2019年11月の全産業活動指数は前月比上昇。ただ、10月の大幅低下からの戻しとしては小さめ。内訳3産業の動きは三者三様も、サービス産業活動が全体をカバー。全体の基調には引き続き「足踏みがみられる」。 2020年1月23日
- 2019年11月は前月比上昇、上昇幅は低調な10月からの戻しとしては小さめ
- 内訳産業の動きは三者三様も、サービス産業活動が全体をけん引
- 建設業活動は前月比微増も、基調は「弱さ」からの変化はみられず
- 全産業活動の基調は「足踏みがみられる」と評価
2019年11月は前月比上昇、上昇幅は低調な10月からの戻しとしては小さめ
2019年11月の全産業活動指数は、指数値103.9、前月比は0.9%の上昇となりました。前月比の上昇幅でみれば、11月は比較的大きめの上昇といえますが、10月が今基準内(2008年1月~)では、東日本大震災の被災月である2011年3月に次ぐ第2位に位置する、マイナス5%近い大幅低下だったことを踏まえれば、戻し幅としての期待値を下回っている、といえます。また、指数値が複数月にわたり連続して104台に届かないのは、緩やかながらも上昇期にあった2017年3月以来のことです。
このところの動きを振り返ると、今年9月までの3か月間は前月比マイナス無しという順調な動きをみせており、かつ9月の前月比は今基準内第2位となる大幅上昇をみせていました。10月は消費税率改定もありましたが、この上昇基調からの反落に加え、自然災害の影響も重なり、今基準内第2位となる前月比大幅低下でした。
前月比の「振れ」が大きかった9月、10月を均した平均指数値が105.6、8月単月の指数値106.2、あるいは直近の不確実性の偏りが少ない6~8月の3か月平均値106.1と比べれば、11月の指数値103.9は大きく低下しています。特に10月の低下分には、スポット的な自然災害の影響等も含まれており、11月以降の復旧需要等を考慮すると、11月時点の前月比の上昇度合いは物足りないという感じは否めません。12月以降、全産業活動の更なる復調に期待したいところです。
傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、2019年4月からの上昇傾向から7月に低下方向に転じ、一時的に上昇した9月以降、ここ2か月は低下方向への勢いを増している様相がみてとれます。

内訳産業の動きは三者三様も、サービス産業活動が全体をけん引
11月の結果を産業別にみると、鉱工業生産は前月比マイナス1.0%と2か月連続の低下でしたが、サービス産業活動は前月比1.3%と2か月ぶりの上昇、建設業活動は前月比0.1%と6か月ぶりの上昇とはいえほぼ横ばい、と内訳3産業の動きは、上昇、低下、横ばいと三者三様でした。全産業活動全体を上昇方向に導いたのは、サービス産業活動の大きめの前月比上昇ということになります。
ただ、11月のサービス産業活動は、先に公表された「第3次産業活動指数」によれば、幅広い分野の業種が前月比上昇とはいえ、10月の低調な動きからの戻し幅としては大きくない、としています。

建設業活動は前月比微増も、基調は「弱さ」からの変化はみられず
11月の建設業活動は、前月比0.1%と6か月ぶりの上昇、指数値は108.7となりました。
10月までは、2017年6~10月にかけての連続低下以来となる前月比5か月連続低下を続けていましたが、11月は6か月ぶりの上昇と連続低下に歯止めがかかりました。前月比上昇幅は最小限なものとなってはいますが、弱さがみられる基調の底が近いことに期待したいところです。指数値は、3か月連続で110台を割り込むなど、2019年内で最も低い水準での推移が続いています。
最近の傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、7月に低下方向に転じ、以降、強い風速での低下方向への動きが続いていることが確認できます。
これらから判断すると、11月時点の建設業活動全体の基調は、引き続き「弱さがみられる」と評価すべきでしょう。

建設業活動の内訳をみると、民間発注工事が前月比マイナス0.7%と6か月連続の低下、公共工事が前月比0.5%と2か月連続の上昇と、動きは相反するものでした。民間発注工事の不調を公共工事がカバーするという様相がうかがえます。
民間発注工事は、11月に至っても改善の兆しはみられませんでした。4月以降の8か月で7回に及ぶ前月比低下となり、ここ3か月ほど大幅低下が続き低調な住宅建築工事、7か月連続低下中の非住宅建築工事、一進一退ながらも活動量が復調しない土木工事と、民間発注工事全体に弱さが継続しています。
他方、このところ決して良い動きとはいえなかった公共工事には、前月比連続上昇と明るい兆しをみせています。建設工事は引き続き低調だったのですが、ウエイトの大きい土木工事が、第3四半期値を若干上回る活動量を示すなど、底固めともみられる動きをみせています。

全産業活動の基調は「足踏みがみられる」と評価
2019年11月の内訳3産業は、三者三様の動きをみせました。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「弱含み」、サービス産業活動は「足踏みがみられる」と判断を据え置いています。建設業活動も「弱さがみられる」という状況からの改善には至りませんでした。
全産業活動全体では、11月は前月比大きめの上昇も、低調だった10月からの流れでみれば、戻し幅としては十分とはいえないものでした。3か月移動平均で測る「すう勢」も、引き続き低下方向の動きにあります。ただ、最近の動きには、消費税率改定や自然災害といったイレギュラーな要素を含んでおり、現時点ではこれら要素が与える変動の不確実性は否めません。これら要因による活動量の低下に関しては、今後の回復に期待したいところです。よって、引き続き、来月12月以降の動きを慎重に見極める必要があるでしょう。
このように、11月の動きは上昇でしたが、10月からの戻し幅の大きさ、及び趨勢の弱さなどを踏まえ、2019年11月時点の全産業活動の基調は、引き続き「足踏みがみられる」と評価します。
- 全産業活動指数 結果概要
- https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/zenkatu/html/b2010_201911j.html
- 就活でもない、終活でもない「全活」
- https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/zenkatsu_line.pdf
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