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第2部 平成29年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策
第3章 ものづくり基盤産業の育成に関する事項
第2節 中小企業の育成

1.取引条件の改善

(1)下請等中小企業の取引条件の改善

様々な業種の取引条件改善を目的とした対策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて(世耕プラン)」(2016年9月公表)に基づき、2017年3月末までに自動車や電機・情報通信機器など8業種21団体において、取引適正化と付加価値向上に向けた「自主行動計画」が策定された。

2017年5月、中小企業庁において、自主行動計画のフォローアップ指針を発表し、この指針に基づき各団体においてフォローアップ調査を実施した。また、2017年4月より全国に80名規模の下請Gメンを配置し、年間2,500件以上の下請中小企業ヒアリング調査を実施した。2017年12月、各団体が実施した自主行動計画のフォローアップ調査結果及び下請Gメンによるヒアリング調査結果をとりまとめて公表した。両調査結果の突き合わせを行い、改善の動きが鈍い業種については、2018年1月以降、更なる取組を要請している。加えて、自主行動計画の策定業種の拡大(機械製造業、流通業、警備業、放送コンテンツ業)にも取り組んだ。

2015年12月から設置された「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」(計13回開催)同会議での決定事項等は、働き方改革を進める上での課題(長時間労働是正や生産性向上等)等を検討するため、2017年9月に設置された「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」に引き継がれ、同会議の下で引き続き、関係省庁が連携して取り組むこととなった。

(2)下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)

下請取引の適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請代金法を執行した。公正取引委員会及び中小企業庁が親事業者等に対して書面調査等を実施するとともに、下請代金法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請代金法違反に関する情報収集を行い、下請代金法の厳格な運用に努めた。

2017年11月、経済産業大臣および公正取引委員会委員長の連名で、親事業者(約21万社)および業界団体代表者(約650団体)に、下請取引の適正化等について要請文を発出した。

(3)下請中小企業振興法(下請振興法)

①振興基準

2016年12月に改正した下請中小企業振興法に基づく振興基準の内容について、周知・浸透を図った。経済産業大臣名(他省庁所管の業界については主務大臣との連名)で、業界団体代表者(892団体)に、「振興基準」の遵守について要請文を発出した。

②下請中小企業・小規模事業者の自立化支援事業(自立化補助金)(13.9億円の内数)

下請振興法の認定を受けた計画の下で、連携グループがメンバー相互の経営資源を活用して行う自立化に向けた取組に対し、共同受注用のシステム構築、設備導入、展示会出展等に必要な経費の一部を補助した。

③下請中小企業・小規模事業者の自立化支援事業(新分野進出補助金)(13.9億円の内数)

親事業者の生産拠点が閉鎖(予定も含む)された地域における下請中小企業等が行う、新分野への進出等による取引先の多様化のための設備導入・展示会出展等に必要な経費を一部補助した。

④政府系金融機関による融資

下請振興法に基づく計画の認定を受け、当該事業を行う中小企業に対し、(株)日本政策金融公庫による低利融資を行った。

(4)下請取引適正化のための普及・啓発

①下請かけこみ寺(13.9億円の内数)

全国48か所に設置した「下請かけこみ寺」において、中小企業の取引に関する相談対応、裁判外紛争解決手続(ADR)を実施した。

②講習会、セミナーの開催等(13.9億円の内数)

下請代金法の違反行為を未然に防止するため、親事業者の調達担当者等を対象として下請代金法や下請ガイドライン(自動車産業など17業種)の講習会を全国で開催した。また、広く下請代金法等の遵守を呼びかけるシンポジウム等を開催した。

(5)取引あっせん、商談会による販路開拓支援

①取引あっせん事業(13.9億円の内数)

新たな取引先を開拓したい下請中小企業に対して、自社の希望する業種、設備、技術等の条件に合った受発注情報を紹介し、きめ細かな取引のあっせんを行った。

また、下請中小企業の販路開拓を支援するために、インターネットを活用した「ビジネス・マッチング・ステーション(BMS)(http://biz-match-station.zenkyo.or.jp/)」により、受発注情報等の提供を行った。

②広域商談会開催事業(13.9億円の内数)

大企業の大規模な事業再構築の実施、倒産、天災等により影響を被る下請中小企業等を対象に、広域的に行う新たな販路開拓を支援するため、広域商談会を8会場で開催した。

2.中小企業の経営の革新及び創業促進

(1)経営革新の促進

経済的環境の変化に即応して中小企業が行う新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動を行うことにより、経営の相当程度の向上を図る経営革新を支援するため、以下のような支援措置を行った。

①新事業活動促進資金(財政投融資)

