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- 第2部第2章第2節 職業能力の開発及び向上

第2部 平成29年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第2章 ものづくり労働者の確保等に関する事項第2節 職業能力の開発及び向上
1.人生100年時代を見据えた労働者の職業能力の開発及び向上
2017年9月から、人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行うため、内閣総理大臣を議長とする人生100年時代構想会議が開催されている。人生100年時代を見据えた労働者の職業能力の開発・向上を促進するためには、労働者がキャリアプランを再設計し、リカレント教育を受け、新たなステージへ進む一連のプロセスを総合的に支援することが重要である。これまでの人生100年時代構想会議では、労働者がキャリアコンサルティングを定期的に受けられる仕組みの普及、教育訓練給付の拡充、多様なニーズに応える教育訓練プログラムの開発、転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立等について議論がなされている。
引き続き、誰もが幾つになっても、新たな活躍の機会に挑戦できるような環境の整備について、人生100年時代構想会議における基本構想の取りまとめに向け、検討を進めていく。
2.ハロートレーニング(公的職業訓練)の推進
(1)公共職業訓練の推進
公共職業能力開発施設では、ものづくり分野を中心として、離職者の再就職の支援や在職労働者のスキルアップ、高度な技能者の養成、学卒者に対する長期間の訓練課程の実施に取り組んでいる。このほか、都道府県が、株式会社、事業主団体NPOなどの民間教育訓練機関に委託する訓練により、地域や産業界のニーズをとらえた職業訓練を提供した。
なお、公共職業能力開発施設として、職業能力開発校(2017年4月現在(以下、同じ。)150校)、職業能力開発短期大学校(14校)、職業能力大学校(10校)、職業能力開発総合大学校(1校)、職業能力開発促進センター(46か所)及び障害者職業能力開発校(19校)を設置している。
(2)求職者支援制度の推進
非正規雇用の労働者など雇用保険を受給できない求職者に対するセーフティネットとして、無料の職業訓練の受講機会を提供し、一定の要件を満たす場合には職業訓練(求職者支援訓練)を受けることを容易にするための給付金を支給するなどして、その早期就職を支援する「求職者支援制度」を2011年10月から実施している。
求職者支援訓練には多くの職種に共通する基本的能力(例:パソコン操作能力など)を習得するための「基礎コース」と特定の職種(例:介護福祉など)の職務に必要な実践的能力を基本的能力から一括して習得するための「実践コース」がある。
(3)生産性向上人材育成支援センターの取組
生産性向上人材育成支援センターは、中小企業等の労働生産性向上に向けた人材育成を支援することを目的として、中小企業等の労働者一人ひとりの生産性向上を支援するため、民間機関等を活用し、企業の生産性向上に必要な知識やスキル等の習得を図る生産性向上支援訓練を実施している。
(4)職業訓練の質の向上
公共職業訓練と求職者支援訓練のうち、その約8割を担っている民間教育訓練機関の訓練の質の向上を図るため、厚生労働省では、「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」を2011年12月に策定し、その普及・定着に向けて、全国で同サービスガイドラインの研修を実施してきた。平成29年12月末現在で、総受講機関数は2,271機関となっている。
(5)地域創生人材育成事業
人手不足分野を抱えている地域において、従来の公的職業訓練の枠組みでは対応できない、地域の創意工夫を活かした人材育成の取組を支援するため、「地域創生人材育成事業」を実施している。この事業は、都道府県から提案を受けた事業計画の中から効果が高いと見込まれる取組を選定し、新たな人材育成プログラムの開発を都道府県に委託して実施するものであり、2017年度は、新たな6県(福島県、茨城県、神奈川県、新潟県、滋賀県、島根県)を加え事業が実施されている。
3.事業主が行う職業能力開発の推進
(1)事業主に対する助成金の支給
①人材開発支援助成金の活用促進(199億6百万円)<厚労省、経産省>
企業内における労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、雇用する労働者に対して職業訓練などを計画に沿って実施した事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支給した。
