訪日外国人の宿泊料金指数は、平成28年まで5年連続の前年比上昇。ただ、年の後半は前期比マイナスで、第4四半期には前期比マイナス2.9%低下。訪日外国人消費支出の中では、宿泊料金の割合が低下。 2017年4月4日
訪日外国人消費指数(TCI)とは、訪日外国人の消費金額を、消費者物価指数を用いて実質指数化したものです。費目ごとに実質化することにより、日本国内の価格変化の影響を除外した動きを見ることができるようになります。

この訪日外国人消費指数は、費目別に作成されており、今回は、訪日外国人の宿泊費支出を指数化した「宿泊料金指数」の平成28年及び同年第4四半期の動き、そしてその構成比の変化について、説明していきたいと思います。
訪日外国人宿泊料金指数は、28年後半に2期連続で低下
平成28年の宿泊料金指数は、平成22年=100とした指数値で244.3、前年比3.3%と5年連続で前年比上昇となりました。ただ、その四半期の動きをみると、28年第2四半期をピークに第3、第4四半期は2期連続の前期比低下でした。こういった宿泊料金指数の推移をみると、28年後半は、下り坂にさしかかったような形になりました。
そもそも、訪日外国人消費指数が300を超える水準となっている一方で、宿泊料金指数は250前後のレベルに留まっています。これは、基準年からの宿泊料金指数の伸びが、訪日外国人の消費全体の伸びに比べて低いということを意味します。
元々の伸びが相対的に少ない宿泊料金指数が、28年半ばには早くもピークアウトの様相となっているというのは、興味深いところかと思います。

訪日外国人が宿泊料金を徐々に削り出している?
そこで、訪日外国人消費指数の費目別構成比を、平成22年(指数の基準年)と27、28年で比較してみました。
訪日外国人消費指数に占める費目別構成比の上位3つは、宿泊料金、飲食費、買物代です。このうち、宿泊料金指数は、22年に訪日外国人消費全体の約4割を占めていましたが、27年には約3割と、大幅にその構成比を縮小させました。「爆買い」という言葉が話題になったように、27年には、宿泊料金指数の構成比の縮小に対し、買物代指数の構成比が約1割の上昇をみせました。
理屈から言えば、旅行である以上、買物はしなくても、宿泊はしなければならないのですから、訪日外国人数が増えれば、宿泊料金指数は上昇しても良いはずですし、全体の消費支出に占める構成比が大きく変化するというのは腑に落ちないところです。
ただ、訪日外国人消費動向調査で分かる「宿泊料金(パッケージツアーを除く)の単価」は28年に前年比でマイナス12.2%と大幅に低下していました。再訪や旅慣れた訪日外国人も増えて、夜行バスの利用やクルーズ入国による船中泊、空港で一夜を明かすなど、訪日外国人の宿泊形態も多様化し、宿泊料金を削り始めているのではとも言われています。
28年の構成比では、買物代指数の構成比が低下したため、宿泊料金指数の構成比は多少戻してはいますが、22年の4割近い状態に戻るような状況ではないと思われます。

訪日外国人消費をけん引していた宿泊料金が足を引っ張る
では、四半期推移でピークアウトがみられ、訪日外国人消費に占める構成比の面でも昔日のものとは大分離れてきている宿泊料金指数が、国内の宿泊業活動指数に及ぼすインパクトはどうなっているのでしょうか?
サービス産業(第3次産業)活動指数の前期比変動に対する訪日外国人の宿泊料金指数の寄与、影響度のグラフをみると、他の費目に比べて、寄与が大きくなっています。
平成27年前半の国内の宿泊業活動指数の前期比上昇の相当部分が訪日外国人の宿泊増によるものであり、特に第2四半期は訪日外国人の宿泊があったからこそ、宿泊業の前期比上昇が維持された形になっています。同年第3四半期は、訪日外国人以外、つまり日本人の国内宿泊が大きく低下したため、宿泊業全体の前期比はマイナスでしたが、訪日外国人の宿泊がなければ、さらに大きく落ち込んでいたことになります。
他方、28年後半になると、訪日外国人の宿泊料金指数の寄与はマイナスとなり、特に第4四半期は、日本人の国内宿泊の上昇寄与によって、宿泊業活動指数が2%ほどの前期比上昇だったのに対し、訪日外国人の宿泊はマイナス0.47%ポイントと4分の1近くの低下寄与をみせる事態となっています。訪日外国人消費指数自体は、同じ期に前期比プラスとなっていますが、実は、主要費の中で、宿泊料金指数は唯一の低下寄与指数で、宿泊業への低下寄与と合わせて、宿泊料金指数が特有の動きをみせています。

宿泊施設の「不足」、民泊の導入、地方の宿泊施設の外資による買収など、「訪日外国人と宿泊」という話題には事欠きませんが、節約志向も含めて、ますます多様化する訪日外国人の宿泊ニーズに対応して、どのように宿泊サービスの付加価値を高めていくのかが、横ばい推移になりつつある観光インバウンド需要の回復に向けて、重要なポイントになってくるのかもしれません。
- ミニ経済分析「訪日外国人消費指数の動きと季節変動パターン」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20170404minikeizai.html
本経済解析室ニュースは印刷用のPDFでも御覧いただけます。
印刷用ファイル
をダウンロードして印刷してください。
問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
電話: 03-3501-1511(代表)(内線2851)、03-3501-1644(直通)
FAX : 03-3501-7775
E-MAIL : bzl-qqcebc■meti.go.jp (■を@に置き換えてください)