中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、経営革新のための事業を行う個別の中小企業者、組合及び任意グループに対し、株式会社日本政策金融公庫が融資を実施した。

②中小企業信用保険法の特例

中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、当該事業を行う際の資金供給を円滑化するために、信用保証協会において、中小企業信用保険法に規定する普通保険、無担保保険及び特別小口保険等の特例による支援を実施した。

(2)創業・ベンチャーの促進

①創業・第二創業促進補助金

新たに起業・創業を行う者に対して事業計画を募集し、計画の実施に要する費用の一部を助成することで、地域需要を興すビジネス等の支援を実施した。

②新創業融資制度(財政投融資)

株式会社日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者や事業を開始して間もない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。

③創業者向け保証

民間金融機関による創業者への融資を後押しするため、信用保証協会において、これから創業する者又は創業後5年未満の者等を対象とする保証制度を実施した。

④ファンド出資事業

民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、中小機構が出資(ファンド総額の1/2以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図る事業である。起業支援ファンドについては、累積ファンド出資数100件、累積投資額1,273億円、累積投資先企業数2,532社に至った(2017年3月末実績)。また、中小企業成長支援ファンドについては、累積ファンド出資数94件、累積投資額3,261億円、累積投資先企業数1,174社に至った(2017年3月末実績)。また、「健康・医療事業分野投資促進出資事業」を活用し、2017年9月までに中小企業成長支援ファンドを5件組成した。

⑤エンジェル税制

創業間もない中小企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、一定の要件を満たす中小企業に対して、個人投資家が投資を行った時点と、当該株式を譲渡した時点において所得税の優遇を受けることができる制度である。

⑥企業のベンチャー投資促進税制

企業が、産業競争力強化法に基づき経済産業大臣の認定を受けたベンチャーファンド(投資額の5割以上を地方に所在するベンチャー企業へ投資する場合に限る。)を通じてベンチャー企業に出資した場合に、その出資額の5割を限度として損失準備金を積み立て、損金算入することができる制度である。2017年末時点で、10ファンドが経済産業大臣の認定を受けており、認定ファンドを通じたベンチャー企業へのリスクマネーの供給増加が期待される。

⑦女性、若者/シニア起業家支援資金(財政投融資)

多様な事業者による新規事業の創出・育成を支援するため、女性や35歳未満の若者、55歳以上の高齢者のうち、開業して概ね7年以内の者を対象に、株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業・国民生活事業)が融資を行った。

⑧ベンチャー創造支援事業(3億45百万円)

起業家や、大企業等で新事業開拓を担う社内起業家の候補等を、世界をリードするベンチャー企業を輩出するシリコンバレー等に派遣して、グローバル市場への進出や社会課題の解決といった事業目線の高い新事業を創出する人材の育成を図った。また、起業家やベンチャー支援人材、大企業等とのビジネスマッチングの開催や広範なネットワーク形成の場を提供するとともに、イノベーションの創出に大きく貢献したベンチャー企業を称える「日本ベンチャー大賞」の授与等を行い、新事業創出のための基盤形成を図った。

(3)新事業促進支援事業

中小企業による新事業活動の促進を図るため、「中小企業等経営強化法」、「地域産業資源活用促進法」、「農商工等連携促進法」に基づき、中小企業者が行う新商品、新サービスの開発や、それらの販路開拓の取組に対し、予算、融資等を活用した支援を実施した。

①ふるさと名物応援支援事業(13.5億円の内数)

上記各法律に基づく計画の認定を受けた中小企業者が、当該計画に従って行う試作品開発や販路開拓等に要する経費の一部を補助した。

②新事業活動促進資金(財政投融資)

株式会社日本政策金融公庫が、事業計画の認定を受け、当該事業を行う中小企業に対し、融資を実施した。

③中小企業信用保険法の特例

事業計画の認定を受け、当該事業を行う際の資金供給を円滑化するために、信用保証協会において、中小企業信用保険法に規定する普通保険、無担保保険及び特別小口保険等の特例による支援を実施した。

④商業・サービス競争力強化連携支援事業(130.0億円の内数)

中小企業等経営強化法に基づいて認定された異分野連携新事業分野開拓計画に従って行う中小企業・小規模事業者が、産学官連携して行う新しいサービスモデルの開発等を支援した。

(4)中小企業の海外展開支援

国内での需要減少や国際競争の激化による産業構造の変化等に直面するなか、中小企業が成長するためには、アジア等の新興国をはじめとする成長著しい海外市場で新たな需要を獲得することが喫緊の課題となっているため、中小企業の本格的な海外展開に向け、資金面を含め総合的な支援策を講じていくこととした。