2015年4月より、製造業等の分野において厚生労働大臣の認定を受けた一定のOJT付き訓練(「ものづくり人材育成訓練」)を行う事業主及び事業主団体等に対する助成メニューを創設し、2016年4月より「特定分野認定実習併用職業訓練」として、引き続き助成している。また、「若者雇用促進法」に基づき、若者の採用・育成に積極的であり、若者の雇用管理の状況などが優良な企業として認定を受けた事業主に対して、さらに経費助成の助成率を引き上げる措置を講じた。
また、2016年10月より経済産業省と連携し、中小企業等の生産性向上のため、認定事業分野別経営力向上推進機関が事業分野別経営力向上推進業務として行う、事業分野別指針に定められた事項に関する研修を実施した場合を、当該助成金制度の対象として追加した。
2017年4月より、企業内における人材育成を引き続き効果的に推進し、労働生産性の一層の向上を図る観点から、助成対象コースを「特定訓練コース」、「一般訓練コース」、「キャリア形成支援制度導入コース」、「職業能力検定制度導入コース」の4コースに再編し、名称をキャリア形成促進助成金から人材開発支援助成金へ変更した。また、特定訓練コースにおける助成対象となる職業訓練は、いずれも訓練効果の高い職業訓練であることから、一層の活用促進を図るため、助成対象訓練時間の下限を10時間に引き下げた。さらに、特定訓練コースを活用する企業に対する年間の助成上限額を1,000万円に引き上げた。
また、企業における労働生産性の向上の取組みを支援するため、労働生産性が向上している場合には、助成率・助成額を引き上げることとした。
②キャリアアップ助成金(人材育成コース)の活用促進(106億49百万円)
職業能力開発を通じたキャリアアップを目的として、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者に対して職業訓練を行う事業主に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支給した。
(2)認定職業訓練に対する支援(10億71百万円)
事業主や事業主の団体等が行う職業訓練のうち、教科、訓練期間、設備等が厚生労働省令で定める基準に適合して行われている認定職業訓練施設(全国1,138施設)について、国や都道府県が定める補助要件を満たす場合に、これを運営する中小企業事業主等に対して、国及び都道府県からその運営等に要する経費の一部について補助を行った。
(3)セルフ・キャリアドックの普及促進(36百万円)
労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みである「セルフ・キャリアドック」を企業に広めることを目的に、導入モデルを構築し、企業及びキャリアコンサルタント向けの導入マニュアルを作成するとともに、周知を行った。
4.労働者の自発的な職業能力開発のための環境整備
(1)教育訓練給付制度(144億89百万円)<厚労省、文科省、経産省>
労働者が自発的に職業能力開発に取り組むことを支援するため、労働者が自ら費用を負担して一定の教育訓練を受講し修了した場合に、労働者が負担した費用の一定割合を支給した。対象となる教育訓練は、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要と認められるものを厚生労働大臣が指定しており、一般教育訓練11,299講座(2018年4月1日現在)、専門実践教育訓練2,133講座(2018年4月1日現在)を指定した。
また、雇用保険法等を改正し、2018年1月から、専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の給付率を引き上げることとする等、制度の拡充を行った。
(2)ジョブ・カード制度の推進(23億98百万円)<厚労省、文科省、経産省>
ジョブ・カードは、2008年度からフリーターなどの非正規雇用労働者などの職業能力の向上などを通じて、雇用の安定化を図ることを目的として活用されてきた。さらに、個人のキャリアアップや多様な人材の円滑な就職等を促進するために「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであることを明確にし、労働市場のインフラとして、キャリアコンサルティング等の個人への相談支援のもと、求職活動、職業能力開発などの各場面において一層活用されるよう、活用方法、様式等の見直しを行った。これを取りまとめた「新ジョブ・カード制度推進基本計画」に基づき、「ジョブ・カード制度総合サイト」の機能拡充等により、ジョブ・カードのさらなる普及促進を行った。
また、雇用型訓練、求職者支援訓練及び公共職業訓練(離職者訓練・学卒者訓練)においても、引き続き、ジョブ・カードが活用されており、2017年12月末現在のジョブ・カードの取得者数は1,894,533人となっている。