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- 第1部第3章第2節
- 5.文化芸術資源から生み出される新たな価値と継承

第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発第2節 ものづくり人材を育む教育・文化基盤の充実
5.文化芸術資源から生み出される新たな価値と継承
(1)文化芸術資源をいかした社会的・経済的価値の創出
文化芸術資源の持つ潜在的な力を一層引き出し、地域住民の理解を深めつつ、地域で協力して総合的にその保存・活用に取り組むなど、多くの人の参画を得ながら社会全体で支えていくためにも、文化芸術資源をいかした社会的・経済的価値の創出が必要である。
このため、例えば、美術工芸品は、経年劣化等により適切な保存や取扱い及び移動が困難である場合に、実物に代わり公開・活用を図るため、実物と同じ工程により、現状を忠実に再現した模写模造品が製作されている。また、調査研究の成果に基づき、製作当初の姿を復元的に模写模造することも行われている。これらの事業はいずれも、指定文化財の保存とともに、伝統技術の継承や文化財への理解を深めることを目的として実施されている。
加えて、文化財の高精細なレプリカやバーチャルリアリティー等は、保存状況が良好でなく鑑賞機会の設定が困難な場合や、永続的な保存のため元あった場所からの移動が必要な場合、既に建造物が失われてしまった遺跡などかつての姿を想像しにくい場合などに活用することで、文化財の理解を深め、脆(ぜい)弱(じゃく)な文化芸術資源の活用を補完するものである。
これらの取組は、文化財の保存や普及啓発等にも効果があるほか、文化芸術資源をいかした社会的・経済的な価値の創出につながるものである。したがって、本物の文化財の保存・活用と並行して、伝統的な技法・描法・材料等と最新技術等をいかし、文化財のデジタルアーカイブ、模写模造、高精細レプリカ、バーチャルリアリティー等を活用できるような取組が必要である。
今後、企業や大学等とも連携し、先駆的事例の調査、先進的作品を用いた実証、今後の活用の方向性や全国の美術館・博物館への効果的な取組の普及等を図っていく。

写真:失われた文化財の仮想復元
「デジタルコンテンツを用いた遺跡の活用」
―2015年度遺跡整備・活用研究集会報告書―
(奈良文化財研究所)
(2)重要無形文化財の伝承者養成
文化財保護法に基づき、工芸技術などの優れた「わざ」を重要無形文化財として指定し、その「わざ」を高度に体得している個人や団体を「保持者」「保持団体」として認定している。
文化庁では、重要無形文化財の記録の作成や、重要無形文化財の公開事業を行うとともに、保持者や保持団体などが行う研修会、講習会や実技指導に対して補助を行うなど、優れた「わざ」を後世に伝えるための取組を実施している。
(3)選定保存技術の保護
文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能で保存の措置を講ずる必要のあるものを選定保存技術として選定し、その保持者又は保存団体を認定している。
文化庁では、選定保存技術の保護のため、保持者や保存団体が行う技術の錬磨、伝承者養成等の事業に対し必要な補助を行うなど、人材育成に資する取組を進めている。また、選定保存技術の公開事業を行っており、2017年度は三重県多気郡明和町において「文化庁日本の技体験フェア」を開催し、2日間で8,415人が来場した。
図325-1 選定保存技術

※保存団体には重複認定があるため、( )内は実団体数を示す。
※同一の選定保存技術について保持者と保存団体を認定しているものがあるため、保持者と保存団体の計が選定保存技術の件数とは一致しない。
(4)地域における伝統工芸の体験活動
文化庁では、「伝統文化親子教室事業」において、次代を担う子供たちが、伝統文化を計画的・継続的に体験・修得する機会を提供する取組に対して支援し、我が国の歴史と伝統の中から生まれ、大切に守り伝えられてきた伝統文化を将来にわたって確実に継承し、発展させることとしている。
2017年度においては、