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- 第1部第2章第1節
- 2.人材育成で成果があがっていると回答した企業の傾向〈2〉
第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第2章 ものづくり人材の確保と育成第1節 労働生産性の向上に向けた人材育成の取組と課題
2.人材育成で成果があがっていると回答した企業の傾向〈2〉
前ページより続き
さらに、企業が実施しているOFF-JTの内容(複数回答)についてみると、人材育成の「成果あり企業」では、「主任、課長、部長など各階層に求められる知識・技能を習得させるもの」が最も高く、「加工など製造技術に関する専門的知識・技能を習得させるもの」、「仕事に関連した資格の取得を目指すもの」が続く(図212-7)。
OFF-JTの内容ごとに、「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、人材育成の「成果あり企業」の方が、「加工など製造技術に関する専門的知識・技能を習得させるもの」、「機械の保全に関する専門的知識・技能を習得させるもの」、「新たに導入された(あるいは導入予定の)設備機器等の操作方法に関する知識・技能を習得させるもの」といった内容を挙げる割合がより高い。
図212-7 実施しているOFF-JTの内容(複数回答)

備考:( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査
次に、自己啓発の支援の状況(複数回答)をみると、人材育成の「成果あり企業」では、「受講料などの金銭的支援」が最も高く、「資格等を取得した際の手当や一時金の支給」、「教育訓練機関、通信教育等に関する情報提供」と続く(図212-8)。一方で、「成果なし企業」では、上位2つの順位は同様だが、3番目に「特に支援を行っていない」が挙げられている。
支援内容ごとに、「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、人材育成の「成果あり企業」の方が、「資格等を取得した際の手当や一時金の支給」、「受講料等の金銭的支援」、「個々の自己啓発実績を人事部で把握・記録」といった支援を行っているとする割合がより高い。
図212-8 自己啓発の支援の状況(複数回答)

備考:( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査
なお、「平成29年度能力開発基本調査」の個人調査の結果によると、製造業において、自己啓発に問題を感じる労働者は79.9%となっている(図212-9)。自己啓発を行う上での問題点(複数回答)としては、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が最も高く、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」、「費用がかかりすぎる」と続いている。
前述のように、企業において、金銭的支援は比較的多く取組がみられるが、労働者が多く問題を感じている時間に係る支援については、「就業時間の配慮」を行っているとする割合は、人材育成の「成果あり企業」においても2割程度と、取組割合が相対的に低い。
図212-9 個人が自己啓発を行う上での問題点(製造業)(正社員)

資料:厚生労働省「平成29年度能力開発基本調査」
(4)IT人材の確保と育成
第四次産業革命に対応する中で、IT人材の不足が懸念される。ここでは、ものづくり産業におけるIT人材の確保と育成について、人材育成の成果との関係を確認する。
IT人材の過不足状況をみると、人材育成の「成果あり企業」、「成果なし企業」のいずれにおいても4分の3以上の企業が不足しているとしている(図212-10)。
図212-10 社内におけるIT人材の過不足状況

備考:1.調査にあたり、「IT人材」を「ICT(情報通信技術)に精通し、ICT化を進める際に担当となりうる正社員」と定義した。
2.「IT人材不足企業」は、IT人材は「不足している」、「やや不足している」と回答した企業の合計。「IT人材不足なし企業」は、IT人材は「不足していない・必要としていない」と回答した企業の合計。
資料:JILPT前掲調査
次に、IT人材の確保の方法(複数回答)についてみると、人材育成の「成果あり企業」では、「自社の既存の人材をIT人材に育成する」が最も高く、「成果なし企業」では、「ICTに精通した人材を中途採用する」が最も高い(図212-11)。
図212-11 IT人材の確保の方法(複数回答)

資料:JILPT前掲調査
さらに、「自社の既存の人材をIT人材に育成する」、「ICT専攻の人材を新卒採用する」と回答した企業に確認した、IT人材の育成に向けた取組(複数回答)をみると、人材育成の「成果あり企業」では、「会社の指示による社外機関での研修・講習会への参加」が最も高い(図212-12)。
図212-12 IT人材の育成に向けた取組(複数回答)

備考:1.IT人材の確保について、「自社の既存の人材をIT人材に育成する」、「ICT専攻の人材を新卒採用する」と回答した企業を対象に調査した結果。
2.( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査
それぞれの取組ごとに、「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、「成果あり企業」の方が、「会社の指示による社外機関での研修・講習会への参加」、「ICT化方針の策定や明確化」、「ICT化に向けた経営層の理解の促進」、「社内での自主的な勉強会などの奨励」といった取組を挙げる割合がより高い。
これらのことから、IT人材に関しては、過不足状況は人材育成の成果の有無で差はないものの、IT人材の確保と育成については、人材育成の成果の有無によって対応に差があることが分かる。
(5)労働生産性を向上させるために行っている取組
労働生産性を向上させるために行っている取組(複数回答)をみると、人材育成の「成果あり企業」、「成果なし企業」ともに、「改善の積み重ねによるコスト削減」が最も高く、「改善の積み重ねによる納期の短縮」、「新しい生産設備の導入」が続く(図212-13)。
図212-13 労働生産性を向上させるために行っている取組(複数回答)

備考:( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査
改善に代表される効率化に関する取組が最も多く行われていることが分かる。人材育成の「成果なし企業」では、改善の取組において、「成果あり企業」の割合を上回るものがなく、労働生産性の向上に向けた取組が比較的低調であるといえる。
それぞれの取組ごとに、「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、人材育成の「成果あり企業」の方が、「改善の積み重ねによる納期の短縮」、「他社にはできない加工技術の確立」、「新しい生産設備の導入」、「工場のデジタル化(見える化、状況の一元把握等)の促進」といった取組を挙げる割合がより高い。
(6)労働生産性が向上した具体的な事象と向上分の配分
次に、「労働生産性が向上した」と回答した企業に対して、労働生産性が向上した具体的な事象としてどのようなものがあるかを聞いてみたところ(複数回答)、人材育成の「成果あり企業」、「成果なし企業」いずれにおいても「売上・利益の向上」が最も高く、次いで「生産・加工にかかる作業時間の短縮」となっている(図212-14)。
図212-14 労働生産性が向上した具体的な事象(複数回答)

備考:( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査
具体的な事象ごとに、「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、人材育成の「成果あり企業」の方が、「技術水準や品質の向上」、「不良率の低下」、「製品やサービスに対する顧客満足度の向上」といった事象を挙げる割合がより高い。
さらに、「労働生産性が向上した」と回答した企業における労働生産性の向上分の配分先(複数回答)をみると、人材育成の「成果あり企業」では、「賃金などの処遇の改善」 が最も高く、「設備投資の増強」、「作業環境の整備」、「採用・人材育成の強化」と続く(図212-15)。一方、「成果なし企業」では、「設備投資の増強」が最も高く、次に「賃金など処遇の改善」が続いている。
配分先ごとに、人材育成の「成果あり企業」と「成果なし企業」を比較すると、「成果あり企業」の方が、「採用・人材育成の強化」、「作業環境の整備」、「賃金など処遇の改善」といった分野に配分したとする割合がより高い。人材育成の「成果あり企業」では、労働生産性の向上分が「採用・人材育成の強化」や「賃金など処遇の改善」といった人材への投資により配分されている傾向がうかがえる。
図212-15 労働生産性の向上分の配分先(複数回答)

備考:( )内の数字は人材育成成果あり企業と、人材育成成果なし企業の%ポイント差。
資料:JILPT前掲調査