9月の情報通信業の落ち込みにはご用心 2017年11月6日
サービス産業(第3次産業)活動指数の内訳大分類業種系列である情報通信業の季節調整済指数に、少し不思議な動きが生じています。
そこで、情報通信業のデータに、現在実施している季節調整とは異なる手法で季節調整を施してみました。なお、季節調整という言葉になじみのないという方は、ひと言解説「季節調整って何だろう(ストーブ、ゲームソフトを例に解説)」にお目通しいただくと良いかと思います。
季節調整済指数は、足下3,9月に大きく落ち込む傾向
ここ2、3年の情報通信業の季節調整済指数の動きを見ると、2015年9月以降、3月と9月の値が大きく落ち込んでおり、サービス産業(第3次産業)活動指数全体の動きに大きな影響を与えています。
しかし、情報通信業の季節調整前の原指数をみると、2015年9月以降の3,9月の指数値のいずれにおいても、過去の同じ月の平均値よりも高い状況にあり、活動レベルが低下している訳ではないことが分かります。これは、季節調整の結果、3月と9月の値が過剰に割り引かれている可能性があることを示唆しています。

過去の9月指数にマイナス1.7~マイナス1.4%程度の落ち込みを確認
そこで、情報通信業の季節調整について、現在の手法とは異なる手法を検討してみました。検討の詳細については、末尾のリンク先のコンテンツをご参照いただければと思いますが、結果だけかいつまんで紹介すると、やはり、ここ数年の3月と9月の情報通信業活動指数には、「過剰な」調整が施されている可能性を否定できず、今年の9月分の結果に生じるかも知れない「落ち込み」も割り引いて評価する必要があるというものとなっています。
DecompやX-13 ARIMA-SEATSという、著名な別の季節調整手法を情報通信業活動指数に適用すると、特徴的な3,9月の落ち込みがほぼ目立たなくなります。 また、2015年9月、2016年9月の値について、DecompやX-13 ARIMA-SEATSの結果と公表値を比較すると、公表値の方がマイナス1.7~マイナス1.4%程度低い値となっており、この実績に基づけば、今年2017年9月の結果も同程度の「落ち込み」があるものと予想されます。

現在、我々が適用している季節調整手法も長年採用し、統計基準として定められている手法ではあります。ただ、その結果、毎年同じ月に特異なうごきが生じているということがある以上、何らかの要因によって、季節パターンが除去できていない蓋然性を否定できません。
他方、今回実験的に利用してみた季節調整手法も各方面で評価されているものであり、一定以上の信頼性があるものです。そういった手法で、季節パターンが除去できるという結果が出ている以上、この結果を無視するというのも得策ではありません。
11月10日に9月分の情報通信業活動指数を公表しますが、その指数が、一昨年や昨年同様に、大きく落ち込んでいた場合には、その指数にプラス1.4~1.7%程度を「上積み」「かさ上げ」して、評価する方が良いかも知れません。
- ミニ経済分析「9月の情報通信業の落ち込みにはご用心;第3次産業活動指数の情報通信業における 季節調整に係る検証」のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/kako/20171106minikeizai.html
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