「グローバル生産性」計測の試み(その3);素材系2業種は国内生産性が全体を押し下げ、上昇業種した機械系2業種ではそれぞれ上昇要因に違いが見られる
2017年1月25日
昨今、日本企業の生産性に対する関心が高まっていますが、日系製造業のグローバル化が進む現状を踏まえると、日本企業の生産性の変化を、海外拠点における生産性変化とあわせて評価することも必要であると考えられます。
経済解析室で作成しているグローバル出荷指数を用いて、簡易的に生産性を計測すると、輸送機械工業のグローバル生産性は低下するという意外な結果となりましたが、その背景には、国内外における雇用拡大があるようです。
では、輸送機械工業以外の業種のグローバル生産性は、どのような推移となったのでしょうか。
生産性上昇は機械系2業種、低下は素材系2業種
製造業全体と業種別のグローバル生産性について、海外生産性要因(海外要因)と国内生産性要因(国内要因)に分けて、基準年である2010年と比べて2015年はどのように変化したのか見てみます。
製造業全体のグローバル生産性は、海外要因が全体をけん引する形で、4.1%の上昇でした。業種別にみると、国内要因(国内生産性の変化)によってグローバル生産性が向上している「はん用・生産用・業務用機械工業」や海外要因(海外生産性の変化)が大きい電気機械工業(電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業を含む)では、2010年から1割以上もグローバル生産性が向上しています。
他方、輸送機械工業を除くと、グローバル生産性を大きく低下させたのは、鉄鋼業と化学工業といった素材系の業種でした。


生産性低下となった鉄鋼業と化学工業
グローバル生産性が低下となった鉄鋼業と化学工業の2業種とも、海外生産性は急角度で向上していますが、国内生産性が低下し、グローバル生産性が2010年比で低下しています。ただ、化学工業のグローバル生産性の変化幅は小さく、鉄鋼業の変化は2009年を底としたV字の上下動を見せているという違いがあります。
鉄鋼業の国内生産性は、趨勢的に低下してきており、グラフの起点である2005年と比べると、2015年には25%低下しています。一方、海外生産性は、リーマンショック時に大きく低下したものの、その後、大きく反転し、底である2008年から2015年までに8割近い向上を見せました。この海外生産性の急上昇が、全体のV字の変化となって表れています。

化学工業の生産性は、国内・海外ともにリーマンショック時にあまり変化しておらず、2012年を境に内外の動きに差が出ています。ただ、海外生産性の向上が国内生産性の低下をカバーして、全体の動きをフラットにしています。逆に言えば、化学工業の海外生産性の伸びは限定的で、鉄鋼業のように全体をV字に押し上げるほどの勢いはないということでもあります。

生産性が上昇した機械系2業種は動きに違いがみられる
グローバル生産性が上昇したはん用・生産用・業務用機械工業と電気機械工業では、その生産性の推移に大分違いがあるようです。
はん用・生産用・業務用機械工業のグローバル生産性の推移では、リーマンショック時に大きく低下し、その後大きく回復するものの、2012年以降、以前の水準を少し下回る水準で横ばい推移です。他方、電気機械工業のグローバル生産性でも、リーマンショック時に限定的な低下は見られたものの、概ね上昇推移となっており、2015年の生産性は、リーマンショック前を大きく上回っています。
はん用・生産用・業務用機械工業のグローバル生産性の内訳をみると、海外生産性と国内生産性の動きがほぼ一致しています(2011年の国内生産性についてはデータの欠落があるため、実際の生産性はもっと低いものと推測される)。興味深いのは、はん用・生産用・業務用機械工業の国内生産性の動きが力強く、2015年では国内生産性がけん引役であり、むしろ海外生産性は低下に転じているという点です。

電気機械工業の生産性の内訳をみると、国内、海外ともに基調的には生産性が上昇しています。国内と海外の違いがあるとすれば、それはリーマンショック以降というよりも、東日本大震災後の2012、13年に国内生産性が一時的に低下した点でしょう。とはいえ、その後、2014年、15年と国内生産性も向上しており、海外生産性の勢いのある向上ペースとあいまって、グローバル生産性の上昇を生み出しており、ここ10年間で最も高い水準に結実しています。

このように、グローバル出荷指数を用いて、国内と海外の生産性を計測した本分析のフレームでみると、業種ごとの生産性の動きに、かなりの違いがあることを見て取ることができました。
- ミニ経済分析「日系製造業の海外拠点の生産性は向上、国内生産性は横ばい;「グローバル生産性」計測の試み」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20170125minikeizai.html
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