本年９月の鉱工業生産は、前月比１.４％と２か月ぶりの上昇ではあったものの、生産は低下と上昇を繰り返す中、四半期ベースでは前期比マイナス０.６％の低下。基調判断は「生産はこのところ弱含み」を据え置き。 2019年10月31日
９月生産は前月比１.４％上昇
本年９月の鉱工業生産は、季節調整済指数１０２.９、前月比１.４％と２か月ぶりの前月比上昇となりました。８月は前月比マイナス１.２％の低下でしたが、９月は再び上昇となりました。
９月は先月時点での企業の生産計画の上方バイアスを補正した試算値（最頻値で前月比０.３％、90％レンジ：マイナス０.７％～１.３％）と比べると、大きめの上昇をみせました。とはいえ後で述べるように、９月は上昇業種も多くはなく、また一時的要因による上昇もあり、鉱工業生産は６月に大幅に低下して以来、低下と上昇を繰り返す動きから抜け出たとは考えにくいところです。四半期で見れば、速報ベースですが第３四半期の指数値は１０２.４となり、第２四半期の指数値１０３.０からは前期比マイナス０.６％の低下となりました。
９月は７業種が前月比上昇
９月の鉱工業生産を業種別にみると、全体１５業種のうち、７業種が前月比上昇、７業種が前月比低下、１業種が横ばいという結果でした。
９月は８月の低下の反動増という面もあるにしても、８月は１２業種が低下であったことや、業種ごとの上昇寄与を見ても、強さを感じられる業種は多くありません。
９月の生産上昇への寄与が大きかった業種は、汎用・業務用機械工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業でした。
上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業の前月比は９.４％の上昇で、２か月ぶりの上昇となっています。９月は一部品目で大型案件があった影響もあり、生産が大幅に上昇しました。コンベヤ、運搬用クレーン等が上昇要因となっています。
上昇寄与２位の生産用機械工業の前月比は７.９％の上昇で、２か月ぶりの上昇となっています。半導体製造装置、化学機械等が上昇要因となっています。
上昇寄与３位の電気・情報通信機械工業の前月比は４.０％の上昇で、４か月ぶりの上昇でした。超音波応用装置、セパレート形エアコン等が上昇要因となっています。一部品目で大型案件があったことや、８月の猛暑によるエアコンの店頭在庫減少に対応した増産等も、上昇に寄与したようです。
出荷は前月比１.３％上昇
９月の鉱工業出荷は、指数値１０２.５、前月比１.３％と、２か月ぶりの前月比上昇となりました。
業種別にみると、全体１５業種のうち、１０業種が前月比上昇、５業種が前月比低下でした。生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が上昇寄与業種となっています。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比２.０％上昇、生産財の出荷は前月比０.７％上昇でした。９月は、生産財より最終需要財の上昇寄与の方が大きくなっていました。
最終需要財の内訳の中で、９月の出荷上昇に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財でした。資本財（除．輸送機械）は、前月比８.６％と大幅な上昇となっていました。消費財については、耐久消費財の出荷は前月比マイナス２.２％の低下、非耐久消費財の出荷は前月比２.３％の上昇となり、消費財全体では出荷は前月比横ばいでした。建設財は、前月比０.９％の上昇でした。
在庫は前月比マイナス1.６％と、久しぶりに大きめの低下
９月の鉱工業在庫は、指数値１０２.７、前月比マイナス１.６％と、やや大きめの低下となりました。この在庫の低下幅は、2016年11月の前月比マイナス１.６％と並ぶ、久しぶりの大幅な低下となりました。
業種別にみると、１５業種中、１０業種が低下、５業種が上昇でした。
鉱工業在庫については、このところ高い水準の状況が続いていましたが、９月は低下し、本年２月の１０２.４以来の水準まで低下しました。
在庫循環図を見ると、本年第３四半期は、在庫積み上がり局面から在庫調整局面に入りました。在庫については、本年第１四半期に一旦在庫調整局面に入ったものの、第２四半期は再び在庫積み上がり局面に戻り、在庫調整が進んでいませんでしたが、今後、さらに在庫調整が進むことが期待されます。
基調判断は「生産はこのところ弱含み」を据え置き
本年９月の鉱工業生産は、２か月ぶりの前月比上昇でした。先月時点では企業の生産計画から、それに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮すると、９月は最頻値で０.３％と、小幅な上昇が見込まれる試算結果でしたが、実際には９月の上昇幅は前月比１.４％となり、それを上回る上昇となりました。
とはいえ、９月の上昇については、一部の業種によるところが大きく、また、個別の大型案件や天候要因といった一時的な要因により上昇幅がやや大きくなった面もみられます。また、鉱工業生産はこのところ、低下と上昇を繰り返していますが、７－９月までの第３四半期でみると、指数値は１０２.４となり、第２四半期の指数値１０３.０と比べると、前期比マイナス０.６％の低下となっています。
先行きは、企業の生産計画では１０月は上昇、１１月は低下の計画となっています。企業の生産計画の例年の上方バイアスを考慮すると、１０月は低下の見込みが高いと考えられます。また、１１月も現時点では確たることは言い難いものの、１０月比で低下が見込まれます。
このような動きを踏まえ、９月の鉱工業生産の基調判断については、「生産はこのところ弱含み」を据え置き、先行きを注視していきたいと考えます。
- 結果概要のページ
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
- 参考図表集
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/slide/result-iip-sanko-201909s.html
- マンガ「ビジネス環境分析にも使える！鉱工業指数(IIP)」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/slide/20170329iip_manga2017.html
問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室
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