ロシアの産業多様化・生産性向上」については、2016年8月、貿易経済に関する日露政府間委員会のもとに産業分野における協力に関する分科会を設立した。同分科会での議論を踏まえ、①高い技術力や生産性管理技術を備えた日本の専門家によるロシア企業のIT化を含めた生産性診断及び改善指導、②ロシアの裾野産業に従事する役員・ラインマネージャークラスを日本に招聘し、生産工場の現場視察や日本の管理技術・設備、IT化に関する研修等を行うこととなった。②については、日露政府間で合意した、2017年から2019年3月末までに計200名のロシア人研修性を受け入れるという目標を超える244名の研修生を受入れた。これら事業により、日本の最先端設備をロシア企業に導入することを目指すとともに、ロシア企業の生産性向上により、ロシアに進出している日系企業のロシア企業からの部品等の調達条件が改善され、ひいては日系企業の市場シェア拡大につながることが期待される。2019年度も同事業を継続していく。

8項目の「協力プラン」における横断的取組としては、2017年9月、世耕ロシア経済分野協力担当大臣とオレシュキン経済発展大臣との間で「労働生産性向上の分野における経験の交換に関する相互理解の覚書」が署名され、ロシアの労働生産性向上を進めていくことが確認された。この覚書に基づき、2018年2月には、ロシア官民の労働生産性ミッションが、日本のベストプラクティスを学ぶために訪日した。また、同年10月には、ロシアで日本企業がワークショップを開催するなど、日露の労働生産性向上に向けた協力が進展しており、2019年度も同協力を継続していく。

また、2017年9月、世耕ロシア経済分野協力担当大臣とオレシュキン経済発展大臣との間で「デジタル経済に関する協力に係る共同声明」が署名され、8項目の「協力プラン」の各項目においてデジタル経済の実現に向けた協力を実施することが確認された。2018年5月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラム、7月のイノプロム、10月のCEATECにおいて日露のデジタル協力に関するセミナーが開催されるとともに、同年5月のスコルコヴォ・スタートアップビレッジへのジャパン・パビリオン設置や同年9月の東方経済フォーラムにおけるスマートシティに関するセッションなどが実施された。

第Ⅲ-2-7-1図 2018年4月サベッタでのヤマルLNGプラント視察の様子

第Ⅲ-2-7-2図 2019年1月モスクワでの首脳会談の様子

第Ⅲ-2-7-3図 2019年1月モスクワでのオレシュキン大臣との会談の様子

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