2018年10月の全産業活動は前月比大幅上昇、指数水準はリーマンショック前の好景気時期の高水準域に復帰。基調判断は「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正。 2018年12月20日
- 10月は前月比大幅上昇、指数水準は5か月ぶりに106台の高水準域に
- 建設業活動が低下も、サービス産業活動と鉱工業生産は大幅上昇
- 10月の好調な動きの背景には、モノ(=有形財)取引の活発化がある
- 2018年10月の全産業活動の基調は、「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正
10月は前月比大幅上昇、指数水準は5か月ぶりに106台の高水準域に
2018年10月の全産業活動指数は、前月比1.9%と2か月ぶりの上昇、指数値は106.6となりました。先月9月は前月比マイナス1%に達する大幅低下でしたが、当月はその落ち込み分の2倍近く上回る大きな上昇幅と、今基準内(2008年1月~)では2番目となる極めて大きな伸びをみせました。このところの動きの弱さに対する懸念を、一気に払拭するような力強い動きです。
また、10月の前年同月比は2.3%の上昇と、先月には19か月ぶりに前年割れとなりましたが、僅か1か月で上昇方向に復帰しました。
このように、今月の前月比、前年同月比の動きからみると、先月9月の低調さのなかには、少なからず自然災害等の影響があった、ということがいえるでしょう。
上の図で傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、7月にそれまでの上昇傾向からマイナス方向へ転じやや強めのペースで下降しましたが、当月の好調な動きを受け、4か月ぶりに上昇方向に舵を切りました。ただ、上昇方向に転じたとはいえ、このところの低落分からすると完全に復調したとはいい切れない様相がみてとれます。
建設業活動が低下も、サービス産業活動と鉱工業生産は大幅上昇
10月の結果を産業別にみると、建設業活動が前月比マイナス1.2%の低下と低落傾向を抜け出すことは出来ませんでしたが、サービス産業活動は前月比1.9%、鉱工業生産は前月比2.9%と、ともに最近としては大きめの上昇で、力強い動きをみせています。
全産業活動の前月比1.9%を分解すると、1.4%がサービス産業活動、0.6%が鉱工業生産の上昇に因るものとなります。
最も上昇のインパクトが強かったサービス産業活動は、し好的な個人向けサービスが好調だったことに加え、このところ前月比で連続低下が続いていた企業や事業所向けサービスが復調の動きをみせたこと、が影響しました。
10月の好調な動きの背景には、モノ(=有形財)取引の活発化がある
10月の全産業活動は、足下の第3四半期の活動の弱さに対する懸念を払拭する前月比大幅上昇と好調な動きでした。好調な動きに寄与した産業は、「サービス産業活動と鉱工業生産」ということは前述のとおりですが、産業の枠では無く産業横断的な観点でみると、この前月比上昇の背景にはどのような特徴があるのでしょうか。
そこで、全産業活動指数を、産業別活動の枠を越えて「モノ=有形財の取引活動」と「それ以外のサービス取引活動」に2分して指数値を試算し、その動きや影響度を「モノ=有形財の取引活動」の視点からみてみました。
財の分別判断としては、モノ取引活動には鉱工業生産、サービス産業活動のうち卸売業、小売業、不動産業の住宅売買取引、建設業活動のうち構造物建築に関する工事といった、モノや建物といった有形物を「造る」、「売買する」という業種・業務を集約しました。それ以外のサービス取引活動は、サービス産業活動のうち上記以外の業種・業務と、建設業活動の土木工事ということになります。
両系列の試算値の計算は、①モノ取引活動は、上記のとおり分別した各季節調整済指数値と各基準年ウエイトを利用した加重平均(サービス産業活動に従属する活動については、第3次産業活動指数で公表されている各系列の1万分率ウエイトを、全産業活動指数の百分率ウエイトに換算)により算出、②それ以外のサービス取引活動については、全産業活動全体の季節調整済指数値から、上記①で算出したモノ取引活動の季節調整済指数値を重み付き減算(このため僅かではありますが計算手法の違いから生じる誤差分を含むことになります)により簡便的に算出する、という手法を用いました。なお、モノ取引活動の基準年(2010年)ウエイトは、全産業活動全体=100のうち43ほどとなります。
試算結果から描画した2015年以降の推移については、下記グラフのようになりました。
ここ4年間ほどの季節調整済指数の推移をみると、①モノ取引活動のこの期間の指数水準はそれ以外のサービス取引活動の水準に比べて低い、②モノ取引活動の月々の動きはそれ以外のサービス取引活動に比べ変動幅が大きい、③全産業活動全体の2016年央から2017年末にかけての上昇傾向期間や、2018年5月以降の弱含み推移期間のスロープは、モノ取引活動の方がそれ以外のサービス取引活動に比べ急斜面となっている、④モノ取引活動の今年10月の動きは、それ以外のサービス取引活動よりも大きな上昇幅となっている、⑤モノ取引活動の後方3か月移動平均による傾向値と併せてみると、上昇方向に転じてはいるものの、弱含み推移後の戻しとしては小さい、ということがみてとれます。
ここ4年間ほどのモノ取引活動の全産業活動全体の動き(前月比伸び率)に対する影響度の推移をみると、①モノ取引活動の動きが全体に与えるインパクトは、それ以外のサービス取引活動を上回ることが多い、②今月10月の全産業活動全体の大幅上昇にモノ取引活動は大きな影響(寄与度試算値は+1.24%ポイント)をもたらしている、とういことがみてとれます。
これらから、「このところの全産業活動指数の弱い動きにはモノ取引活動が低調であったことが強く影響していた。この10月はモノ取引活動が活発化したことから全産業活動指数は大幅上昇となり、モノ取引活動自体の低下傾向も一段落した模様。ただ、この10月をもってモノ取引活動が完全に復調したとはいえない」と、まとめられます。モノ取引活動の復調が、全産業活動指数の更なる上昇の鍵といえるでしょう。
2018年10月の全産業活動の基調は、「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正
2018年10月の内訳3活動の動きは建設業活動が低下でしたが、他の2活動はいずれも大きく上昇しました。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「緩やかに持ち直している」、サービス産業活動は「持ち直しの動き」と、ともに上方修正しています。他方、建設業活動は、依然として「弱含みの動き」が継続している模様です。
全産業活動全体では、10月は大幅な前月比上昇で、指数値は106台半ばまで一気に上昇、いわば2008年前半、リーマンショック前の好景気の頃の高い水準域にまで復帰しました。このほか、前年同月比の動き、3か月移動平均で測る「すう勢」が、いずれも上昇方向に転じるなど、今月の動きには明るい要素が多くみられます。
また、10月の鉱工業生産やサービス産業活動の動きからは、今年7~9月の荒天や自然災害といった複数の突発的な事象が、ある程度これら活動を抑制したこと、また、少なくともこの10月には、このマイナス効果の多くが軽減されたとみられ、以降に与えるマイナス面の影響等の懸念は少なくなりました。
このような状況を踏まえ、今年10月の全産業活動は、「緩やかな持ち直しの動き」にある、と今年8月までの基調判断に戻したいと思います。
- 全産業活動指数 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/zenkatu/html/b2010_201810j.html
- 就活でもない、終活でもない「全活」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/zenkatsu_line.pdf
問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
電話: 03-3501-1511(代表)(内線2854)、03-3501-1644(直通)
FAX : 03-3501-7775
E-MAIL : bzl-qqcebc■meti.go.jp (■を@に置き換えてください)