7月の生産計画は、上方バイアスを補正すると前月比微増に留まる程度の計画。企業の強気・弱気の指標となるアニマルスピリッツ指標も前回調査からさらに低下、慎重な生産計画となっている。 2018年8月14日
経済解析室では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査しています。今回は、7月と8月の生産計画の状況と、7月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのを紹介します。
2018年7月の生産計画とその補正値
2018年7月の生産計画については、前月比2.7%の上昇を見込むという結果になっています。ただ、この伸びは、6月の生産実績が想定外に低下したことによる分がありますので、その評価は割り引く必要があります。また、今回の7月調査においては、7月初旬の西日本豪雨の影響を7月生産計画に反映できていないという回答もありましたので、この点からも伸び率を割り引く必要があります。
8月の生産計画は、この7月計画から3.8%の上昇という生産計画になっています。

毎回、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしています。今回の調査結果で計算したところ、7月の結果については、前月比0.2%程度の上昇になるという結果でした。
7月の生産がこの補正計算値程度の伸びに納まるとすると、6月の生産実績が大きめの低下になっていることと併せて、7-9月期の鉱工業生産は、第2四半期に比較して、低い水準からのスタートということになります。

生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
この生産計画の伸びを6月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになります。調査結果そのままでは、生産指数は大分高い水準となります。ただ、上方バイアスを修正した補正結果を当てはめると、大分趣が変わり、6月の大きな低下分を取り返すという様相ではなくなります。

生産計画の強気と弱気
前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となります。
7月の生産計画は前年同月実績比5.9%と、連続上昇が2年(24か月)続いています。6月調査では落ち込んだ当月見込みの前年同月比上昇幅も、6%に近い水準に戻っており、前年実績と比べると強気の生産計画であるとは言えると思います。

生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっています。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどれ位変動したのかを予測修正率といいます。
7月の予測修正率はマイナス0.5%で、7月の生産計画は下方修正されています。3月調査、4月調査の上方修正から、5月調査以降、3回連続で生産計画が下方修正されています。生産計画が下方修正されること自体は一般的なことではありますが、こちらのデータでは、強気一辺倒でもないという結果となっています。

各社、各品目別に、生産計画が上方修正された数と下方修正された数を比較して、その比率の差分を計算しています。この指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用しています。
7月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス7.8となりました。6月調査結果から計算したもの(マイナス6.8)から、さらに低下しており、これで4か月連続の低下となります。
これまでのこの指標の推移と景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面に入るということが確認できています。7月調査結果によって、2か月連続で、その水準を割り込んでいることになります。月々の上下動をならしたアニマルスピリッツ指標のトレンドも、マイナス5の水準に下落してきており、生産マインドが少し低くなっているようです。

7月調査では、強気(計画上方修正)の品目の割合は減少、弱気(計画下方修正)の品目の割合が増加し、差し引きで、アニマルスピリッツ指標が低下という状態が続いています。
弱気品目の割合が3割を超え、予測修正率やアニマルスピリッツ指標で見ても、7月調査に見られる生産マインドは、さらに慎重なものとなってきていると言わざるを得ません。また、今回の調査結果では、一部の調査協力企業から、7月豪雨の影響を7月計画に反映できていないというお話を伺っており、7月実績はさらに下振れする可能性があることを重ねて付言したいと思います。

- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-201807.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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