①中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業(23.9億円の内数)

中小企業の海外展開を支援するため、(独)日本貿易振興機構および(独)中小企業基盤整備機構が連携し、事業計画策定から輸出体制の構築、現地進出支援までを行った。加えて、進出後の課題や事業再編の対応まで一貫して、戦略的に支援した。

②JAPANブランド育成支援事業(13.5億円の内数)

複数の中小企業が連携し、自らが持つ素材や技術等の強み等を踏まえた戦略を策定し、当該戦略に基づいて行う商品の開発や海外展示会への出展等に必要な取組に要する経費の一部を補助した。

③海外展開・事業再編資金(財政投融資)

経済の構造的変化に適応するために海外展開または海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業の資金繰りを支援するため、株式会社日本政策金融公庫による融資を実施した。

④海外展開を担う人材育成の支援(41.7億円の内数)

・新興市場開拓人材育成支援事業

開発途上国のリーダーとしての活躍が期待される産業人材に対し、日本企業が有する専門技術やノウハウ、経営管理手法等の習得に向けた日本への受入研修、専門家派遣による現地指導に対する支援をすることで我が国企業の海外進出や開発途上国の発展を促進するもの。具体的には、アジアをはじめとする開発途上国の産業技術者や経営管理者等の人材を対象に日本国内の企業の製造ライン等現場を活用した研修や、我が国からの専門家派遣による現地企業でのOJTを含む技術指導等に対する支援を行った。

・国際化促進インターンシップ事業

急拡大する新興国市場に対応できるグローバル人材を育成し、中小企業の国際展開等を促進するため、日本の若手人材を新興国の政府系機関、民間企業等に派遣し、日本企業で働くにあたって必要なビジネススキルを得た外国人材の育成・確保するため、外国人材のインターン受入を実施した。

⑤海外知的財産プロデューサーによる支援((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)(再掲 第2部第1章第1節3.(6)参照)

⑥知的財産に関するワンストップ相談窓口「知財総合支援窓口」(再掲 第2部第1章第1節3.(6)①参照)

⑦中小企業等外国出願支援事業(再掲 第2部第1章第1節3.(6)②参照)

⑧中小企業等海外侵害対策支援事業(再掲 第2部第1章第1節3.(6)③参照)

⑨新輸出大国コンソーシアム(2016年度補正予算:1001.3(億円)の内数)

商工会議所、商工会、地方自治体、金融機関、JETROなどの支援機関を結集するとともに、幅広い分野における473の専門家を確保(2018年3月16日時点)し、海外展開を図る中堅・中小企業に対して、事業計画の策定から販路開拓、現地での商談へのサポートに至るまで、総合的な支援をきめ細かに実施した。

3.中小企業のものづくり基盤技術強化

(1)戦略的基盤技術高度化支援事業(再掲 第2部第1章第1節1.(4)②参照)

(2)中小企業・小規模事業者人材対策事業(16.7億円の内数)

中小企業・小規模事業者の人材の確保を支援することを目的に、地域特性に合わせ、各地の中小企業・小規模事業者が必要とする人材を地域内外から発掘、紹介、定着等、人材確保を支援した。また、製造現場の経験が豊富な人材や、IoTやロボットに知見を有する人材等のカイゼン指導者の育成・派遣(「スマートものづくり応援隊」として、2016年度は全国5か所に相談拠点を整備)、製造現場の中核人材への講習等を通じて、中小企業・小規模事業者の生産性向上に資する人材育成支援を行った。

(3)中小企業支援担当者向け研修((独)中小企業基盤整備機構交付金の内数)

中小企業大学校において、創業の意志を持つ者を支援するため、地方自治体の職員、商工会・商工会議所の経営指導員、中小企業診断士等の支援者を対象に、創業者のビジネスプランを評価するための着眼点及び考え方並びに創業・ベンチャー企業に対する支援施策及び支援のポイント等を内容とした「能力強化研修」、「小規模企業支援能力向上研修」及び「新規事業・新規創業支援の進め方研修」を実施した。

(4)中小企業等経営強化法

中小企業等経営強化法に基づいて経営力向上計画を策定し認定された企業に対し、固定資産税の軽減措置(3年間1/2に軽減)や、日本政策金融公庫の融資制度(設備資金については基準金利から金利を0.9%引下げ)等、税制面や金融面での支援を講じた。また、固定資産税の軽減措置については、平成29年度税制改正にて、地域・業種を限定した上で、その対象を器具・備品と建物付属設備に拡充した。平成29年12月末時点において、44,602件を認定。

(5)中小企業投資促進税制

機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置。2017年度においても、引き続き措置を講じた。

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