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- 第1部第1章第3節
- 4.分野ごとの事例
- (1)生み出す、手に入れる〈1〉
- ①スマートに生み出す、スマートに手を入れる(スマート製造など)
第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望第3節 価値創出に向けた Connected Industries の推進
4.分野ごとの事例
(1)生み出す、手に入れる〈1〉
①スマートに生み出す、スマートに手を入れる(スマート製造など)
ものづくりの現場では、人手不足が顕在化する一方、多品種少量生産を始め、顧客の高度かつ多様化したニーズに対して迅速に対応する必要性などに迫られている。
しかし、現状のものづくり企業の現場においては、機器間の連携が十分取られておらず、限られたパターンによる製造のみ対応が可能で柔軟なものづくりが困難である場合や、企業内の部門間の連携も十分できておらず、ましてや他企業との連携は一層困難である場合も多い。また、少子高齢化の進展による若手の減少を受け、これまで熟練技能者が培ってきたノウハウがうまく継承されていないなどの課題も抱えている。
そうした中、第四次産業革命により飛躍的に活用範囲が広がったデジタル技術を活用し、「機械×機械」(IoT)によるつながりに限らず、「人×機械」(IoTカイゼンで人手不足、人材育成など)、「人×人」(技能伝承など)、「部門×部門」(一貫したデジタルものづくりの実現など)、「工場×工場」(同業種間などによる町工場連携など)、「企業×企業」(他業種間での連携など)など様々なつながりにより、課題解決に向けた取組を推進することが考えられる。
このように、Connected Industriesのコンセプトの下、デジタル技術などを活用しつつ、様々なつながりを推進することを通じ、各工程間のデータ連携や、社内及び社外の組織間の連携を推し進め、高度化かつ多様化する顧客ニーズに対して迅速に対応できる仕組みづくりを行うことが期待される。併せて、技能人材を中心として人手不足が顕著となる中、デジタル技術などを活用して熟練技能者の知を形式知化し、組織の知として活用できる仕組みの構築など、人手不足対策を推進することも期待される。
図133-1に示すとおり、IoTやAIなどを活用し、Connected Industriesの考えの下で取組を進めることにより、対応可能な顧客価値は大幅に拡大し得る。この顧客価値を、スマート製造分野のバリューチェーンで、具体的な価値を生む「ソリューション」として考えたものが図134-1である。
このような具体的なソリューションに加え、これらソリューションを複数組み合わせて取り組む解決すべき課題として、「生産性の向上」や「新たな付加価値創出」、さらには「人手不足対策」や「バリューチェーンの最適化」などが考えられる。以下では、スマート製造分野における、Connected Industriesの先進的な取組事例を、これら「解決すべき課題」や「ソリューション」を整理の軸として紹介する。
図134-1 スマート製造分野で想定しうるソリューション例

資料:経済産業省作成
<モノ売りからソリューション提供に向けたエッジ重視の製造プラットフォームの構築、産業機械メーカー各社>
「付加価値獲得」「生産性向上」など
【産業機械×通信×AI×ソフトウェアなど】
・現場で発生するデータを利活用したソリューションなどの提供に向けて、製造業の分野でもプラットフォーム構築の動きが活性化してる。取組方法は各社の持つリソースやポジションなどにより様々であるが、AIスタートアップや通信企業などとの連携や、ライバル関係の社も含めたコンソ-シアム形成など、これまでにない“つながり”方により実現を目指している。また、他社製機器もつながる、さらには、API(Application Program Interface)を公開しソフトウェアベンダーの参加を募るなど、オープンなプラットフォーム化を目指している点に特徴がある。
※コラム参照
<(株)ワールド山内>
「多品種少量生産」「予知保全」「工場全体の効率化」「省人化」(生産性向上)
【生産設備(+従業員)×IoT・AI】
※コラム参照
<旭鉄工(株)>
「カイゼン」「ビジネスモデル変革」「事業拡大」
【現場の課題×自社システム開発×ソリューション展開】
・自動車部品製造を行う同社は、下請け製造への閉塞感から、大きくビジネスモデルを転換。カイゼン活動を加速するIoTモニタリングシステムをトップダウンで自社開発し、i Smart Technologies(株)を設立し1年強で全国100社以上に展開。同システムは、生産設備に安価なセンサーを後付けし、製造ラインの問題点をスマートフォンなどで見える化(2017年版白書に詳細紹介)。現在は顧客データの分析による改善アドバイスレポート作成や各地で改善活動も実施する。さらに、東南アジアでの展開も開始。
<日進工業(株)>
「カイゼン」「ビジネスモデル変革」「事業拡大」
【現場の課題×自社システム開発×ソリューション展開】
※コラム参照
<(株)島精機製作所>
「プロセス効率化」「生産管理」「トレーサビリティ確保」「設計支援」「企画支援」
【バリューチェーン全体のデジタル化×統合的なシステム開発】
※コラム参照
<(一社)西日本プラスチック製品工業協会、ムラテック情報システム(株)、池木プラスチック(株)>
「品質確保」
【業界団体をあげたデータフォーマット共通化×システムオープン化】
・多くのプラスチック成形加工メーカーでは複数のメーカーの成形機を用いて製造している。精密部品の製造には、成形条件情報などの把握、収集、活用が重要となるが、成形機からのデータフォーマットはメーカーごとに異なるため、情報を統一して一括管理できない状況にあった。この状況を打開するため、2016年度「IoT推進のための社会システム推進事業」(経済産業省)を活用し、(一社)西日本プラスチック製品工業協会とムラテック情報システム(株)は、関連機関の横断的な参加のもと、グローバル基準の規格に合わせたデータフォーマットの共通化とそのデータ統合システム(MiddleWare)を開発。2017年夏からは、全日本プラスチック製品工業連合会傘下団体の会員企業へのミドルウェア提供が始まり、遠隔工場の生産状況のリアルタイムでの把握など、活用の幅がより広がっている。
同システムを、工芸部品、電気部品、半導体関連部品、自動車関連部品などの幅広いプラスチック製品を製造する池木プラスチック(株)が導入。これにより、メーカーの垣根を越えて自動的にすべての成形データを収集することが可能となり、不良品が発見された時に実績値を確認することによって、不良品の製造された時間帯や発生原因を突き止める手掛かりとすることができ、対処や再検査に要する時間も大幅に削減できるようになった。その他にも同社では、かつて生産計画の工程表や進捗状況を手書きで各部署に配信していたが、IoT化によりソフトウェア上で管理できるようになり大幅な労力の削減と正確な情報の共有を実現した。
<飯山精器(株)>
「工程進捗把握」「稼働状況把握」「ソリューション展開」「品質確保」(生産性向上)
【現場の課題×自社システム開発】
※コラム参照