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第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発
第2節 ものづくり人材を育む教育・文化基盤の充実

3.キャリア教育の充実

今日、日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており、特に、産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく、雇用形態の多様化・流動化に直結している。このような中で現在の若者と呼ばれる世代は、例えば、若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ、無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われている。

表323-1 若者の「学校から社会・職業への移行」

注)若年無業者:ここでは、15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者
※1 総務省「労働力調査(基本集計)」2017年平均(速報)結果
※2 総務省「労働力調査(詳細集計)」(年平均)長期時系列表10
※3 厚生労働省「新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移」(2017年9月)

このような状況に鑑み、若者が将来の生き方や進路に夢や希望を持ち、その実現を目指して、学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになることが必要である。そのためには、「学校から社会・職業への移行」を円滑にし、社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要である。

(1)初等中等教育におけるキャリア教育の推進

小・中・高等学校の新学習指導要領においては、キャリア教育の充実を図ることについて明示された。文部科学省では、キャリア教育を推進するため、児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返ることのできる教材「キャリア・パスポート(仮称)」の導入に向け、その活用方法等についての調査研究(「キャリア・パスポート(仮称)」普及・定着事業)、チャレンジ精神や他者と協働しながら新しい価値を創造する力など、これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指した「小・中学校等における起業体験推進事業」(図323-3)など、キャリア教育の実践の普及・促進に向けた施策を展開している。

また、職場体験やインターンシップ(就業体験)は、生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり、

1.異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること、

2.生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること、

3.学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し学習意欲を喚起すること、

4.職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど、極めて高い教育効果が期待される。

このため、文部科学省においては、キャリア教育の中核的な取組の一つとして、学校現場における職場体験、インターンシップの普及・促進に努めている。

職場体験やインターンシップを一過性の行事として終わらせることのないよう、学校における事前指導や事後指導の実践に当たっては、日常の教育活動と関連付けて職場体験の狙いや効果を高めることを目的とした実践にするなど更なる工夫が求められる。

表323-2 2016年における職場体験・インターンシップ実施率

資料:国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターの資料を基に文部科学省作成
※1 公立高等学校については、全日制における実施率。
※2 3年間を通して1回でも体験した3年生の数を体験者数とし、3年生全体に占める割合。
※3 中学校は、原則全員参加のためデータが存在しない。

文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、学校、地域、産業界が一体となって社会全体でキャリア教育を推進する気運を高めるため、「キャリア教育推進連携シンポジウム」を実施しており、また、文部科学省と経済産業省は、学校関係者や地域社会、産業界といった関係者の連携・協働による取組を表彰する「キャリア教育推進連携表彰」等を実施している。

図323-3 起業体験活動の実践事例

さらに、文部科学省では、学びを通じた地方創生・地域振興の観点から、「地元」を学び、地域の活性化やまちづくりを担う人材育成の一つとして、「地域ビジネス創出事業(SBP:Social Business Project)」を推進している。

SBPとは、地域における次代の担い手となる高校生等の若者が、ソーシャル・ビジネス注5の手法を通じて社会を学ぶことにより、周囲の大人と共に地域課題の解決に取り組む活動である。

取組の例としては、町のキャラクターを“たい焼き”として商品化するために焼き型を製作した学校や、その焼き型を商品化して販売している学校、地元企業の協力を仰ぎながら石鹸やパンの商品開発に成功した例等、地元の自治体や産業界と連携しながら、地域の活性化やまちづくりに参画している。

また、文部科学省では、実践校の交流を図る機会として年に一度、全国の高校生が集い、各地域の「取組の発表」や開発した商品の紹介・販売などを行う「全国高校生SBP交流フェア」(主催:(一社)未来の大人応援プロジェクト)を共催している(図323-4)。

注5 社会的課題への取組を、継続的な事業活動として進めていくこと。地域の自立的支援や雇用創出につながる活動として有望視されている。

図323-4 地域ビジネス創出事業(SBP)における取組の様子

(2)大学等におけるインターンシップの推進

大学等においてキャリア教育の一環として行われるインターンシップは、学生の大学等における学修の深化や新たな学習意欲の喚起につながるとともに、主体的な職業選択や高い職業意識の育成が図られる有益な取組である。このようなインターンシップの推進に当たって、2015年12月に文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省において「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の一部改正を行った。

また、2016年度6月から「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議」を開催し、適正なインターンシップの普及に向けた方策や更なる推進に向けた具体的方策等について検討を行い、2017年6月に議論の取りまとめを行った。その内容を踏まえ、今後、各種施策に取り組んでいく予定である。

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