10月の生産計画は、大きな前月比上昇を見込んでいるが、上方バイアス分を補正すると、9月の鉱工業生産の低下分を上回る上昇の見込み。 2018年11月14日
経済解析室では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査しています。今回は、10月と11月の生産計画の状況と、10月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのを紹介します。
2018年10月の生産計画とその補正値
2018年10月の生産計画については、前月比6.0%の上昇を見込むという結果になっています。9月は自然災害の影響もあって、鉱工業生産の実績が大きく低下しました。そこからの挽回生産が計画されているため、大きめの増産計画となっています。10月の生産計画の水準も、今年4月調査における4月生産計画に次ぐ高い生産計画となっています。
また、11月の生産計画は、この高めの伸びを計画している10月計画からマイナス0.8%の低下という生産計画になっています。

毎回、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしています。今回の調査結果で計算したところ、10月の結果については、前月比0.9%程度の上昇になるという結果でした。実績段階では、計画のような高い伸びを望むことはできませんが、鉱工業生産の9月の低下をカバーする生産回復は期待できるのではないかと思われます。
また、10月の生産実績がこの程度の伸びに留まるとすると、11月実績は、10月から低下するというよりは、10月並又は少し上昇するということを期待できる調査結果と言えるかと思います。

生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
この生産計画の伸びを9月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになります(このグラフは、2015年基準指数のグラフとなります)。調査結果そのままでは、生産指数は大分高い水準となります。ただ、上方バイアスを修正した補正結果を当てはめると、大分趣が変わり、9月生産の低下分を取り返すことはできますが、やはり今年4、5月のレベルに及ばないという推移になります。

生産計画の強気と弱気
前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となります。
10月の生産計画は前年同月実績比7.2%と、連続上昇が2年以上(27か月)続いています。引き続き、前年実績と比べるとプラスの生産計画とはなっており、このところ、前年実績からの上昇幅が縮小していましたが、10月調査の10月計画では大きな上昇幅となっています。この前年同月実績比は、2018年でも最も大きなものとなっており、4月、5月調査の当月計画の伸びを上回るものとなりました。
この結果からすると、10月初旬段階の製造工業の生産計画は、強気になっているということができます。

生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっています。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどれ位変動したのかを予測修正率といいます。
10月の予測修正率は0.7%プラスで、10月の生産計画は上方修正されています。5月調査以降、5回連続で生産計画が下方修正されていましたが、6か月ぶりに生産計画が上方修正されています。
この面からは、10月初旬の製造工業の生産計画は、強気になっていると言えるでしょう。

各社、各品目別に、生産計画が上方修正された数と下方修正された数を比較して、その比率の差分を計算しています。この指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用しています。
10月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス6.1となりました。9月調査結果から計算したもの(マイナス8.1)からは、上昇しました。
これまでのこの指標の推移と景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面に入るということが確認できています。6月、7月と2か月連続で、その水準を割り込んだ後、8月調査で若干回復したものの、9月調査では再びマイナス5を割り込みました。その9月調査のアニマルスピリッツ指標からは、10月調査では回復はしたものの、マイナス5の水準は下回ったままです。
月々の上下動をならしたアニマルスピリッツ指標のトレンドも、マイナス5の水準に下落してきており、生産マインドが低調になってきているようです。

10月調査では、強気(計画上方修正)の品目の割合、弱気(計画下方修正)の品目の割合は共に増加し、差し引きで、アニマルスピリッツ指標が上昇となりました。とはいえ、弱気品目の割合が3分の1となり(強気品目は4分の1を若干上回る程度)、増加が続いている状態です。

前年同月実績比や予測修正率でみると、10月初旬の生産計画は強気と言えるかと思います。ただ、この「強気」は、自然災害による9月の生産実績低下をカバーするための「挽回生産」のためであるという話が多くなっています。とすれば、10月の「強気」は、9月の生産低下分が10月計画に上乗せされたものということになり、一時的なものかもしれません。
品目単位でみると、生産計画を下方修正する企業も多くなっており、アニマルスピリッツ指標で見ると、強気の生産計画とは言いにくい結果となっています。
予測修正率や前年同月実績比に見られる10月調査の「強気」度合いは、やはり減産からの反動による限定的なものとみるべきなのではないかと思われます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/result-1.html
- 予測指数解説集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/yosoku/sanko/result-yosoku-sanko-201810.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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