2019年8月の建設業活動指数は3か月連続の前月比連続低下。民間発注工事全般に動きの弱さがみられるが、公共工事の復調の動きは継続。建設業活動全体の基調は、持ち直しの動きにあるものの一部に弱さがみられる。 2019年10月21日
- 2019年8月は前月比低下、すう勢からみる活動では上昇基調に陰り
- 民間発注工事、公共工事ともに連続低下も、公共工事は好調だった第2四半期の活動水準を維持
- 8月時点の建設業活動は、全体では持ち直しの動きを継続も一部に弱さがある
2019年8月は前月比低下、すう勢からみる活動では上昇基調に陰り
2019年8月の建設業活動は、前月比マイナス0.6%と3か月連続の低下、指数値は111.5となりました。
前月比3か月連続低下は、今年に入ってから初めてのことであり、昨年5~7月にかけての連続低下以来のこととなります。指数値は今年2~3月頃の水準にまで戻ってしまいました。ただ、今年に入ってから5月までの5か月間で6.3ポイントも指数値は上昇していました。これを踏まえれば、ここ3か月の連続低下分2.9ポイントは月平均下落率としては大きめですが、年前半の急激な持ち直しの動きの反動ともいえる動きが続いているともみられます。なお、前年同月比は0.1%の上昇と、辛うじて4か月連続の前年超えとなりました。

最近の傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、昨年後半以降、速いテンポでの低落が続いていましたが、今年1月の大幅上昇により上昇方向へ転じ6月まではこの流れが継続していました。先月7月時点ではこの勢いは横ばい気味と停滞、更に8月で低下方向に転じていることがうかがえます。このところ上昇基調の動きは小休止、やや弱さがみられることが確認できます。
民間発注工事、公共工事ともに連続低下も、公共工事は好調だった第2四半期の活動水準を維持
8月の建設業活動は、民間発注工事が前月比マイナス0.6%と3か月連続低下、公共工事が前月比マイナス0.6%と2か月連続低下と、ともに続落となりました。
ただ、公共工事の今年に入ってからの動きは順調な動きをみせており、7~8月の2か月平均活動量は、2019年第2四半期水準と同値であり、活動が活発だったこの時期の活動水準を維持しています。
前月比の低下インパクトでみれば、民間発注工事が6割、公共工事が4割ほどの寄与率でしたが、民間発注工事の個人投資、企業投資とも失速感は払拭されておらず、すう勢という観点でも民間発注工事の動きが気になるところです。
内訳5事業でみれば、民間発注工事は建築工事が住宅、非住宅とも前月比低下、土木工事が前月比上昇でした。一方、公共工事は建築工事が前月比微増、土木工事は前月比低下でした。双方の内訳事業の動きには、共通性がみられませんでした。

各内訳5事業の動きを細かくみていきます。
民間発注工事では、住宅建築は前月比マイナス0.5%と2か月ぶりの低下でした。2か月ぶりの低下とはいえ、4月から8月までの5か月では、先月7月の微増を除き4回の低下と低落傾向にあり、弱い基調に変化はみられません。なお、指数値でみれば、2016年5月の102.6以来の低い活動域での動きがここ3か月続いています。
非住宅(工場や倉庫など)建築は前月比マイナス1.1%と4か月連続の低下でした。1月から4月までは4か月連続で1%を超える前月比上昇で、この間9.2ポイントも指数値が急上昇しましたが、5月以降の4か月は一転して連続低下、この間マイナス7.7ポイント指数値が降下しました。活動量としてはまだ低落前に比べ高いのですが、複数月に及ぶ一律的な上昇、低下を繰り返すなど、中期的に不安定な動きをみせています。引き続き来月以降の動きを注視していく必要があるでしょう。
民間土木工事は前月比0.7%と3か月ぶりに上昇となりました。6月までは大きめの上昇・低下を繰り返すなど動きが不安定な状況にありつつも、傾向値には復調の兆しもありました。ところが先月7月の指数値は100を割り込み、好調だった第2四半期値に比べ大幅に活動量は減衰するなど様相は一変、8月は連続低下に歯止めはかかりましたが、上昇幅は小さめとなっており復調とはいえない状況です。
民間の非住宅建築、土木工事の2事業からなる民間企業の設備投資関連工事は、今年5月までは、5か月連続上昇と強い上昇傾向にありましたが、ここ3か月は前月比マイナス3.9%、マイナス1.7%、マイナス1.6%と1%を超える低下が3か月続いており、すう勢には弱さがみられます。
公共工事では、建築工事(庁舎、学校、病院など)は前月比0.1%と2か月ぶりの上昇、土木工事は前月比マイナス0.6%と2か月連続の低下でした。今年前半の各月の動きは、建築工事、土木工事とも大きめの前月比上昇をみせることが多く、復調の動きがみられていました。今月8月は、建築工事は7月低下後の前月比微増、土木工事は前月比連続低下と、双方ともここ2か月の動きは弱いものとなっています。ただ、7~8月2か月平均指数値は、好調だった第2四半期値と比較すると、建築工事では1.5ポイントほど大きく、土木工事では同等程度の活動量を維持しています。また、3か月移動平均によるすう勢でみても、上昇の勢いは衰えましたが、それでもまだ上昇傾向を示しています。
全体としてみると、月単位の動きは上下動が激しく不安定さがある公共工事ですが、ここ2か月の弱い動きをもって、今年上期にみられた復調の動きが変化したとまではいいきれません。
8月時点の建設業活動は、全体では持ち直しの動きを継続も一部に弱さがある
2019年8月の建設業活動は、3か月連続の前月比低下となりました。ここ3か月の動きには、それまでの上昇の勢いは減衰し、少なからず不安な要素もみうけられます。とはいえ、この連続低下の動きは、今年前半の強い上昇傾向のなかの反発的動きの範ちゅうにある、ともみてとれます。
内訳事業では、民間住宅建築工事の動きの弱さは継続しており、この8月でも改善には至っておらず、今年上期は堅調な動きにあった民間企業の設備投資関連工事もここ数か月の動きは低調なものとなっています。民間発注工事全般にわたり曇り空といった様相です。他方、もともと月々の動きに不安定さがある公共工事には、今年上期にみせた上昇の勢いは衰えはしましたが、復調の動きは継続しているとみられます。

これらの状況を踏まえ、8月時点の建設業活動全体の基調を、「全体では持ち直しの動きにあるものの、一部に弱さがみられる」と評価したいと思います。
- 全産業活動指数 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/zenkatu/html/b2010_201908j.html
- 就活でもない、終活でもない「全活」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/zenkatsu_line.pdf
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