ともに衣料品不振の今年上期の百貨店と大型スーパー。店舗展開で集約化の進む百貨店と、効率重視の戦略がうまくいっていない大型スーパーという違い。 2017年9月19日
主要商品カテゴリーの販売が不振だった百貨店
29年上期の百貨店販売額の総額は、前年比マイナス1.3%低下し、3兆1,504億円となりました。
百貨店の販売額の商品別構成比を確認すると、飲食料品が8,446億円で約3割を占めておりトップカテゴリーはデパ地下たる飲食料品となっています。
次いで、婦人・子供服・洋品が7,296億円と約2割となっていますが、紳士服・洋品、その他の衣料品まで含めると、衣料品で約1兆円を超え、飲食料品の構成比とほぼ同じ、3分の1ずつの規模となっています。

百貨店販売額の変動に対する商品別の影響度合いをみると、今年上期の前年比の低下の主要因は、「婦人・子供服・洋品」であり、低下寄与の過半を占めています。次いで、構成比の大きい飲食料品の低下寄与が大きい状況です。
前年と比べて落ち込んでいる各商品の中で、唯一、今年1月以降、前年水準を上回っているのが「その他の商品」です。このカテゴリーには、化粧品や貴金属、宝石、時計などが含まれており、インバウンドを含めて好調な売れ行きを見せています。

一部に販売好調な分野もありますが、百貨店では、主要商品カテゴリーである衣料品や飲食料品の販売が重石となっていたようです。
店舗の集約化の進む百貨店
百貨店販売額は前年比でマイナスですが、この変動を事業所数(店舗数)と1事業所当たりの販売額の2要因で分析してみます。
百貨店では、ここ10年ほど、事業所数の低下が続いており、29年上期も引き続き、事業所の削減が進んでいます。一方、1事業所当たりの販売額は、昨年から一転し、前年比上昇となりました。
この動きから、百貨店において「店舗の集約化」が、今年上期にさらに進んだという評価ができるでしょう。

衣料品の落ち込みが、飲食料品の増加分を相殺した大型スーパー
総合(大型)スーパーの販売額は、前年比マイナス0.4%低下し、6兆3,201億円となりました。百貨店に比べると、落ち込み幅は小さいといえます。
大型スーパー販売額の商品別内訳を確認すると、今年上期では、飲食料品が総額の7割を超えて占めており、ほぼ食品スーパー化している状況がうかがえます。

大型スーパー販売額の変動に対する商品別の影響度合いをみると、今年上期の前年比マイナスの主要因となったのは、構成比としては必ずしも大きくない婦人・子供服・洋品や紳士服・洋品で、今年1月以降、恒常的に前年水準を下回っています。
他方、飲食料品は、前年比でプラス寄与となっているほか、百貨店と同様に、化粧品等を含む「その他の商品」が前年比に対し上昇寄与となっています。

百貨店と同様に、大型スーパーにおいても、衣料品関係の落ち込みが大きく、販売額に占める構成比の大きい飲食料品販売額が前年比で上昇しているにもかかわらず、その上昇分が衣料品の低下によって相殺されてしまいました。
1店舗当たりの売り上げ低下を店舗数増で補えなかった大型スーパー
大型スーパー販売額は前年比でマイナスですが、この変動を事業所数(店舗数)と1事業所当たりの販売額の2要因で分析してみます。
ここ10年程、スーパーの事業所数は継続して増加していますが、昨年からその伸び幅は小さくなっており、今年上期も同様です。
さらに、今年上期には4年ぶりに1事業所当たりの販売額が低下しました。
平成25年まで、1事業所あたりの販売額は前年水準を下回っていましたが、同時に強い勢いで事業所数を増加させていましたので、販売額としては前年並みを維持していました。しかし、今年上期は、事業所数増加の勢いが弱くなっており、1事業所当たり販売額の落ち込みを補うことができませんでした。
出店数を抑制して、1店舗当たりの売り上げを向上させるという平成26年からの効率重視の動きとは異なる動きが、平成29年上期に見られたということになります。

- ミニ経済分析「平成29年上期小売業販売を振り返る」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20170919minikeizai.html
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