本年7月の鉱工業生産は、前月比1.3%と2か月ぶりの上昇。前月の大幅な低下からの戻りもあり、想定を上回る上昇幅ではあったものの、先行きは強くはない。基調判断は「一進一退」を据え置き。 2019年8月30日
7月生産は前月比1.3%上昇
本年7月の鉱工業生産は、季節調整済指数102.7、前月比1.3%と2か月ぶりの前月比上昇となりました。前月6月は確報値では前月比マイナス3.3%低下と大幅に低下しており、7月はそこから反発し、上昇をみせました。
ただ、前月比上昇とはいえ、この7月の指数値102.7は、第1四半期の指数値102.4は上回っているものの、第2四半期の指数値103.0は下回る水準となっています。前月比で上昇したとはいえ、十分回復したと言えるほどの水準ではありません。
7月は11業種が前月比上昇
7月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、11業種が前月比上昇、3業種が前月比低下、1業種が前月比横ばいと、幅広い業種で上昇がみられました。6月の低下業種の多くが上昇したため、6月の大幅な低下の反動増という面もあると考えられます。
7月の生産上昇への寄与が大きかった業種は、自動車工業、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)、パルプ・紙・紙加工品工業でした。
上昇寄与の最も大きかった自動車工業の前月比は2.1%上昇で、2か月ぶりの上昇となっています。指数値は108.5と上昇しましたが、自動車工業は6月は大幅に低下していましたので、そこからの反動増も大きいとみられます。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品等が上昇要因となっています。
上昇寄与2位の化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)の前月比は4.7%で、2か月ぶりの上昇となっています。指数値は122.6と上昇しましたが、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)も6月はマイナス3.8%の低下でしたので、そこからの反動増の面もあるとみられます。また新製品の発売に向けた増産等による生産増もあったようです。乳液・化粧水類、頭髪用化粧品等が上昇要因となっています。
上昇寄与3位のパルプ・紙・紙加工品工業の前月比は7.4%上昇で、2か月ぶりの上昇でした。パルプ・紙・紙加工品工業は、工場の定修等の影響もあり6月はマイナス4.0%と低下していたため、7月はそこからの回復もあり、上昇幅が大きく現れたと考えられます。印刷用紙(塗工)、製紙パルプ等が上昇要因となっています。
出荷は前月比2.6%上昇
7月の鉱工業出荷は、指数値102.4、前月比2.6%と、2か月ぶりの前月比上昇となり、大幅な上昇をみせました。
業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が前月比上昇となっていました。輸送機械工業(除.自動車工業)、自動車工業、金属製品工業等が上昇寄与業種となっています。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比3.5%上昇、生産財の出荷は前月比1.5%上昇でした。
最終需要財の内訳の中で、7月の出荷上昇に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財でした。ただ、資本財(除.輸送機械)については、その上昇寄与は小幅にとどまっていました。また、消費財は、耐久消費財・非耐久消費財ともに出荷は上昇していました。
在庫は6か月ぶりの低下
7月の鉱工業在庫は、指数値104.4、前月比マイナス0.3%と6か月ぶりの低下となりました。出荷が上昇する中で、生産増の下でも在庫が低下となりました。
業種別にみると、15業種中、8業種が低下していました。無機・有機化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、石油・石炭製品工業等が低下に寄与していました。
財別にみると、生産財、建設財、非耐久消費財の在庫が低下していました。特に鉱工業用生産財在庫は低下しており、7月の鉱工業出荷の上昇も影響した様子です。
鉱工業在庫については、このところ、現行2015年基準での最高水準の更新が続いていましたが、7月は低下しました。とはいえ在庫は引き続き高水準にあり、今後の鉱工業生産への影響については、引き続き注意してみていく必要があると考えます。
基調判断は据え置き
2019年7月の鉱工業生産は、2か月ぶりの前月比上昇でした。先月時点では企業の生産計画から、それに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮すると、7月は上昇も低下もありうる程度と想定していましたが、7月の上昇幅は前月比1.3%と、想定を上回る上昇をみせました。
ただ、前月の低下幅3.3%と比べると、この上昇幅は大きなものではありません。鉱工業生産は4月、5月と大型連休を挟んで上昇を続けた後、6月は反動減がやや大きく現れたため、そこからの戻りもあるものと考えられます。また、7月の指数値102.7は、第2四半期の指数値103.0と比べても、それを下回る水準にとどまっています。
先行きは、企業の生産計画では8月は上昇、9月は低下の計画となっています。企業の生産計画の上方バイアスを考慮すると、8月は低下もありうる程度の計画となっており、また8月は上昇したとしても、9月は再び低下することが考えられます。
このような動きを踏まえ、7月の鉱工業生産の基調判断については、「生産は一進一退」を据え置き、先行きを注視していきたいと考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-201907s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
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